AIエージェントサービスの「Instinct」と、Metaが手がける「Muse」が相次いで、ユーザーに代わって電話をかける機能を追加しました。レストランへの当日予約やキャンセル待ちの登録、料金交渉といった、オンラインでは完結しない「電話でしか進まない用事」をAIが肩代わりします。これまでチャットや画面操作の代行が中心だったAIエージェントが、いよいよ人間同士の会話が必要な領域にまで踏み込んだ格好です。
背景と文脈
InstinctやMuseのようなAIエージェントは、ユーザーに代わってウェブサイトやアプリを操作し、予約やタスクをこなすサービスとして急速に台頭してきました。Instinctは元研究者のNoah Shinn氏が設立したサンフランシスコ拠点のスタートアップで、先月3億5000万ドルの資金調達を15億ドル規模の評価額で行い、現在はさらに10億ドル規模の評価額での追加調達交渉が報じられています。一方のMuseはMetaが開発し、公開後に米国で73万ダウンロードを記録、アプリストアのランキングで一時2位につけるなど話題になりました。
ただし、これらのAIエージェントには共通する弱点がありました。オンラインで予約フォームが用意されているサービスなら操作を代行できますが、個人経営の飲食店への直接予約や、キャンセル待ちの依頼、サブスクリプションの解約交渉など、担当者との電話でしかやり取りできない場面には対応できなかったのです。ライバルサービスの一部がすでに電話代行機能を売りにしており、InstinctとMuseにとっては機能面での遅れを取り戻す意味合いも強くありました。
技術/ビジネス面

Instinctが新たに投入した「Instinct Concierge」は、オンライン予約枠のない飲食店への電話予約、キャンセル待ちリストへの登録、請求内容を巡る事業者との交渉といった「対人折衝が必要な案件」を担当します。現時点では早期アクセスとして一部ユーザーに限定公開されており、今後対象を広げていく計画です。
一方のMuseは、米国内の事業者に対して電話をかけられる機能を追加しました。Metaはまず、この機能を強く要望していたユーザーから優先的に提供を始めています。両社とも音声合成と対話AIを組み合わせ、電話口の店員とやり取りしながら目的の予約や交渉を完結させる仕組みです。
これまで両社とも「電話代行はまだできない」という弱みを抱えていましたが、今回の機能追加によって主要な競合との機能差がほぼ解消されました。裏を返せば、AIエージェント市場では画面操作の自動化だけでは差別化が難しくなりつつあり、各社が音声通話という新たな土俵で競争を始めていることを示しています。
これからどうなるか
電話代行機能が一般化すると、開発者や事業者側にも影響が及びます。コールセンターや予約受付の窓口はこれまで「人間が対応する前提」で設計されてきましたが、AIエージェントからの発信が増えれば、本人確認の方法や会話ログの扱いなど、受け手側のシステムにも見直しが必要になる可能性があります。自前で電話対応の自動化やIVR(自動音声応答)を組んでいる開発者にとっては、AIエージェント経由の着信をどう識別し、適切に処理するかが新たな設計課題になりそうです。
また、Instinctのような小規模スタートアップが数十億ドル規模の評価額で調達を重ねている点は、AIエージェント市場全体への投資熱の高さを示しています。今後は電話だけでなく、対面窓口やビデオ通話など、AIエージェントがカバーする「人手を介す接点」がさらに広がっていくと見られます。
まとめ
AIエージェントのInstinctとMetaのMuseが、ユーザーに代わって電話をかける機能を相次いで追加しました。オンライン予約枠のない飲食店予約やキャンセル待ち登録など、人間同士の会話が必要だった用事をAIが代行できるようになり、競合との機能差もほぼ解消されています。
参考リンク
アイキャッチ画像: Photo by Shubham Dhage on Unsplash

