Perplexityは2026年8月25日、Nvidiaと共同でAIエージェント「Portable Computer」を発表しました。AIエージェントとは、人間に代わって複数の作業を自律的にこなすAIプログラムを指します。Nvidiaの小型AI専用機「DGX Spark」やRTX搭載のLinux機上で動作し、モデルから実行環境まで端末内だけで完結させます。クラウドAPIのトークン課金なしに使えるのが特徴です。まずはLinux版がPro・Max契約者向けに提供され、Windows対応は9月に控えています。
背景と文脈
ここ数年、AIエージェントはクラウド上の大規模モデルを何度も呼び出しながら動くのが前提でした。調べ物や資料作成のように何十ステップも試行錯誤するタスクほど、API呼び出しの回数が増え、利用料もかさみやすくなります。長時間動かし続ける使い方が広がるほど、この従量課金の重さが目立つようになってきました。
一方でNvidiaは、手元のパソコンでAIを動かす「ローカル推論」の環境整備を進めてきました。自社ブログでもRTX and DGX Spark Supercharge Local AIと題し、GPU上でエージェントを動かす取り組みを後押ししています。これまでのローカルAIは簡単なチャット用途が中心でしたが、ツール連携やファイル操作を伴う本格的なエージェントを動かすには計算能力が足りませんでした。Portable Computerは、この計算能力の壁が越えられる段階に来たことを示す事例といえます。
技術/ビジネス面

Portable Computerは、モデルの推論(学習済みのAIが実際に回答を生成する処理)を担います。加えて、エージェントの制御やツール連携、セキュリティ機能までを1本のアプリにまとめています。ネット接続なしで動かせるのが特徴です。動作条件はDGX Spark、もしくはVRAM(GPUに搭載されたメモリで、AIモデルを読み込んで計算する容量)を24GB以上積んだLinux機。目安としてはGeForce RTX 3090以降のグラフィックボードが該当します。
搭載モデルは、オープンソースの「Qwen 3.8 27B」と、Perplexityが追加学習した「PPLX 27B」の2種類です。いずれも270億パラメータ(モデルの規模を示す数値で、大きいほど表現力が増す一方、必要な計算資源も増えます)クラスです。Nvidiaの「Nemotron 3.5 Lightning」も追って追加される予定です。独自ベンチマーク「Local Knowledge Work Bench」を使った検証も行われました。これは文書要約や表計算処理など53種の実務タスクで正答率を測る社内テストです。結果はPPLX 27Bが85.4%、Qwenベースが82.6%の正答率でした。
手元のモデルで対応しきれないと判断された場合は、Claude Opus 5などクラウド上のより高性能なモデルに処理を引き継ぐ仕組みも備えます。その際は、送信予定の内容から個人を特定できる情報(PII)を検出するフィルターが働き、ユーザーは何が送られるかを事前に確認できます。ウェブ検索を伴うタスクでは正答率66.7%を記録し、他社のオープンソース実行環境より51%少ない処理時間で達成したといいます。精度と速度の両面で、実用レベルに近づいてきたことがうかがえます。
これからどうなるか
開発者にとって影響が大きいのは、コスト構造そのものが変わる点です。クラウドAPIは呼び出し回数やトークン数に応じて課金されるため、何十ステップも試行錯誤を繰り返すエージェントを動かし続けると費用がかさみがちです。推論が端末内で完結すれば、この従量課金は発生しません。夜間にコードレビューや大量ドキュメントの一次チェックを回し続けるといった使い方も、API費用を気にせず試せるようになります。
一方でDGX Spark本体は4千ドル前後からと安くはなく、RTX 3090クラス以上のGPUを持たない開発者にはハードルがあります。搭載モデルも270億パラメータ級で、複雑な推論では依然フロンティアモデルに劣ります。難しいタスクはクラウドへの引き継ぎが前提になる点も踏まえておく必要があります。それでも、手元のGPUで試作を繰り返し、必要な場面だけクラウドを使うという設計は、自分のエージェント基盤のコストを見直す際の参考になりそうです。データが端末外に出ないため、顧客情報や社内文書を扱う検証をローカルで完結できる点も、業務でAIエージェントを組み込みたい開発者には見逃せないポイントです。
まとめ
Portable Computerは、AIエージェントを端末内で完結させ、トークン課金なしで動かす試みです。DGX SparkやRTX搭載機という条件はありますが、ローカル推論とクラウドを使い分ける発想は、コストを抑えたい開発者の参考になります。Windows対応は2026年9月に予定されています。
参考リンク
- Perplexity partners with Nvidia to launch Portable Computer, a fully local AI agent with zero token costs
- NVIDIA DGX Spark
- RTX and DGX Spark Supercharge Local AI
アイキャッチ画像: Photo by Google DeepMind on Unsplash

