夜の運動のあとは睡眠の数値が下がる?約1万5千人のデータと水泳選手の実験

白と黒のデジタル腕時計 健康

夜にきつい運動をすると、その夜は寝つきが遅くなり、眠っている間の心拍が上がり、HRV が下がります。HRV は心拍の間隔のゆらぎのことで、高いほど体が休めているとされる数値です。運動を終えた時刻が寝る時刻に近いほど、また運動がきついほど、この差は大きくなります。約1万5千人の腕時計型の機器のデータでも、大学の水泳選手12人の実験でも、同じ傾向が見られました。運動した翌朝に数値が悪くても、それだけで体調が悪いと決めつけなくてよさそうです。

どんな研究か

1つ目は、2025年4月に Nature Communications に載った研究です(Leota ほか)。ふだんから運動している大人1万4689人が、腕に着ける機器(WHOOP)で記録した1年分のデータを分析しました。夜の数にすると約408万夜です。平均年齢は37.9歳で、74%が男性です。運動のきつさは心拍数から4段階(軽い・中くらい・きつい・全力)に分け、運動を終えた時刻がその人のいつもの寝る時刻の何時間前だったかで比べました。

2つ目は、2026年8月に Physiological Reports に載った小さな実験です(Furukawa ほか)。対象は、週6日練習している男子大学水泳選手12人(平均19.7歳)です。同じ選手に、2通りの夜を過ごしてもらいました。1つは 18:30〜20:30 に練習し、最後に50mの全力ダッシュを10本泳ぐ夜で、もう1つは同じ時間を座って本を読むなどして過ごす夜です。どちらを先にするかはくじで決め、2つの夜は1週間以上あけました。どちらの夜も23:00〜7:00 に眠り、頭に着ける脳波計で睡眠を、胸のセンサーで心拍を測りました。

わかったこと

夜の寝室の窓
Photo by Joseph Cortez on Unsplash

1万5千人のデータでは、全力の運動をいつもの寝る時刻の2時間前に終えた夜は、軽い運動の夜と比べて次のようになっていました。

項目 寝る2時間前に終えた 寝る時刻の2時間後に終えた
寝つき 36分遅い 80分遅い
睡眠時間 22分短い 43分短い
眠っている間の心拍 1分あたり3.9回多い 1分あたり9.4回多い
HRV 14%低い 33%低い

軽い運動や中くらいの運動なら、寝る時刻の2時間ほど前までに終えれば、寝つきや睡眠の質は運動しなかった夜とほとんど変わりませんでした。論文の要旨では、寝る4時間以上前に終えた運動は、きつさにかかわらず睡眠との関係が見られなかったとしています。ただ、本文の表では4時間前でも一部に差が出ていて、きっちり4時間で線が引けるわけではありません。

水泳選手の実験では、練習した夜に夜中に目が覚めていた時間が増えました(平均3.4分から23.5分)。夢を見ることが多いレム睡眠は、107.6分から81.4分に減りました。眠り始めの90分の心拍は、1分あたり52回から63回に上がっています(測れたのは9人)。一方で、寝つくまでの時間と合計の睡眠時間には、はっきりした差が出ませんでした。

まだわかっていないこと・弱いところ

1万5千人の研究は、人が自分で選んだ運動をあとから集めた観察研究です。夜にきつい運動をする人は、仕事が遅い・夕食が遅いなど、ほかの点でも違うかもしれません。光や食事、お酒の影響は調べていません。そのため、運動が原因で睡眠が変わったとまでは言えません。参加者はふだんから運動している人だけで、男性が4分の3を占めます。

水泳選手の実験は、くじで順番を決めて同じ人の2つの夜を比べているので、原因まで考えやすい作りです。ただ、12人と少なく、男性の若い選手だけです。陸上の運動と比べていないので、水泳だから起きたのかもわかりません。

2019年に23本の研究をまとめた総説(Sports Medicine)では、夕方から夜の運動は、全体としては睡眠を悪くしていませんでした。寝る1時間前までにきつい運動を終えた場合だけ、寝つきや睡眠時間が悪くなるかもしれない、という結論です。今回の2本の研究で、寝る直前のきつい運動がどれくらい影響するかが、数字でわかってきました。

生活でどう使えるか

この研究から使えることは2つあります。1つは、腕時計型の機器の数値の読み方です。きつい運動をした翌朝は、HRV が低く、眠っている間の心拍が高く出やすくなります。その朝の数値だけを見て「疲れている」「体調が悪い」と思うと、気分まで落ち込みがちです。運動した翌朝は数値が悪く出るのがふつうだと知っておけば、必要以上に気にせずに済みます。

確かめたいなら、自分のデータで比べられます。2〜4週間分の記録を、夜に運動した日とそれ以外の日に分けて、HRV と眠っている間の心拍の平均を並べてみてください。差があっても、運動した夜はそれがふつうだとわかれば安心できます。

私も、スイミングに行った夜を自分の Fitbit で見てみました。寝つきが遅く、HRV はやや低め、眠っている間の心拍はやや高めで、この研究と同じ傾向でした。一方で、夜中に目が覚めている時間は、水泳選手の実験とは逆に、むしろ短くなっていました。まだ5夜分なので参考程度ですが、自分の数値で確かめると、研究の数字を自分のこととして読めます。

もう1つは寝る時刻です。習い事やジムのように、運動の時間を自分で動かせないこともあります。たとえば20:00に終わる運動なら、寝る時刻を早めすぎず、運動の終わりから3時間ほどあけるとよさそうです。自分で決められる練習なら、夜は軽めから中くらいにして、最後の全力ダッシュを朝や休日に回す方法もあります。

私はスイミングが好きで続けたいのですが、行けるのは平日の夜だけです。そこで、泳いだ翌朝は数値が下がりやすいと思って読み、寝る時刻も泳ぎ終わりに合わせて決めることにしました。1日に2回泳いだ日は、なかなか寝つけませんでした。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、大人の睡眠時間の目安を6時間以上としています。寝つけない日が続く、日中に強い眠気があるなど、気になる症状があれば医療機関に相談してください。睡眠と勉強の関係については「寝る前の勉強は記憶に残る?2つの実験でわかった睡眠の効果と限界」で詳しく書いています。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Leonardo Toledo on Unsplash

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