Google DeepMindは10月27日、世界モデルの新版Genie 4を研究プレビューとして公開しました。文章や画像から、キーボードで歩き回れる仮想世界をリアルタイムに作るモデルです。今回は映像に合わせた音楽や環境音、会話も同時に生成します。動いている途中で文章を打てば、天気を変えたり人物を足したりもできます。まずは一部の試験利用者向けで、Google AI Ultraの契約者やGemini APIの先行パートナーにも順次広げる予定です。
背景と文脈
世界モデル(world model:環境がこの先どう動くかを予測し、映像として描き出すAI)は、ゲームやロボットの分野で注目を集めています。現実で試すと危険だったり高くついたりする場面を、仮想空間で何度でも再現できるためです。
Genieシリーズは2024年2月の初代で2Dの横スクロール世界を作り、同年12月のGenie 2で3Dへ広げました。前作のGenie 3は約1年前に研究プレビューとして登場しています。今年1月には、文章や画像から世界を作って遊べるProject Genieも一般向けに出ました。
競争も激しくなっています。TechCrunchの記事によると、AMDはWorld Labsの買収を進めています。AmazonもDecartの買収を協議中と報じられています。Runwayは音声つきで遊べるGWM Worlds 2を出しました。世界モデルは研究テーマから、各社が取り合う製品分野に変わりつつあります。
技術/ビジネス面

最大の変化は音です。DeepMindはGenie 4を、音声をネイティブに作る初めてのリアルタイム世界モデルと位置づけています。音楽、周囲の物音、登場人物の会話が映像と一緒に生まれます。別のモデルで後から音を付ける手間が要りません。
2つ目は途中からの操作です。利用者はキーボードで移動やカメラを動かしつつ、文章で場面を変えられます。「雨を降らせる」「人を一人出す」といった指示を、Geminiが場面に合わせて言い換えてから反映します。TechCrunchによると、同じ場面を保てる時間は最大2分で、前作の2倍になりました。
3つ目はGeminiとの組み合わせです。Gemini Omniが見た目や動きを現実に近づけ、ほかのGeminiモデルが場面のつじつまを保ちます。デモでは、Gemini 3.8 Flashが画面を見て目標を手順に分け、各手順が成功したかを確かめます。うまくいかなければ計画を立て直します。Gemini 4 Argonと組み、人型ロボットがチェッカーを指す場面をシミュレーションした例も示しました。
安全面では、生成した映像と音声のすべてにSynthID(Googleの電子透かし技術。AIで作ったことを後から判別できるようにする)を埋め込みます。公開前には社内の安全評価も行いました。
これからどうなるか
課題も明記されています。長く動かしたり何度も編集したりすると、細部や物の位置がずれていきます。複雑な物理、音の正確さ、画面内の文字の読みやすさも研究途中です。Googleの研究者自身も「まだ初期段階」と話しており、製品としての形は固まっていません。
当面の使い道として、映画やゲームの絵コンテ作り、ロボットやエージェントの訓練環境が挙がっています。開発者にとっては、Gemini APIとGoogle AI Studioの先行提供が入り口になります。たとえばゲームの試作で、背景や効果音を作り込む前に雰囲気を確かめる用途が考えられます。ロボットやエージェントの評価で、現実で用意しにくい場面を手早く作る使い方もありそうです。
ただし、場面が保てるのは数分単位です。長い検証や正確な物理が必要な処理は、従来のシミュレーターに任せる形が続くでしょう。
まとめ
Genie 4は、映像と音を同時に作り、途中から文章で場面を変えられる世界モデルです。同じ場面を保てる時間は前作の2倍の最大2分になりました。現在は限られた試験利用者向けで、Google AI UltraやGemini APIへの展開が予定されています。細部のずれや文字の読みやすさなど、課題もはっきり残っています。
参考リンク
- Genie 4: A new generation of world simulation(Google DeepMind)
- Google’s Genie 4 world model adds audio, more realistic worlds, and real-time steering(TechCrunch)
アイキャッチ画像: Photo by Milad Fakurian on Unsplash

