やることを「もし電車で座ったら、問題集を開く」のように、きっかけと行動のセットで決めておくと、決めたことを実際にやりやすくなります。2025年に642件の検証をまとめた研究で、効果は小さめから中くらいと出ました。「もし〜したら」の形で書くこと、本人にやる気があること、決めた文を何度か思い返すことの3つで、効果が大きくなりました。
どんな研究か
心理学では、この「もし〜したら、〜する」という決め方を実行意図(いつ・どこで・どう動くかを先に決めておく計画)と呼びます。心理学者のゴルヴィツァーが考えた方法で、目標を決めるだけの「やるぞ」とは区別します。
今回紹介するのは、Sheeran、Listrom、Gollwitzer の3人が European Review of Social Psychology に2025年に出したメタ分析(同じテーマの研究をたくさん集めて、結果をまとめて計算する方法)です。実行意図を作った人と作らなかった人を比べた642件の検証を集めました。考え方や気持ちの変化を見たもの、実際の行動を見たものなど、結果の種類ごとに効果を計算しています。
計画の中身も分類しました。きっかけを「時刻と場所」にするか「ある作業が終わったとき」にするか、行動を「頭の中の手順」にするか「自分への声かけ」にするか、などです。どの組み合わせが効きやすいかも調べています。
わかったこと

実行意図を作った人は、作らなかった人より、考え方・気持ち・行動のどれでも良い結果になりました。効果の大きさは、効果量 d(2つのグループの平均の差が、ばらつきの何倍かを表す数字)で0.27〜0.66です。心理学では0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きいとされることが多いので、小さめから中くらいの効果になります。
d = 0.27 なら、作った人と作らなかった人の成績の分布はかなり重なります。決めた全員がはっきり変わるのではなく、全体として少し実行しやすくなる、くらいに受け止めるのが正確です。
効果が大きくなった条件は3つでした。
- 「もし〜したら、〜する」という条件の形で書いた計画
- その目標をやりたいという気持ちが強い人
- 決めた計画を、声に出したり書き直したりして何度か思い返した場合
同じ著者のうち2人が2006年に出した、94件の検証をまとめた前のメタ分析では、目標の達成への効果は d = 0.65 と、中くらいからやや大きめでした。検証の数が7倍近くに増えた今回は、結果の種類によって効果に幅があることがわかりました。
まだわかっていないこと・弱いところ
642件という数は大きく、ひとつの研究よりずっと確かな結果です。ただ、メタ分析は集めた研究の質に左右されます。効果が出なかった研究は論文になりにくいので、全体の効果が少し大きめに出ている可能性は、どのメタ分析にも残ります。
やる気が強いほど効く、という結果は裏返すと、やりたくないことには効きにくいということです。実行意図は「やるつもりはあるのに、つい忘れる・後回しにする」ときに力を出す方法で、やる気そのものを生み出すものではありません。
また、今回の結果は、いろいろな目標(運動、食事、勉強、気持ちの切りかえなど)をまとめた平均です。資格の勉強のような何か月も続く目標で、どれくらい効くかを直接示したものではありません。
生活でどう使えるか
勉強に当てはめるなら、きっかけには毎日必ず起きる行動を選びます。時刻だけ(「7時になったら」)より、その時刻にしていること(「電車で座ったら」「朝に日を浴びたら」)のほうが、思い出すきっかけがはっきりします。
- 計画の1行目に「もし(毎日ある行動)したら、(すぐできる最初の行動)する」と書く。例:「もし電車で座ったら、問題集を開いて1問解く」
- うまくいかなかったときの予備の文を1行足す。例:「もし朝バタバタしたら、帰りの電車で1問だけ解く」
- 前の晩、翌日の荷物に問題集を入れるときに、その文を1回だけ思い返す
行動は「1時間勉強する」のような大きなものより、「問題集を開いて1問解く」のように、きっかけのすぐあとにできる小さなものにします。問題集を持っていなければ、電車で座っても何もできません。前の晩に荷物へ入れるところまで決めておくと、計画が途中で止まりにくくなります。
思い返すのは、研究で効果が大きくなった条件の1つです。手帳やスマホのメモに書いて、寝る前に読むだけでもかまいません。寝る前に見直すことと記憶の関係は、「寝る前の勉強は記憶に残る?2つの実験でわかった睡眠の効果と限界」で詳しく書いています。
私は、効果はありそうだと思いましたが、毎日の時間割に「もし〜したら」の文を入れるのはやめました。こういう決まりは、自分で決めるものだと思ったからです。代わりに、自分の中の決まりとして「化粧をするときに、英語でおしゃべりする」を始めました。
参考リンク
- Sheeran P, Listrom O, Gollwitzer PM. The when and how of planning: Meta-analysis of the scope and components of implementation intentions in 642 tests. European Review of Social Psychology, 2025(コンスタンツ大学の公開ページ)
- Gollwitzer PM, Sheeran P. Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 2006
アイキャッチ画像: Photo by Jess Bailey on Unsplash

