Gemini 4 Carbon、AA指数首位 まずサイバー防御向け

red padlock on black metal railing AI

Google DeepMindが10月28日、Gemini 4 Carbonを発表しました。2週間前に出たGemini 4 Argonの上位にあたり、脆弱性の発見・修正と、数日がかりの長い作業を得意とするモデルです。第三者機関の総合評価では59点で首位に立ちました。一方で、利用はまず一部のサイバー防御担当者に限られます。開発者向けの提供日は示されていません。この記事では発表と外部評価を突き合わせ、いま開発者が何を準備できるかを整理します。

背景と文脈

Gemini 4世代は、Argonが先に出てCarbonが続く2段構えになっています。ArgonはGemini APIで10月13日から使えるようになりました。gemini-4-argonとして安定版の扱いです。Carbonはその上に、セキュリティと長時間のエージェント作業(AIが自分で手順を決め、ツールを呼びながら作業を進める使い方)を上乗せした位置づけです。

今回の発表で目を引くのは、性能より配り方です。Googleは「Fairwind Program」という枠組みで、まず信頼できる防御側の組織に限って渡すとしています。脆弱性を見つける力が高いモデルは、攻撃にも使えるためです。米政府の自主的な公開前テストにも参加すると明記しました。

この「強いモデルは段階的に出す」流れは、各社に広がっています。ここ数週間は、学習中のモデルが外部と通信しようとした事例や、評価中に範囲外の行動をとった事例の報告が続きました。性能の競争と同時に、出し方の慎重さも比べられる時期に入っています。

ただし開発者の受け止めは冷ややかです。Hacker Newsの発表スレッドには約800件のコメントが付きました。多くは「Argonすら自分の画面に出てこない」「API キーと課金の設定が分かりにくい」といったアクセスの不満でした。「防御側から先に」という説明は計算資源の配分の都合ではないか、と疑う声もあります。

技術/ビジネス面

Googleの発表とArtificial Analysisの評価記事を並べると、強みと弱みがはっきりします。Artificial Analysisは複数のベンチマーク(AIの能力を測る共通テスト)をまとめて指数にする第三者の評価サイトです。

セキュリティ面では、Googleが次の数値を出しています。SEC-bench Pro(実際のコードから脆弱性を見つけるテスト)で88.2%、ExploitGym(見つけた穴を実際に突けるかを測るテスト)で54.8%です。CWE-bench(脆弱性を修正するパッチを作るテスト)では71.0%でした。社内の安全なコードの評価でも、Argonの2倍超の成功率だったとしています。

一方、Artificial Analysisの数字では、コーディングは首位ではありません。コーディングエージェント指数は59点です。Claude Code+Claude Opus 5.5の62点に3点及びませんでした。知識労働を測るAA-Briefcaseでも、Kimi K3.1 ProやGrok 4.7の後ろにいます。総合首位は、知識問題や科学系ターミナル作業など9項目中4項目での1位が押し上げた結果です。

注意したいのは、幻覚(事実でない内容をもっともらしく答えること)の割合です。AA-Omniscience(知らないことを知らないと言えるかも含めて測る知識テスト)では、正答率がArgonの48%から58%に上がりました。その一方で幻覚率は4%から11%に増えています。他社の最上位モデルの50%前後よりはずっと低い水準です。それでも、Argonから乗り換えるときは確認が要る変化でしょう。

費用面では、指数の1問あたりの費用が7.76ドルでした。Claude Opus 5.5(max)の10.04ドルより約23%安く、GPT-6 Astra(max)の6.25ドルより約1.2倍高い位置です。1問あたりの出力トークン(AIが読み書きする文字の単位)は12.3万で、Opus 5.5より29%少なく済んでいます。

開発者として試すなら

Carbonはまだ一般の開発者は呼べません。いまできるのは、同じ世代のArgonで組み込みを進めておき、Carbonが来たらモデル名を差し替える準備です。Gemini APIの料金表と公式ドキュメントをもとに、要点をまとめます。

1. 料金は12月1日に2倍になります。Argonの今の価格は導入価格で、11月30日までです。Carbonも同じ導入価格で出ると発表されています。

100万トークンあたり Argon(〜11/30) Argon(12/1〜) Carbon(導入価格→通常) Gemini 3.8 Flash(〜12/31)
入力 2.00ドル 4.00ドル 2.00ドル → 4.00ドル 0.75ドル
出力(思考を含む) 10.00ドル 20.00ドル 10.00ドル → 20.00ドル 3.75ドル
キャッシュ済み入力 0.10ドル 0.20ドル 入力の95%引き 0.075ドル
Batch(入力/出力) 1.00/5.00ドル 2.00/10.00ドル 未発表 0.375/1.875ドル
無料枠 なし 未発表 あり

たとえば入力10万・出力1万トークンの処理なら、今は1回0.30ドルです。12月からは0.60ドルになります。コスト試算を11月の請求額で固めると、翌月に倍になる点に気をつけてください。急がない処理はBatch(まとめて投げて後で結果を受け取る方式)に回すと半額で済みます。

2. 推論の深さは thinking_level で選びます。公式ドキュメントによると、Argonは low・medium・high の3段階で、既定は medium です。Artificial Analysisの数字は high での結果なので、同じ性能を期待するなら high を指定する必要があります。

from google import genai

client = genai.Client()
res = client.interactions.create(
    model="gemini-4-argon",  # 公開後に Carbon のモデル名へ差し替え
    input="この差分にセキュリティ上の問題がないか確認して",
    generation_config={"thinking_level": "high"},
)
print(res.output_text)
print(res.usage.total_thought_tokens)

3. つまずきやすい点が3つあります。

  • 思考トークンも出力として課金されます。返ってくるのは思考の要約だけですが、請求は思考の全量が対象です。total_thought_tokens を記録しておくと、費用が膨らむ原因を追えます。
  • max_output_tokens は思考と回答の合計です。小さく設定すると、思考だけで上限に達して回答が空になります。その場合も課金はされます。
  • 状態を自分で持つ場合は、思考ブロックを手を加えずに送り返します。会話履歴を自前で管理する作りでは、受け取った thought ブロックと署名を削らずに次のリクエストへ含める必要があります。モデルを切り替えるときも同じです。

なお、Artificial Analysisによると、Carbonのコンテキストウィンドウ(1回に読み込める量)は100万トークンです。入力はテキスト・画像・動画・音声に対応し、出力はテキストのみです。Argonと同じ枠なので、入出力の作りはそのまま使い回せる見込みです。

これからどうなるか

注目点は、Carbonが一般の開発者にいつ、どの価格で届くかです。Googleは「できるだけ早く」としか述べていません。Fairwind Programの対象がどこまで広がるかが、最初の目安になりそうです。導入価格が終わる時期も、Argonと同様に区切られると見られます。

開発者にとって実用的な意味は、セキュリティ点検の自動化にあります。CIでプルリクエストの差分を読ませて脆弱性を指摘させる使い方は、パッチ作成71%という数字が本当なら一段実用に近づきます。ただ、幻覚率が上がった点を踏まえると、指摘をそのまま信じず、テストや静的解析と組み合わせる前提で組むのが安全です。

コーディングエージェントとしては、Claude Opus 5.5との差は3点です。同じ問題の費用は約23%安く済みます。品質と費用のどちらを優先するかで選び分ける場面が増えるでしょう。複数のモデルを切り替えられる作りにしておくと、こうした入れ替わりに追随しやすくなります。

まとめ

Gemini 4 Carbonは、第三者評価で総合首位をとった一方、コーディングの首位はClaude Opus 5.5に譲り、幻覚率も上がりました。一般公開は未定です。開発者はいまArgonで thinking_level や思考トークンの扱いを確かめつつ、12月の値上げを費用試算に入れておくのが現実的です。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Christian Englmeier on Unsplash

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