OpenAIとAnthropic、ロビー費が過去最高を更新

capitol building washington AI

OpenAIとAnthropicが、ワシントンでのロビー活動費をそろって過去最高水準に押し上げています。2026年上半期、Anthropicは353万ドルを投じ前年同期のおよそ3倍に、OpenAIも222万ドルとほぼ倍増させました。背景にあるのは、AIモデルの審査ルールやデータセンター規制を巡る攻防です。興味深いのは、両社が目指す規制のかたちがまったく逆を向いている点で、AI規制の主導権争いが具体的な政策論争として表面化してきたことを示しています。

背景と文脈

米国では、AIをめぐる規制が連邦レベルと州レベルの両方で同時並行に進んでいます。カリフォルニア州のSB 53やニューヨーク州のRAISE Act、イリノイ州のSB 315など、州ごとに安全性や透明性を求める法律が相次いで成立・検討される一方、連邦議会でも全米共通のルール作りを求める声が強まっています。この「州ごとにバラバラなルール」か「連邦による一本化」かという対立軸が、AI企業のロビー活動の主戦場になっています。

OpenAIとAnthropicは、資金力で言えばMicrosoftやGoogleといった老舗テック企業にまだ及びませんが、AI企業だけを見るとロビー支出の伸び方は際立っています。Anthropicの上半期の支出は、2025年通年の実績である310万ドルをすでに上回りました。四半期別で見ても、Anthropicの支出はNvidiaの当該四半期の支出を上回ったと報じられており、AI専業企業がインフラ企業を凌ぐ規模でワシントンに資金を投じ始めていることがわかります。老舗テック・防衛企業のロビー支出が伸び悩む中でAI企業だけが伸びているという対比も、AI政策がワシントンの優先課題として急浮上している様子を映し出しています。

技術/ビジネス面

government policy meeting
Photo by Maria Oswalt on Unsplash

両社が働きかけている政策分野は幅広く、新しいAIモデルの公開前審査ルールを筆頭に、データセンターの建設や電力供給、サイバーセキュリティ、著作権、クラウド調達、防衛関連の政府調達まで及びます。AIモデルの学習に使われる電力需要の急増や、著作権者との訴訟が相次いでいることを踏まえれば、こうした分野がロビー活動の主戦場になるのは自然な流れとも言えます。なかでも際立つのが、規制のあり方そのものに対する両社の立場の違いです。

OpenAIは、連邦議会が既存の州法を土台にして全米共通のルールを作る「逆連邦主義」的なアプローチを支持しています。ライバルであるAnthropicも一定の評価をしているイリノイ州の比較的厳格な法律を土台にする案です。一方のAnthropicは、カリフォルニアやニューヨークなど複数の州で進む安全性重視の法律作りを個別に後押しする、州ごとの積み上げ路線を選んでいます。同じくAI安全性を重視する企業でありながら、ルール作りの主導権を連邦に置くか州に置くかで戦略が分かれている格好です。連邦一本化を求める側には「州ごとに違うルールでは全米展開のコストが跳ね上がる」という言い分があり、州法の積み上げを支持する側には「連邦の議論を待っていては目の前のリスクに対応できない」という理屈があります。どちらも一理あるだけに、単純にどちらが正しいと言い切れない綱引きになっています。

これからどうなるか

ロビー活動費の急増は、AI規制の中身が実際の開発現場に直結する段階に入ったことの表れでもあります。モデルを公開する前にどんな審査を通す必要があるか、著作権を含むデータ利用にどこまで制約がかかるかといったルールは、今後スタートアップから個人開発者まで、AIを使ったプロダクトを作るすべての人に影響します。特に州ごとに異なる規制が並び立つ状況が続けば、複数州でサービスを展開する開発者は、対応コストの増加を避けられなくなるでしょう。

OpenAIとAnthropicのどちらの路線が優勢になるかによって、将来自分が使うAI APIの仕様や利用規約が影響を受ける可能性もあります。連邦一本化なら全国共通のルールに沿えばよくなる一方、州ごとの積み上げが進めば、サービス提供地域ごとに異なる制約に配慮したプロダクト設計が必要になるかもしれません。

まとめ

OpenAIとAnthropicは2026年上半期、ロビー活動費をそろって過去最高水準に伸ばしました。両社は規制の主導権を連邦に置くか州に置くかで正反対の立場を取っており、この綱引きの行方は今後のAI開発ルールのかたちを左右しそうです。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Sonder Bridge Photography on Unsplash

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