スマホのネットを2週間止めると、生活の満足感や気分、心の不調、集中力のどれもが少しよくなりました。米国とカナダの大人467人の実験の結果で、2025年2月に PNAS Nexus に載りました(Castelo ほか)。ただし、ネットを止める決まりを最後まで守れた人は4人に1人ほどでした。
どんな研究か
研究したのは、アルバータ大学の Castelo、ジョージタウン大学の Kushlev などのチームです。参加者はネットの調査サービスで集めた米国・カナダの大人で、平均32歳、63%が女性でした。使う止め方のアプリの都合で、iPhone の人だけが対象です。
実験は4週間で、2週間ごとに3回アンケートと課題を受けてもらいました。参加者はくじで2つの組に分けています。
- 先に止める組(242人):最初の2週間はスマホのネットを止め、あとの2週間はふつうに使う
- あとで止める組(225人):最初の2週間はふつうに使い、あとの2週間に止める
こう組むと、最初の2週間は「止めた人」と「止めていない人」を比べられます。あとで止める組の結果からは、同じ効果がもう一度出るかも確かめられます。
止めたのは、スマホのネットすべてです。モバイル回線だけでなく Wi-Fi も止まるので、SNS も動画もメッセージアプリも使えません。使えたのは電話と SMS(電話番号で送るメッセージ)だけでした。パソコンやタブレットでネットを使うのは自由です。
測ったものは4つあります。1つ目は、生活の満足感とよい気分・いやな気分のアンケートです。2つ目は、落ちこみや不安などの心の不調を聞く、精神科で使う質問票です。3つ目は集中力で、画面の写真が少しずつ切りかわる中で、決まった写真のときだけボタンを押さない課題を数分続けてもらいました。気が散ると押してしまうので、アンケートと違って本人の思いこみが入りにくい測り方です。4つ目は使用時間で、iPhone のスクリーンタイムの画面を撮って送ってもらいました。
わかったこと

先に止める組のスマホの使用時間は、1日314分から161分に減りました。半分ほどです。ネットを止めていてもゼロにならないのは、電話やカメラ、オフラインで使えるアプリがあるためです。
2週間止めたあと、3つの数字がそろってよくなりました。効果の大きさ(前とあとの差が、ばらつきの何倍かを表す数字)は次のとおりです。0.2で小さい、0.5で中くらい、と言われることが多い数字です。
| 測ったもの | 先に止める組 | あとで止める組 |
|---|---|---|
| 生活の満足感と気分 | 0.46 | 0.36 |
| 心の不調(よくなった大きさ) | 0.57 | 0.52 |
| 集中力の課題 | 0.24 | 0.28 |
2つの組で、どれも同じ傾向が見られました。心の不調と気分は中くらい、集中力は小さめの効果です。研究者は、集中力の差を、年を取って10歳ぶん下がる分と同じくらいだと説明しています。参加者の91%が、3つのうち少なくとも1つでよくなっていました。
なぜよくなったのかも調べています。ネットを止めた2週間で増えたのは、スマホを見ない時間で、人と直接会う、運動する、外に出るといった時間でした。減ったのは動画や SNS を見る時間です。メッセージなどのやりとりの量は変わっていませんでした。生活の満足感がよくなった分は、ほぼこの時間の使い方の変化と、自分を抑えられているという感覚、人とのつながりで説明できました。集中力がよくなった理由は、ここからはわかりませんでした。
止めるのをやめて2週間たっても、満足感と心の不調は、始める前よりよいままでした。使用時間も1日265分で、前より少ないままです。集中力のほうは、はっきりとは残っていませんでした。
まだわかっていないこと・弱いところ
一番の弱いところは、決まりを守れた人が少ないことです。止める設定をした人は266人で、ほぼ2週間守れた人は119人、全体の25%ほどでした。研究者自身も、守るのは明らかに難しかったと書いています。上の数字は、守れなかった人も含めて計算したものです。守れた人だけで計算すると、効果は少し大きくなりました。
参加者は、ネットを止める実験だとわかって応募した人たちです。もとからやる気がある人が多く、よくなるはずだという思いこみがアンケートに出たかもしれません。集中力の課題はこの影響を受けにくいものの、効果は小さめでした。iPhone の人だけ、北米の人だけという偏りもあります。
SNS だけをやめる実験では、結果が分かれています。2025年に Scientific Reports に載ったメタ分析(同じテーマの研究を集めて、まとめて計算する方法)は、10件、4,674人の研究をまとめました。SNS を1日〜4週間(多くは1週間)やめても、気分と生活の満足感には差がありませんでした。こちらは SNS だけを止めたもので、スマホのネット全部を2週間止めた今回の実験とは条件が違います。どこまで止めると効くのかは、まだわかっていません。
日本の数字も見ておきます。総務省の調査(2024年12月、13〜79歳の1,800人)では、平日にネットを使う時間は1日平均181.8分でした。パソコンも含めた時間で、測り方も違うので、今回の実験の314分とは並べて比べられません。
生活でどう使えるか
この実験で気分がよくなった人は、空いた時間を人と会う、運動する、外に出ることに使っていました。動画や SNS を見る時間が長い人ほど、止めて変わる部分が大きいと考えられます。実際に、取り残されるのがこわいという気持ち(FoMO)が強い人ほど、よくなり方が大きくなっていました。
私は、この方法は見送りました。SNS はほとんど使わず、夜のスマホは Claude での開発と、友達との LINE だからです。止めて減るのは動画や SNS を見る時間なので、私の使い方ではあまり変わらないと思います。LINE はネットを使うので、この実験のやり方だと友達とのやりとりも止まってしまいます。
試してみる場合は、次のように範囲をしぼると続けやすくなります。
- まず1週間、スクリーンタイムで何に何分使っているかを見る
- 動画や SNS の時間が長ければ、そのアプリだけを、時間を決めて止める(例:21時〜翌朝7時)
- 空いた時間にすることを先に決めておく(散歩、本、人と話す)
- 2週間たったら、スクリーンタイムと気分をもう一度くらべる
気分の落ちこみや不安が長く続くときは、スマホの使い方を変えるだけで済ませず、医療機関に相談してください。
参考リンク
- Castelo N, Kushlev K, Ward AF, Esterman M, Reiner PB. Blocking mobile internet on smartphones improves sustained attention, mental health, and subjective well-being. PNAS Nexus, 2025(PMC)
- Lemahieu L, et al. The effects of social media abstinence on affective well-being and life satisfaction: a systematic review and meta-analysis. Scientific Reports, 2025(PMC)
- 総務省 情報通信政策研究所「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
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