先延ばしは、20代から30代にかけて多くの人で少しずつ減っていきました。ドイツで高校3年生だった約3,000人を18年追った研究の結果です。仕事を始めたあとには、さらに減っていました。
一方で、若いころに先延ばしが多かった人は、就職が遅く、昇進が少なく、生活の満足度も低めでした。研究者たちは、先延ばしは生まれつき決まったものより、変えられるものに近いと見ています。
どんな研究か
2026年1月に Journal of Personality and Social Psychology に載った研究です(Bäulke ほか。ドイツのテュービンゲン大学など)。題名は「一度先延ばしする人は、ずっと先延ばしする人か?」という問いの形になっています。
使ったのは、TOSCA というドイツの長期の調査です。2002年に、約150校の高校3年生3,023人が参加しました。その後、2〜4年おきに8回、性格・学校・仕事・人間関係・健康についてアンケートに答えてもらっています。期間は18年です。
先延ばしは、12問のアンケートで測りました。「始めるまでにとても時間がかかる」といった文に、5段階でどれくらい当てはまるかを答えます。ここでの先延ばしは、やるつもりのことを、遅らせると自分が困るとわかっていても遅らせること、という意味です。先延ばしの質問は、2回目から6回目の調査で聞いています。
わかったこと

全体として、先延ばしは年齢とともに減っていました。ただ、人どうしの順番はあまり変わりませんでした。若いころ先延ばしが多かった人は、減ったあとも、ほかの人よりは多めのままでした。減り方は人によって違い、大きく減った人もいれば、あまり変わらない人もいました。
大学などを出て仕事を始めた人は、そのあと先延ばしがさらに減っていました。著者の Bäulke さんは、仕事では遅れると困ることが現実に起きるので、それが行動を後押ししているのではないかと考えています。逆に、先延ばしが多い人ほど、仕事を始めるのが遅く、始めない人も多めでした。仕事と先延ばしは、お互いに影響し合っているように見えます。
先延ばしの変わり方は、性格の変わり方とつながっていました。まじめさ(誠実性)が上がり、不安や落ち込みやすさ(神経症傾向)が下がった人ほど、先延ばしも減っていました。そして平均すると、先延ばしは神経症傾向より大きく減っていました。著者たちはここから、先延ばしは性格の特徴より変えやすいものだと考えています。
若いころの先延ばしが多く、その後もあまり減らなかった人は、何年もあとの暮らしにも違いがありました。学校の成績が低め、収入が少なめで昇進も少なく、恋人がいる・子供がいる人の割合も低めでした。生活の満足度も低めです。ただし、紹介記事に出ているのはこうした傾向までで、差の大きさの数字は確かめられませんでした。
では、早く取りかかれるようになれば、生活の満足度も上がるのでしょうか。この研究からは、そこまでは言えません。わかったのは、先延ばしが多い人ほど満足度が低めだった、という関係だけです。先延ばしを減らしたから満足度が上がったのかは、確かめていません。私もここが気になっていましたが、関係があるだけで、どちらが原因かはわからないと知って納得しました。
まだわかっていないこと・弱いところ
この研究は、同じ人を長く追って関連を見たものです。先延ばしが原因で収入が減ったとまでは言えません。もともとの家庭の事情や体調など、ほかの理由が両方に効いている可能性も残ります。たとえば、不安や落ち込みを感じやすい人は、先延ばしが多くなりやすく、満足度も低くなりやすいことが考えられます。この場合、先延ばしだけを減らしても、満足度は変わらないかもしれません。
先延ばしは本人のアンケートで測っていて、実際の行動は見ていません。参加者はドイツの一つの地域の高校生なので、ほかの国や、高校を出ずに働き始めた人に同じことが言えるかもわかりません。
先延ばしを減らす方法の研究も、まだ多くありません。2018年に Rozental ほかが、心理的な支援(考え方や行動の習慣を変えるプログラムなど)の試験12件、718人をまとめました。支援を受けた人は先延ばしが減っていましたが、効果量(差がばらつきの何倍か)は0.34で、小さめでした。認知行動療法(考え方と行動の両方を見直していく方法)にしぼると0.55でしたが、もとになった試験は3件だけです。効果がどれくらい続くかは、追った試験が少なくてわかりませんでした。ノルウェーの研究者 Svartdal さんも、先延ばしは変えられるが簡単ではない、とコメントしています。
生活でどう使えるか
この研究から言えるのは、今先延ばしが多くても、そのままとは限らないということです。仕事を始めて減った人が多かったので、締め切りや人との約束のように、遅れると実際に困る仕組みがあると減りやすいのかもしれません。これを自分で作るなら、たとえば次のような形になります。
- 始める時刻と、最初の1分ですることを決める。例「21時になったら、テキストを開いて1問目だけ読む」
- 自分で決めた締め切りを、家族や友達に1人伝える。例「金曜までに申込書を出すね」
- 週に1回、5分だけ、先延ばしにしたことを1つ書き出し、次はいつやるかを決める
1つめの「〜になったら〜する」の形は、勉強や習慣づくりの研究でよく使われています。詳しくは「勉強の計画は「もし〜したら」で決める:642件の研究からわかったこと」で書いています。
私は社会人ですが、今も先延ばしがよくあります。よく聞く「2分だけやる」も、その2分がつらくて始められないことがあります。この研究でも、先延ばしは何年もかけて少しずつ減っていました。
どれも、まとめの研究では効果は小さめでした。1回で変わるものとは考えず、数か月単位で様子を見るのがよさそうです。先延ばしで仕事や生活に大きく困っていて、気分の落ち込みや眠れない日が続くときは、医療機関に相談してください。
参考リンク
- Bäulke L, Roberts BW, Nagengast B, Trautwein U. Once a procrastinator, always a procrastinator? Examining stability, change, and long-term correlates of procrastination during young adulthood. Journal of Personality and Social Psychology, 2026, 130(3), 550-568
- With effort, procrastinators can change(Science News、2026年2月)
- Longitudinal study finds procrastination declines with age but still shapes major life outcomes over nearly two decades(PsyPost、2026年4月)
- Rozental A, et al. Targeting Procrastination Using Psychological Treatments: A Systematic Review and Meta-Analysis. Frontiers in Psychology, 2018
アイキャッチ画像: Photo by Jess Bailey on Unsplash
