米調査機関Pew Research Centerが、世界37カ国・4万2151人を対象にした大規模調査の結果を公表しました。2026年2月から5月にかけて実施されたもので、今後20年でAIが雇用を減らすと考える人の割合が、雇用を増やすと考える人を世界的に上回っていることが分かりました。特に高所得国では55%がAIによる雇用減少を予想しており、中所得国の36%を大きく上回っています。開発者として日々AIの恩恵を実感していても、社会全体の受け止め方には大きな温度差があることを示す結果です。
背景と文脈
生成AIやLLM(Large Language Model、大規模言語モデル)が急速に普及するなかで、その社会的な影響をどう受け止めるかは国や所得水準によって大きく異なります。Pew Research Centerは長年、AIに対する世界各国の意識調査を継続的に実施しており、今回の調査は日本、米国、ドイツ、フランス、韓国、ブラジル、アルゼンチンなど37カ国を対象にした大規模なものです。
これまでの調査でも、AIの普及に対する期待と不安が国によって二分される傾向は指摘されてきましたが、今回の調査で特に際立ったのは、雇用への影響に関する悲観的な見方が高所得国ほど強いという結果です。高所得国18カ国の回答者では55%が「今後20年でAIによって仕事が減る」と回答した一方、中所得国18カ国では36%にとどまりました。中所得国では「わからない」と答えた人の割合が34%と、高所得国の22%より高く、AI導入の実感そのものがまだ薄いことも背景にあるとみられます。
技術/ビジネス面

この調査では雇用への影響だけでなく、AIをどの主体に規制してほしいかという「信頼」の面も調べています。過去の同種調査では、自国政府や米国、中国に規制を任せるよりも、欧州連合(EU)を信頼するという回答が多い傾向が確認されており、今回の調査でもAI規制のあり方を巡る国際的な認識の違いが焦点のひとつになっています。
また、若年層とそれ以外の世代でAIに対する見方にどのような違いがあるかも調査対象に含まれており、AIへの関心や理解度そのものが国によって大きくばらついている実態も明らかになっています。全体として、高所得国ほどAIへの接触機会が多く、便利さと同時にリスクへの懸念も強く意識される傾向がうかがえます。
開発者やプロダクトを提供する企業にとって、この結果は「技術的に優れたAI機能を出せば受け入れられる」という単純な図式が通用しないことを意味します。特に雇用への影響という生活に直結するテーマでは、機能の説明だけでなく、AIがもたらす変化にどう向き合うかという姿勢そのものが、ユーザーからの信頼を左右する要素になりつつあります。
これからどうなるか
AI関連のプロダクトを開発・提供する立場からすると、今回の調査結果は「機能を作れば使われる」時代の終わりを示唆しています。特に業務効率化や自動化を掲げるAIツールを企業向けに展開する場合、雇用への不安を和らげる説明や、人がどう関与し続けるかを示す設計が、採用の可否を左右する場面が増えそうです。
また、地域ごとにAIへの期待と不安の温度差が大きいことは、グローバルに展開するプロダクトにとって、画一的なメッセージングではなく、市場ごとに異なるコミュニケーション戦略が必要になることも意味します。日本を含むアジア圏の反応がどう出るかは、今後公開される詳細な国別データを追う価値がありそうです。
まとめ
Pew Research Centerの37カ国調査で、高所得国の55%が今後20年でAIによる雇用減少を予想し、雇用増加への期待を上回ることが分かりました。AI開発に携わる側は、機能の優秀さだけでなく、雇用不安への向き合い方も問われる局面に入っています。
参考リンク
アイキャッチ画像: Photo by Anthony DELANOIX on Unsplash
