Anthropicが著作権侵害訴訟の和解として支払う15億ドルを巡り、著者と出版社が同じ作品への配分を主張し対立していることが分かりました。対象になっている出版契約の多くは、AIによる学習利用が想定されていなかった2021年以前に結ばれたもので、著作権が誰にどこまで帰属するのかが曖昧なままになっています。過去の契約の書き方一つで、支払いの行方が左右される事態になっています。

背景と文脈
この和解は、著者らがAnthropicを相手取り、無断で入手した書籍を学習データに使ったとして起こした集団訴訟「Bartz対Anthropic」の決着として成立したものです。裁判所は、著作権のある書籍でAIモデルを学習させること自体はフェアユース(公正利用:著作権者の許諾がなくても一定の条件下で認められる利用)にあたると判断した一方、海賊版として不正に入手した書籍を保存していた点は違法と認定しました。この結果、Anthropicは約50万点の作品を対象に、1作品あたり3,000ドルを支払う和解に応じ、今年7月に最終承認を得ています。
問題になっているのは、この支払いの分配方法です。和解条件では、対象の書籍が現在も出版社から販売されている場合、支払い額を著者と出版社で50対50に分けることになっています。ところが、著者に直接権利があるのか、出版社が権利を持つのかを定めた契約の解釈を巡って、著者側と出版社・エージェント側の主張が食い違うケースが相次いで表面化しています。対象になる作品はおよそ50万点と件数が膨大なため、個別に契約を精査して権利者を確定する作業自体が大きな負担になっている点も、混乱に拍車をかけています。
技術/ビジネス面

TechCrunchの報道によると、和解金の支払い対象となった著者の一部は今週、自分の作品について別の当事者からも権利を主張する申請が出ていると通知するメールを受け取りました。原因は、多くの出版契約がAIによる学習利用というケースをそもそも想定せずに書かれていた点にあります。電子書籍や翻訳権など、契約書に明記された利用形態の枠外にAI学習が位置づけられるため、権利の帰属先を機械的に決められないのです。
Princeton University Pressのような出版社は、契約上の立場から分配を受ける権利があるとの見解を示しています。一方で著者側の団体であるAuthors Guildは、出版社やエージェントが必要以上に大きな取り分を求めていると批判しており、両者の溝は簡単には埋まりそうにありません。裁判所が承認した和解の枠組み自体は確定していても、実際の分配作業は個別の契約解釈という別の難題を抱えたまま進んでいる状況です。同じ作品に複数の請求が出ている以上、支払いが実際に行われるまでにはまだ時間がかかると見られています。
これからどうなるか
この対立の行方は、Anthropicに限らずAI企業と出版業界全体の関係に影響しそうです。OpenAIを含む他のAI企業も同種の著作権訴訟を抱えており、今回の分配を巡る混乱が長引けば、今後の和解交渉でも契約の帰属条項をより明確に定める動きが広がる可能性があります。米国では9月にAI関連の著作権訴訟で初の陪審審理も予定されており、司法判断の蓄積が今後の和解相場にも影響を与えそうです。今回のように既存契約の解釈だけで紛争が長引く事例が増えれば、出版社側が今後の契約にAI学習利用の扱いを明記する動きも加速するとみられます。
AIサービスを開発する側にとっても、学習データの権利関係を軽視できない流れが強まっています。自社サービスで著作物を扱う場合、利用許諾の範囲がどこまでAI学習を含むのかをあらかじめ契約書で明確にしておくことが、将来のトラブルを避けるうえで重要になってきています。社内のRAGシステムなどで外部コンテンツを取り込む際も、学習利用の許諾範囲を事前に確認しておく習慣が今後さらに求められるでしょう。
まとめ
Anthropicの15億ドル和解金を巡り、著者と出版社が同じ作品への配分を主張し対立しています。AI学習を想定していなかった過去の契約の曖昧さが、支払いの実務を混乱させている構図です。
