Union.aiは2026年8月4日、オープンソースのワークフロー実行基盤「Flyte 2」の一般提供(GA)を開始したと発表しました。実行時に分岐やループ、ツール呼び出しをしながら動くAIエージェント処理を、純粋なPythonのコードだけで記述できるのが特徴です。従来こうした動的な処理は障害に弱く運用が難しいとされてきましたが、Flyte 2は障害発生時に手動介入なしで自動復旧する「耐障害ランタイム」をオープンソースとして初めて組み込みました。
背景と文脈
Flyteのルーツは配車サービスLyftにさかのぼります。到着予想時刻(ETA)を予測する機械学習モデルを継続的に運用するための社内基盤として2016年に生まれ、同様の課題を抱える他社と協力するため2020年にオープンソース化されました。現在はLinux Foundation AI & Dataが公式ホストするプロジェクトの一つになっています。
開発元のUnion.aiは、Flyteのオープンソース版を土台に企業向けのマネージドサービスを提供する会社として2020年に設立されました。2022年に1000万ドルのシード資金を調達したのを皮切りに、2023年には1910万ドルを追加調達し、2026年2月には既存投資家NEAが主導し、Nava VenturesやMozilla Venturesが加わる形で3810万ドルのシリーズAを完了しています。
近年、企業はチャットボットのような単純な応答だけでなく、状況に応じて判断を変えながら複数のツールを呼び出す「エージェント型」のAI処理を本番環境で動かす必要に迫られています。しかし、そうした動的な処理はこれまで専用の手組みスクリプトで構築されることが多く、障害が起きるたびにエンジニアが手動で復旧作業を行う運用負荷の高さが課題でした。Flyte 1の時代はワークフローの記述に専用の記法を覚える必要があり、既存のPythonコードベースへの統合にも一定の学習コストがかかっていました。
技術/ビジネス面

Flyte 2最大の特徴は、専用のDSL(Domain Specific Language、特定の用途に絞った独自の記述言語)を使わず、素のPythonコードのままワークフローを書ける点です。既存のPythonプロジェクトに組み込みやすく、分岐・ループ・ツール呼び出しといった動的な制御構造も自然に表現できます。静的な処理の流れ(DAG:有向非巡回グラフ、タスクの依存関係を表す図)が必要な場面では、従来通りの書き方も引き続きサポートしています。
もう一つの柱が「耐障害ランタイム(durable runtime)」です。コードの下で動くインフラや計算資源の状態を把握し、これまでエンジニアが手作業で対応していたワークフローの失敗を、実行時に自動で解決できるようにしました。実行状態やログ、失敗箇所を可視化する監視機能も備え、インタラクティブなライブデバッガーで途中から再実行することもできます。障害の原因調査にかかる時間を大きく減らせる設計だといいます。
スケーラビリティ面では、複数コンテナにまたがる並列パイプラインで大量のタスクを同時実行でき、需要に応じて自動でスケールし、負荷がなければゼロまで縮小する「スケールツーゼロ」にも対応しています。キャッシュや再試行、独自のエラーハンドリングも組み込み済みで、単一障害点を作りにくい設計になっている点も実務での使い勝手を左右しそうです。
これからどうなるか
Flyte 2はオープンソースとして無料で使えるほか、Union.aiが提供するマネージドクラウド版も用意されています。エージェント型AIを本番運用する企業が増えるにつれ、こうした耐障害性を備えたオーケストレーション基盤への需要はさらに高まりそうです。競合するAirflowやPrefectといった既存のワークフローツールも、同様の方向へ機能を拡張してくるとみられます。
手元でAIエージェントを試作している開発者にとっては、プロトタイプから本番運用への移行コストを下げられる可能性がある点が魅力です。これまでLangChainやカスタムスクリプトで組んでいたエージェントのループ処理を、Flyte 2に載せ替えるだけで障害復旧やスケーリングの面倒を基盤側に任せられるようになります。CI上でエージェントの動作を再現・デバッグしたい場合にも、実行状態を丸ごと確認できるログ機能は役立ちそうです。
まとめ
Union.aiはオープンソースのワークフロー基盤Flyte 2を正式公開し、PythonのままAIエージェントの動的な処理を書ける環境と、障害から自動復旧する耐障害ランタイムを実現しました。Lyft発の技術が2020年のオープンソース化を経て、AIエージェント時代のインフラへと進化した形です。本番運用を見据える開発チームにとって注目のツールといえます。
参考リンク
- Flyte 2 is Generally Available: The Durable Open Source AI Runtime
- Union.ai Completes $38.1 Million Series A to Power a New Era of AI Development Infrastructure
アイキャッチ画像: Photo by Randall Bruder on Unsplash

