欧州発のAIスタートアップLovableが、新たにシリーズCで4億ドルを調達し、評価額が133億ドルに達したと発表しました。リード投資家はMenlo VenturesとScaleup Europe Fundで、ほかにも十数社が参加しています。Lovableは自然言語で指示するだけでアプリやWebサービスを作れる「バイブコーディング」(vibe coding:コードを自分で書く代わりに、作りたいものを言葉で説明してAIに実装を任せる開発スタイルを指す俗称)分野の代表格です。今回の調達額と評価額の大きさは、開発者向けAIツール市場への資金の集中ぶりを改めて示す事例といえます。
背景と文脈
Lovableの前回調達は2025年12月のシリーズBで、当時は3億3000万ドルを調達し評価額は66億ドルでした。今回はそこからおよそ8カ月で評価額が倍増した計算になります。前回のシリーズBではMenlo VenturesとCapitalGが共同でリードしており、今回もMenlo Venturesが継続して主要投資家に名を連ねる形です。短期間でここまで評価額が跳ね上がる例は、生成AI関連のスタートアップの中でも際立っており、投資家がこの分野に強気であることをうかがわせます。
バイブコーディングという言葉自体は2025年ごろから開発者コミュニティで広まり始めました。従来のプログラミングでは、仕様を考え、コードを書き、動作を確認するという工程を人間が一つずつこなす必要があります。バイブコーディング系のツールは、この工程の多くをAIに委ね、人間は「何を作りたいか」を言葉で伝える役割に回ります。プロトタイプ作成やちょっとした業務ツール開発の心理的ハードルを大きく下げる方向性として、投資家からの関心が集まっている分野です。Lovableはこの領域で最も評価額の高いプレイヤーの一社になり、調達した資金の一部を使って欧州の他スタートアップへの出資にも動き始めています。
技術/ビジネス面

Lovableが提供するのは、ユーザーが自然言語でやり取りしながらソフトウェアを組み立てていけるAIプラットフォームです。特徴的なのは、独自に学習させたAIモデルを持ちながら、必要に応じてOpenAIやAnthropic、Googleといった企業のフロンティアモデル(各社が公開する最先端の大規模言語モデルを指す呼び方)も使い分けている点です。自社モデル一本に絞らず外部の最先端モデルも併用する構成により、タスクの性質に応じて速度やコスト、精度のバランスを調整しやすくしていると見られます。単純な画面修正のような軽い処理は自社モデルで素早くさばき、複雑な要件は外部のフロンティアモデルに任せるといった使い分けも可能になるでしょう。個人サイトや社内向けの簡易ツール、スタートアップの最小限プロダクト(MVP:Minimum Viable Product、検証に必要な最小限の機能だけを備えた試作品)まで、開発体制を持たないチームでも扱えるレベルに用途が広がっているとみられます。
成長を示す数字も公表されています。2026年6月時点の年換算収益(ARR:Annual Recurring Revenue、月次や四半期の収益実績を1年分に換算した指標)はおよそ5億ドルに達しました。ホスティングされているプロジェクト数は6000万件、月間訪問者数は9億人、新規プロジェクトの作成数は週あたり約100万件にのぼるとしています。これらの数字は、個人開発者だけでなく企業チームでも実利用が広がっていることをうかがわせます。単発の話題性だけでは説明しづらい規模で、日常的な開発ツールとして定着しつつある様子が見えます。
あわせて、Googleのクラウドサービスと複数年契約を結んだことも明らかになりました。契約に伴いクラウドの利用量は従来の5倍規模に増える見込みで、急拡大するトラフィックとホスティング需要を支えるインフラ投資の一端がうかがえます。利用者数の伸びとインフラ増強がほぼ同時に進んでいる点は、単なる話題先行ではなく実利用が積み上がっていることの裏付けといえるでしょう。
これからどうなるか
Lovableの規模拡大は、コーディングをどこまでAIに委ねるかという選択肢が、個人開発者やチームにとって急速に広がっていることを示しています。プロトタイプ段階のアプリを素早く形にしたい場面では、こうしたプラットフォームを試す価値が増しているといえるでしょう。手元で似たようなツールを自作する場合の比較対象としても、参考になる規模感です。
一方で、自社モデルと複数のフロンティアモデルを使い分ける設計は、今後こうしたツールを評価する開発者にとって注目すべきポイントです。特定ベンダーのモデルに依存しない構成は、性能や価格が変動した際の切り替えやすさにつながる可能性があります。既存のプロダクトにAI開発支援を組み込むかどうかを検討しているチームは、自前でAPIを組み合わせて構築するか、Lovableのようなプラットフォームに乗るかを比較する材料が増えたことになります。評価額の急伸は競合にとっても刺激材料になるはずで、類似サービスの資金調達や機能競争が今後さらに活発になりそうです。
まとめ
Lovableは4億ドルのシリーズC調達により評価額133億ドルに達し、前回調達からおよそ8カ月で評価額が倍増しました。年換算収益は5億ドル規模、月間訪問者数は9億人に達しており、バイブコーディング分野への資金と利用の集中が鮮明になっています。
参考リンク
アイキャッチ画像: Photo by Katie Harp on Unsplash

