寝る前の勉強は記憶に残る?2つの実験でわかった睡眠の効果と限界

夜の目覚まし時計 心理学

覚えたあとに一晩眠ると、同じ12時間を起きて過ごした場合より、覚えたことを忘れにくくなります。2025年に英国で行われた2つの実験で、この差がはっきり出ました。ただ、眠ると翌日の新しい勉強まではかどる、という予想は確かめられませんでした。

どんな研究か

英国ヨーク大学などのチームが、学術誌 Cognition に2025年11月に出した研究です。実験は2つあり、どちらもオンラインで行いました。参加者は英国に住む18〜30歳で、英語を母語とする人です。分析の対象になったのは、1つ目の実験が115人(眠るグループ57人・起きているグループ58人)、2つ目が123人(58人・65人)でした。

参加者はまず、意味の近い英単語のペア(たとえば「パン」と「バター」のような組み合わせ)を覚えて、その場でテストを受けました。12時間後にもう一度テストを受け、そのあとで新しいペアを30組覚えて、すぐにテストを受けました。眠るグループは夜に覚えて、一晩眠ったあとの朝にテストを受けます。起きているグループは朝に覚えて、昼間を普通に過ごしたあとの夜にテストを受けます。

この研究は事前登録(どう分析するかを、データを集める前に公開しておくこと)をしています。都合のよい結果だけを選んで報告することができないので、結果を信用しやすくなります。

わかったこと

机の上の白い紙
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覚えたことの残り方は、2つの実験とも眠ったグループのほうが上でした。12時間後のテストで思い出せた単語ペアの割合は、1つ目の実験で眠ったグループが32.6%、起きていたグループが18.6%です。2つ目の実験では31.6%と25.3%でした。

差の大きさは、効果量 d(2つのグループの平均の差が、ばらつきの何倍かを表す数字)で0.60と0.77です。心理学では0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きいとされることが多いので、中くらいからやや大きめの差になります。1つ目の実験では、20枚の絵の位置を覚える課題でも眠ったグループのほうがよく覚えていました(d = 0.47)。

翌日の新しい勉強には差が出なかった

研究チームが本当に確かめたかったのは、こちらでした。眠っている間に前の日の記憶が整理されれば、翌日に新しいことを覚える余裕が生まれるのではないか、という予想です。結果は予想どおりになりませんでした。

1つ目の実験では、新しい30組の覚えやすさに、眠ったグループと起きていたグループで差がありませんでした。統計でも「差がない」と言える結果でした。2つ目の実験では、逆に起きていたグループのほうが新しいペアをよく覚えていました(d = 0.52)。

個人ごとに見ても、一晩でよく覚えていた人ほど翌日の新しい勉強がはかどる、という関係は、事前に決めた分析では見つかりませんでした。最初のテストの成績の差を取り除いて計算し直すと、眠ったグループだけに弱い関係(r = 0.22)が出ました。ただ、これは事前に決めていなかった追加の分析です。著者たちも、別の実験で確かめる必要があると書いています。

私はこの部分がいちばん気になりました。寝ると翌日の勉強もはかどる、と言い切る記事を見かけますが、この研究では支持されていません。言えるのは、前の日に覚えたことが残りやすい、というところまでです。

まだわかっていないこと

まず、テストの時刻がグループで違います。眠ったグループは朝に、起きていたグループは夜に新しいペアを覚えました。参加者には夜型の人が多く、そのせいで夜に覚えた起きていたグループが有利だった可能性があります。著者たちもこの点を挙げています。

次に、実験は普通に眠った夜と普通に過ごした昼を比べたもので、徹夜させた実験ではありません。起きていたグループの中には昼寝をした人もいました(2つ目の実験で16人)。オンラインの実験で、途中でやめた人も多く、1つ目の実験は189人が参加して分析できたのは115人でした。

睡眠と記憶の研究をまとめた2021年の総説(Psychological Bulletin)でも、似た傾向が出ています。覚えたあとに眠らせないと記憶が落ちる効果は小さめ(g = 0.28)で、覚える前の夜に眠らせないと新しく覚える力が落ちる効果のほうが大きい(g = 0.62)という結果でした。この総説は、人数の少ない研究が多く、効果が大きく見えている可能性も指摘しています。眠ると新しい勉強がはかどるかは今回の実験では出ませんでしたが、寝不足のまま新しいことを覚えるのは損だと考えてよさそうです。

生活でどう使えるか

この研究から使えるのは、その日に覚えたことは寝る前にもう一度見ておくと、翌朝まで残りやすい、という点です。ただし、この研究は寝る前に見直す方法そのものを試したわけではありません。夜に覚えて眠ったグループの結果を、毎日の勉強に当てはめた使い方です。

私は、寝る前の5分は新しいことを覚えず、その日に資格の勉強でやったところを紙で見直すだけにしています。毎日続けるには、これくらいの量がちょうどよいと考えました。たとえば次のようにします。

  1. 寝る30分前までに、その日解いた問題のうち、間違えたものを3〜5問選んで紙に書き出す
  2. 布団に入る前の5分で、答えを隠して思い出してから、答えを見て確かめる
  3. 翌朝は、前の日の見直しから始めず、新しい範囲に進む

見直しを紙にしたのは、スマホを開くとほかの通知やアプリに手が伸びるからです。新しいことを覚えないのは、この研究で翌日の学習への効果が出なかったことと、寝る前に頭を使いすぎないためです。

もう1つは、睡眠時間を削って勉強しないことです。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、大人の睡眠時間の目安を6時間以上としています。眠れない日が続くなど気になる症状があれば、医療機関に相談してください。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by insung yoon on Unsplash

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