LibreOffice、「AIなし」を機能と明言 標準で生成AI非搭載

person writing on brown wooden table near white ceramic mug AI

オープンソースの文書編集ソフトLibreOfficeが、「AIなし」を製品の機能として位置づけました。開発元のThe Document Foundationは、生成AIを標準設定に組み込む計画はないと説明しています。理由は、文書が端末の外へ出ないことを確実に保証するためです。この方針は8月下旬のLibreOffice 26.8のリリース後に改めて示され、9月初めに公式ブログで説明されました。TechCrunchが取り上げています。

背景と文脈

オフィスソフトへのAI機能の組み込みは、ここ数年で急速に進みました。文章の要約や下書き生成が標準で使えるようになる一方で、文書の内容がクラウド上のAIに送られる点を懸念する声も出ています。

LibreOfficeは数千万人規模の利用者を持つ非営利プロジェクトです。個人だけでなく、自治体や企業も使っています。そうした組織には、機密情報や法的に守秘義務のある情報を扱う利用者が多く含まれます。

今回の方針は、その層への明確なメッセージです。AIを入れるか入れないかを、製品の仕様として約束する形にしました。

「AIを入れない」ことを売りにする動きは、ソフトウェアの世界では新しい発想です。これまで機能の数は、製品の優位性を示す指標でした。今回は、機能を足さないことが、信頼性の指標として語られています。

技術/ビジネス面

black laptop computer turned-on displaying source code on table
Photo by Jantine Doornbos on Unsplash

Document Foundationは、方針の根拠を3点で説明しています。1点目はデータの保護で、文書が利用者の端末内にとどまることです。2点目は利用者の主導権で、組織が自分たちの判断でデータの行き先を決められることです。3点目は独立性で、特定のAI事業者やネットワーク接続に依存しないことです。

声明の中では、機密情報、守秘義務のある情報、個人情報を扱う組織は、そのデータの行き先を知る必要があるという趣旨が語られています。監査に耐える保証は、データが端末の外に出ないことだけだという考え方です。

一方で、AIの全面拒否ではありません。同財団は、これは現時点の判断であり、恒久的な拒否ではないと述べています。ローカルで動くAIモデルにつなぐ拡張機能を、利用者が自分で入れることは妨げません。

つまり、標準は「入れない」で、使いたい人は自分で足す設計です。ソフトウェアの既定値をどこに置くかという、設計上の判断を前面に出した形といえます。

実装面で見ると、この方針は設計の分離にあたります。本体にはAIの呼び出し口を入れず、拡張機能の仕組みに外側から接続させる形です。利用者がローカルのモデルを選び、通信先も自分で決めるため、データの流れを監査しやすくなります。

オフィスソフトの文書には、契約書、人事情報、顧客リストなど、外に出せない内容が含まれます。端末の外に出ないという一点が、監査では最も説明しやすい根拠になります。

これからどうなるか

この方針が支持されるかは、利用者の反応次第です。AI機能を求める利用者にとっては、機能が足りない選択肢にも映ります。一方で、データの扱いに厳しい組織にとっては、導入しやすい理由になります。

開発者にとっての示唆は2つあります。1つ目は、プロダクトにAI機能を入れるとき、既定でオフにする設計と、データの送信先を明示する設計が、顧客の信頼に直結することです。2つ目は、ローカルで動く小型モデルへの需要が、こうした方針を背景に続くことです。拡張機能として差し込める作りにしておけば、オンプレミスや閉域網の顧客にも届きます。

今後は、他のオープンソースプロジェクトが同様の方針を示すかどうかも見どころです。

AI機能の組み込みを進める他のソフトにとっても、既定の設定とデータ送信先の透明性は、避けて通れない論点になりそうです。

まとめ

LibreOfficeは、生成AIを標準で入れない方針を「機能」として示しました。根拠は、データが端末の外に出ないという保証です。ローカルAIの拡張は許す柔軟さもあります。AI機能の既定値をどう決めるかは、開発者自身の課題でもあります。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Unseen Studio on Unsplash

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