聞き上手は初対面で好かれる?会話を録画した約650人の研究でわかった聞き方

木のトレーにのったコーヒーカップ 心理学

初対面の会話で、相手の話を「わかります」と受けとめたり、話をくわしく聞く質問をしたりする人ほど、相手に「打ち解けた」と感じてもらえていました。2025年に約650人の会話を録画して調べた研究の結果です。ただし、聞き上手な本人のほうは、特に打ち解けたと感じていたわけではありません。効果も小さめでした。

どんな研究か

紹介するのは、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の West ほかが、2025年11月に Communications Psychology に出した研究です。初対面の人どうしの会話を録画し、聞き方を数えました。実験は2つで、合わせて648人分を分析しています。

私が読んでいて一番気になったのは、648人がそれぞれ誰と話したのかでした。参加者どうしが話したのではありません。どちらの実験も、相手は研究側の人です。

1つ目の実験は、大学生と大学院生300人が対象です。会話の相手は、訓練を受けた女性の研究スタッフ10人のうちの1人でした。10分間、紙に書いた質問の順に話してもらい、質問はだんだん個人的な内容になります。スタッフは最初の質問にだけ決まった答えを返しました。そのあとは、参加者が話す深さに合わせて答えるように練習していました。

2つ目の実験は、20〜65歳の働く大人348人が対象です。相手は実験の担当者で、参加者にうれしかった出来事をたずねる形で、5分ほど雑談しました。担当者は決まった順に質問し、なるべく参加者に話してもらうようにしていました。担当者にも、聞き方を調べていることは知らされていません。参加者にも、この雑談が調べる対象だとは知らせていませんでした。

聞き方を数えたのは、参加者のほうです。別の研究スタッフが録画を30秒ずつ区切って数えました。数えたのは2つです。

  • 掘り下げる質問(follow-up question):相手がいま話したことについて、もっと知りたい、正しく理解したい、と思って聞く質問
  • 受けとめる言葉:「それは大変でしたね」のように理解を伝える、相手の話を言いかえて返す、応援の言葉をかける

「うん」「へえ」だけのあいづちや、「私もそうです」と自分の話に持っていく返事は、どちらにも数えていません。

打ち解けたかどうかは、話し相手のスタッフや担当者が感じた温かさや一体感を、質問紙で答えてもらって測りました。1つ目の実験では、参加者本人にも同じ質問紙に答えてもらっています。会話を見た別のスタッフの評価や、返事までの間の短さ(文字起こしから自動で計った)も使っています。

わかったこと

黒いコード付きの電話機
Photo by Quino Al on Unsplash

2つの実験でいちばん安定していたのは、受けとめる言葉でした。受けとめる言葉が多い参加者ほど、会話の相手は打ち解けたと強く感じていました。会話を見たスタッフの評価でも高く、返事までの間も短くなっていました。

掘り下げる質問は、会話の種類で結果が分かれました。10分間の深い会話(1つ目の実験)では、質問が多いほど相手は打ち解けたと感じていました。5分ほどの雑談(2つ目の実験)では、相手の返事が速くなっただけで、打ち解けたと感じるかどうかとは関係が見られませんでした。

大事なのは、打ち解けたと感じたのが誰かです。聞き方が良かった参加者本人は、特に打ち解けたとは答えていませんでした。1つ目の実験では、本人の答えは聞き方と関係がありませんでした。聞き上手で得をするのは、まず相手の気持ちのほうです。

著者たち自身が、効果は小さいと強調しています。聞き方を変えれば初対面の人とすぐに打ち解けられる、というほどの差ではありません。

まだわかっていないこと・弱いところ

この研究は、聞き方と、相手が打ち解けたと感じるかどうかの関係を見たものです。聞き方を変えてもらう実験ではないので、聞き方のおかげで打ち解けたとまでは言えません。もともと相手と気が合ったから質問が増えた、という逆の流れもありえます。

会話の相手は、ふつうの初対面の人ではなく、研究スタッフや実験の担当者でした。たくさんの参加者と話した人の評価なので、ふつうの初対面とは感じ方が違うかもしれません。参加者は女性が多く(1つ目は300人中225人)、米国の1つの大学の周りで集めた人たちです。調べたのは1回だけの会話で、その後に仲良くなったかはわかりません。

ほかの研究でも同じか

質問の効果は、別の研究でも確かめられています。2017年に Huang ほかが出した研究では、ネットのチャットや対面の会話で、質問、とくに掘り下げる質問を多くした人ほど、相手から好かれていました。お見合いのような短い会話の場(スピードデート)でも、掘り下げる質問が多い人ほど、もう一度会いたいと思われていました。この研究は、質問の数を指示して変えてもらう実験も含んでいて、原因まで考えやすい作りです。

ただし、その会話を横から読んだ第三者は、質問の少ない人のほうを好ましく見ていました。質問で好かれるのは、質問された本人に対してです。この研究を紹介した心理科学協会(APS)の記事は、質問が多すぎたり、問い詰めるようだったりすると逆効果になる、と注意しています。

生活でどう使えるか

初対面の人や、まだよく知らない同僚と話すときに、自分の話を足す前に、相手の話を1回受けとめる言葉をはさみます。研究で効果がいちばん安定していたのは、この受けとめる言葉でした。

  • 言いかえて返す:「つまり、引っ越してすぐ仕事が変わったんですね」
  • 気持ちを受けとめる:「それはうれしいですね」「大変でしたね」

時間に余裕があって、話が深まりそうなときは、相手がいま話したことについて質問を1つ足します。研究で数えた掘り下げる質問は、相手の話の中から言葉を1つ拾って、そこを聞く質問です。たとえば、相手が「週末、久しぶりに山に登ってきました」と言ったとします。

  • 受けとめる:「久しぶりの山、気持ちよさそうですね」
  • 掘り下げる:「どこの山に登ったんですか」「久しぶりだったのは、何かきっかけがあったんですか」
  • 研究で数えない返事:「へえ」だけで終える、「私も先月登りました」とすぐ自分の話にする

ほかの話題でも使える聞き方には、次のようなものがあります。

  • 「そのとき、どう思いましたか」
  • 「それで、どうなったんですか」
  • 「〜って、たとえばどんな感じですか」
  • 「何がきっかけで、そうしようと決めたんですか」

日本語で「なぜ」「どうして」を続けると、問い詰めているように聞こえることがあります。APS の記事にも、質問が多すぎると逆効果になるという注意がありました。理由を聞きたいときは「何がきっかけで」「どんなところが」と聞くと、やわらかくなります。

「私もそうなんです」と自分の話に持っていくのは、受けとめたあとにします。数分の雑談では、質問を重ねるより、受けとめる言葉を1回返すほうから試すとよさそうです。私は、相手が話したことから言葉を1つ拾って聞き返すこのやり方を、いいなと思いました。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Davies Designs Studio on Unsplash

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