階段を1〜2分上るような短い運動を1日2回以上、何週間か続けると、ふだん運動していない大人の心肺の体力(息切れせずに体を動かし続ける力)が上がりました。2025年に11件の試験、414人をまとめた研究の結果です。一方で、筋力・血圧・体脂肪は変わりませんでした。
どんな研究か
紹介するのは、スペインのオビエド大学などの Rodríguez ほかが、British Journal of Sports Medicine に2025年10月に出したメタ分析(同じテーマの研究をたくさん集めて、結果をまとめて計算する方法)です。研究者たちはこうした短い運動を「エクササイズ・スナック」と呼んでいます。おやつのように、1日の中で少しずつ取り入れる運動という意味です。
研究ではエクササイズ・スナックを、5分以下の運動を1日2回以上、週3日以上、2週間以上続けるもの、と決めました。この条件に合うランダム化比較試験(参加者をくじで分けて比べる試験)を11件集めています。参加者はふだん運動していない大人と高齢の人、合わせて414人で、約7割が女性でした。比べたのは、短い運動をした人と、運動しなかった人です。
試験の期間は4〜12週間、回数は週3〜7日でした。若い人や中年の人は主に階段を上り、高齢の人は脚の筋トレや太極拳をしていました。強さは、中くらいからかなりきついところまでです。
わかったこと

大人の心肺の体力は、6件の試験で上がっていました。効果量(運動した人としなかった人の差が、ばらつきの何倍かを表す数字)は1.37です。0.8以上で大きいとされることが多く、数字の上では大きな効果です。研究者たちは、この結果の確かさを4段階で上から2番目の「中くらい」としています。
ただ、この数字はそのままは受け取れません。試験ごとに結果の差が大きく、効果がどれくらいかの幅(信頼区間)も0.58〜2.17と広くなっています。
効果量を、人の並びに置きかえてみます。運動しなかった人を体力の高い順に100人並べたとき、運動した人の平均は、効果量1.37なら上から9番目くらいに入ります。幅の下の端の0.58だと、上から28番目くらいです(ばらつきが正規分布に近い場合の目安)。効果量は差をばらつきで割った数字なので、体力が何割上がったかはここからはわかりません。元になった試験の1つ(2019年の Jenkins ほか)では、著者たち自身が、体力の上がり方はわずかだったと書いています。
高齢の人では、脚の筋肉の持久力が少し上がりました(効果量0.40、4件の試験)。ただし、こちらは確かさがいちばん低い段階です。脚の筋力、体脂肪などの体の組成、血圧、血液の脂質は、どれもはっきりした差がありませんでした。参加者がもともと健康な人たちで、変わる余地が小さかったためとも考えられています。
続けやすさは高めでした。決められた回の91%が実際に行われ、続けた人の割合は約83%でした。
まだわかっていないこと・弱いところ
試験の数が11件と少なく、それぞれの人数も少なめです。試験のやり方もばらばらでした。期間は長くても12週間なので、何年も続けたらどうなるかはわかりません。
同じ年に出た別のメタ分析(Wan ほか、2025年)は、10分までの運動も含めて13件の研究をまとめました。こちらでは、質の低い研究を1つ除くと心肺の体力が上がりましたが、除く前ははっきりした差がなく、確かさは「とても低い」と判断しています。この研究では、コレステロールが下がったという結果も出ていて、Rodríguez ほかの結果とは分かれています。Wan ほかは、短い運動だけで国の目安の運動量に届くことは少ないので、目安の代わりではなく足すものとして考えるように書いています。
国の目安とのつながり
世界保健機関(WHO)は2020年の指針で、中くらい以上の運動は10分以上続けたものしか数えない、という以前の条件をなくしました。短い時間の運動も、1日の運動量に入ります。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、大人に、歩く程度以上の体の動きを1日60分以上(約8,000歩)、息がはずみ汗をかく程度の運動を週60分以上、筋トレを週2〜3日、を勧めています。座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように、とも書いています。数分の階段上りは、この「息がはずむ運動」と「座りっぱなしを減らす」の両方に少しずつ入ります。
生活でどう使えるか
このメタ分析で、大人が行っていたのは主に階段上りです。元の試験の1つ(Jenkins ほか)では、3階分(60段)の階段を、きついと感じる速さで上ってもらいました。1回20秒ほどで、1日3回、間を1〜4時間あけ、週3日、6週間です。
家の中だけでやる形は、まだあまり調べられていません。オーストラリアのディーキン大学などの Fyfe ほか(2022年)は、平均70歳の38人に、家で1日1〜3回、9分の筋トレ(椅子からの立ち座り、片脚の軽いスクワットなど)を4週間してもらいました。予定の81〜97%が実際に行われ、1,317回のうち困ったことが起きたのは2回でした。ただ、立ち座りの検査の伸びは、ふだんどおり過ごした組と同じくらいでした。著者たちは、効果があるかはもっと長く、人数の多い試験で確かめる必要があるとしています。
家で足踏みやスクワットをするなら、強さを試験に近づけます。試験の運動は中くらいからかなりきつい強さだったので、ゆっくりした足踏みでは届かないかもしれません。少し息がはずみ、話すと途切れるくらいが目安です。
私は、外に出て階段まで行くのはハードルが高いので、家の中で、その場で足踏みかスクワットを1〜2分、1日2回するところから始めます。
- 午前と午後に1回ずつ、その場で足踏みかスクワットを1〜2分する
- 1回しかできなかった日は、夕方にもう1回足して2回にする
- 外に出る日や、職場に階段がある日は、階段を1〜2分上る
夜に足すときは、寝る直前のきつい運動は避けます。夜の運動のあとは寝つきが遅れることがあり、その話は「夜の運動のあとは睡眠の数値が下がる?約1万5千人のデータと水泳選手の実験」で詳しく書いています。
寝不足の日や、安静時の心拍がいつもより高い日は、息がはずまない速さにとどめます。心臓の病気がある人や、運動を止められている人は、始める前に医療機関に相談してください。
研究で心肺の体力が上がったのは、4〜12週間続けた場合です。1回で体が変わるものではないので、まずは4週間、週3日以上を目安にします。勉強の合間に入れる場合は、運動のタイミングと覚えやすさの関係を「勉強のあとに運動すると覚えやすい?42件の実験からわかったタイミングと強さ」で詳しく書いています。
参考リンク
- Rodríguez MÁ, Quintana-Cepedal M, Cheval B, Thøgersen-Ntoumani C, Crespo I, Olmedillas H. Effect of exercise snacks on fitness and cardiometabolic health in physically inactive individuals: systematic review and meta-analysis. British Journal of Sports Medicine, 2025(PubMed、BMJ のプレスリリース)
- Jenkins EM, et al. Do stair climbing exercise “snacks” improve cardiorespiratory fitness? Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism, 2019
- Fyfe JJ, Dalla Via J, Jansons P, Scott D, Daly RM. Feasibility and acceptability of a remotely delivered, home-based, pragmatic resistance ‘exercise snacking’ intervention in community-dwelling older adults: a pilot randomised controlled trial. BMC Geriatrics, 2022
- Wan et al. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2025(エクササイズ・スナックのメタ分析)
- Bull FC, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. British Journal of Sports Medicine, 2020
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」成人版
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