美団LongCat-2.5、API先行で公開 入力0.3ドル

茶トラの猫 AI

中国のフードデリバリー大手、美団(Meituan)の LongCat チームが、新しいモデル LongCat-2.5 を11月1日に公開しました。文章と画像を最初から一緒に学習したモデルで、ターミナル・ブラウザ・表計算ソフトなどを長時間操作する AI エージェントの用途を狙っています。前の版の LongCat-2.0 は重みが公開されていましたが、2.5 は今のところ API だけです。料金は期間限定の割引価格で、入力100万トークン0.30ドル、出力1.20ドルです。OpenAI 形式と Anthropic 形式の両方で呼べるので、手元のツールから試すまでの手間は小さくなっています。

背景と文脈

LongCat は、美団が2025年から出しているモデルのシリーズです。2.0 は重みを公開したため、中国発の公開モデルの1つとして DeepSeek や Kimi と並べて語られてきました。2.5 には9月25日に出たプレビュー版があり、今回が正式な発表にあたります。Hacker News のコメントでは、プレビューの期間に OpenCode(オープンソースのコーディング用エージェント)から無料で試せたという声もありました。

中国の公開モデルを取りまく状況は、この数日で動いています。中国の商務省は11月、大きな AI モデルの重みを輸出許可制にする案を出しました。規模の基準は2兆パラメータ以上などです。LongCat-2.5 は報道では1.6兆パラメータとされ、この基準には届きません。ただ、美団は重みを出すかどうかも時期も示していません。

エージェント向けのモデルは、10月だけでも Mistral Large 4 の重み公開や Gemini 4 Carbon の発表が続きました。LongCat-2.5 は、こうしたモデルより安い価格で、長い作業を最後までやり通すことを売りにしています。

技術/ビジネス面

白い電卓
Photo by Katie Harp on Unsplash

LongCat-2.5 は MoE(Mixture of Experts:中に小さな専門家をたくさん持ち、入力ごとに一部だけを動かす仕組み)のモデルと紹介されています。全体は1.6兆パラメータ、1回に動くのは約480億パラメータという数字が出回っていますが、2.0 の数字がそのまま使われているという指摘もあり、確かではありません。コンテキストウィンドウ(1回の呼び出しで読める長さ)は100万トークンです。

美団が出したベンチマークの数字を、2.0 と並べると次のとおりです。いずれも美団が自分で測った値です。

ベンチマーク(測るもの) LongCat-2.5 LongCat-2.0
Terminal Bench v2.1(ターミナル操作の課題) 88.4 70.8
Terminal Bench v4.0(上の難しい版) 38.5 3.0
DeepSWE v1.1(実際のリポジトリでの修正) 64.6 9.7
BrowseComp(ブラウザで調べものをする課題) 91.9 79.9
AutomationBench v1.0.6(業務の自動化) 51.8 15.8
HLE(道具あり。専門家レベルの難問集) 63.1 37.5

2.0 からの伸びが一番大きいのは、長い作業を最後までこなす課題です。Terminal Bench v4.0 は3.0から38.5へ、DeepSWE は9.7から64.6へ上がりました。美団は中国語の発表で、いくつかのベンチマークで Claude Opus 4.8 と Opus 5 の間に入ると説明しています。公式ブログの表でも、Terminal Bench v2.1 の Opus 5 は89.1で、ほぼ並んでいます。

比べる相手の選び方には疑問も出ています。Hacker News の議論では、表に GPT-5.5 や Opus 4.8 など一世代前のモデルが入っている理由が書かれていない、と指摘したコメントがありました。当ブログで10月30日に紹介した Mistral Large 4 は、Terminal-Bench 4.0 で41%でした。数字だけ見ると LongCat-2.5 の38.5と近いものの、使ったエージェントの作りが違うので、そのまま比べることはできません。

開発者として試すなら

API の入り口は2つあります。公式ドキュメントのクイックスタートによると、OpenAI 形式は https://api.longcat.chat/openai/v1/chat/completions、Anthropic 形式は https://api.longcat.chat/anthropic/v1/messages で、モデル名はどちらも LongCat-2.5 です。OpenAI 形式なら次の形で呼べます。

curl -X POST https://api.longcat.chat/openai/v1/chat/completions \
  -H "Authorization: Bearer $LONGCAT_API_KEY" \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{"model": "LongCat-2.5", "messages": [{"role": "user", "content": "Hello!"}], "max_tokens": 1000}'

API キーは作ったときに一度しか表示されないので、すぐに保存しておきましょう。Hacker News では、管理画面に入るには美団(Keeta)のアカウントでのログインが必要で、ログイン先のサイトがつながらなかったという報告もありました。

料金のページにある期間限定の価格は次のとおりです。割引がいつ終わるかは書かれていません。

100万トークンあたり LongCat-2.5
入力(キャッシュなし) 0.30ドル(2元)
入力(キャッシュあり) 0.006ドル(0.04元)
出力 1.20ドル(8元)

エージェントの1回の作業で入力8万トークン、出力2万トークンを使うとすると、キャッシュなしで約0.048ドルです。キャッシュ(前と同じ入力の部分を安く扱う仕組み)が効くと、入力の単価は50分の1になります。同じ長い指示を何度も送るエージェントでは、キャッシュが効くように指示の先頭をそろえておくと、費用がかなり下がります。参考までに、Mistral Large 4 の API は入力100万トークン0.70ドルでした。

つまずきそうな点は、DEV Community の解説記事がドキュメントから拾っています。考える過程を出す thinking は "thinking": {"type": "enabled"} で切りかえます。このとき temperature(出力のばらつき)は、thinking ありなら1.0、なしなら0.7に固定され、ほかの値を渡しても上書きされます。temperature を0にして毎回同じ答えを期待するテストは、そのままでは通りません。

最大出力の長さは、資料によって128Kトークンと256Kトークンに分かれています。長い出力を前提にするなら、自分で確かめてから組み込むほうが安全です。上限に当たると HTTP 429 と再試行までの秒数(retry_after)が返ってくるので、待ってからやり直す処理を入れておきましょう。Hacker News では、英語で聞いても中国語で答えが返ってきたという報告もありました。システムプロンプトで返す言語を指定しておくと安心です。

これからどうなるか

次に気になるのは、重みが公開されるかどうかです。公式ブログには GitHub と Hugging Face へのリンクがありますが、2.5 の重みが置かれるかどうかは書かれていません。2.0 と同じように公開されれば、自分のサーバーで動かす選択肢が増えます。ただ、1.6兆パラメータ級だとすると、個人の GPU で動かせる大きさではありません。

開発者にとって大きいのは、Anthropic 形式で呼べることです。Anthropic の Messages API に合わせて書いたエージェントなら、ベース URL とモデル名を変えるだけで LongCat-2.5 と比べられます。高いモデルで作ったエージェントの一部の工程だけを安いモデルに回し、費用を下げる試算がしやすくなります。そのときは、比べる間は OpenAI 形式か Anthropic 形式のどちらか一方に決めておきましょう。途中で形式を変えると、道具の呼び出しの失敗がモデルのせいか形式のせいか区別できなくなります。

ベンチマークはすべて美団が測った値で、外部の評価はまだ出ていません。Artificial Analysis などの第三者の数字が出るまでは、自分の作業に近い課題で少し試すくらいにとどめておくのがよさそうです。

まとめ

美団の LongCat-2.5 は、長いエージェントの作業に強いとうたうモデルで、まず API だけで公開されました。入力100万トークン0.30ドルと安く、OpenAI 形式と Anthropic 形式の両方で呼べます。temperature が固定されること、最大出力の長さが資料で食い違うこと、ベンチマークが自社の値だけであることには注意が必要です。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Gaelle Marcel on Unsplash

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