生成AI利用で宿題18%上昇、試験は最大24%低下 2.7万人調査

a couple of kids that are looking at a computer screen AI

スウェーデン・ストックホルム大学と香港大学の研究チームは、中国の12〜18歳の生徒27,000人を対象に30ヶ月間の調査を実施しました。その結果、生成AI(文章などを自動で作り出すAI)の利用は宿題と試験の点数に正反対の影響を与えることが分かりました。生成AIを使った生徒の宿題の点数は平均18%上昇した一方、同じ生徒の試験の点数は最大24%低下しています。ペナルティは特にAIを「答えを出す近道」として使っていた生徒に集中しており、教育向けAIツールの設計にも示唆に富む結果です。

背景と文脈

生成AIチャットボットは2022年末のChatGPT公開以降、世界中の教育現場に急速に浸透しました。中国でもDoubaoやDeepSeek、ChatGLMなどの生成AIツールの利用が一般化しました。今回の調査対象となった生徒の約8割は、宿題に生成AIを使ったと回答しています。宿題を早く終わらせられる、分からない問題をすぐに解説してくれるといった利点から、生徒だけでなく保護者や教員の間でも利用が広がってきました。

これまでの研究の多くは、生成AI利用と学習成果の関係を短期間・小規模なアンケート調査で捉えたものが中心でした。生成AIが本当に生徒の理解を助けているのか、それとも単に作業を代行しているだけなのかを、長期間・大規模なデータで検証した研究はほとんどありませんでした。

今回の研究は、ストックホルム大学のデイビッド・ストロンバーグ氏と香港大学のビクター・レイ氏、ウー・ヤンホイ氏らによるものです。この研究の詳細は、The Economistが特集しています。2022年9月から2025年6月までの30ヶ月間、中国中部のある県で生徒27,000人近くを追跡した点で異例の規模です。宿題の点数や所要時間だけでなく、毎月の非公開試験、高校・大学受験の結果まで9科目にわたって記録しています。AI利用の効果を宿題から入試まで一貫して検証できる、貴重なデータセットです。教育系サービスを開発する立場からも、AIが実際の学力にどう影響するかを裏付ける数少ない大規模研究として注目に値します。

技術/ビジネス面

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Photo by Van Tay Media on Unsplash

研究チームは、生成AI利用の有無で生徒の学習成果を比較しました。その結果、AIを使った生徒の宿題の点数は平均18%上昇し、1件あたりの所要時間は64分から45分へ短縮されました。この結果はCEPRのディスカッションペーパーとして公開されています。一見するとAIが学習を効率化しているように見えます。

ところが同じ生徒の毎月の試験の点数は、半年以内に平均20%低下しました。さらに高校・大学入試のような一発勝負の試験では、点数の低下幅が18〜24%に達しています。このペナルティは2年間で拡大する傾向も確認されました。かつて宿題の点数が高い生徒は、試験の成績も良い傾向にありました。AI普及後はこの関係が崩れ、宿題の点数が高い生徒ほど試験で苦戦する逆転現象すら見られています。

点数低下の分かれ目は、AIの使い方にありました。研究チームによると、AI利用者のうち約8割が「宿題の外注」と呼べる行動パターンを示していました。通常よりはるかに短い時間で宿題を終えながら高得点を取るという特徴です。South China Morning Postによると、点数低下は社会科目で最も大きく現れました。続いてSTEM(科学・技術・工学・数学の総称)科目、語学科目の順で低下が確認されています。低年齢の生徒、元々の成績上位者、男子生徒で影響が強く出ていました。

一方、AIを使いながらも非利用者と同程度の時間を宿題にかけていた生徒では、試験へのペナルティはほとんど見られませんでした。研究チームは、こうした生徒はAIを答えを写す道具としてではなく、疑問点を説明してもらう家庭教師のように使っていたとみています。

これからどうなるか

今回の結果は、生成AIを教育に組み込む設計思想を見直す材料になります。宿題を早く終わらせる機能だけを強化すると、点数は上がっても長期的な学力低下を招きかねません。開発者が教育系プロダクトを作る際は、AIを「答えを出す道具」ではなく「理解を助ける道具」として設計する視点が重要になります。正解をすぐに提示せずヒントを段階的に出す設計や、生徒に自分の言葉で説明させてから正誤を判定する設計は、利便性と学習効果を両立させる方向性として考えられます。チャット履歴から利用パターンを分析し、外注型の使い方を検知する仕組みを組み込む発想も有効でしょう。

学校側にとっても、宿題の点数だけを評価指標にする従来のやり方の限界が浮き彫りになりました。今後は宿題の所要時間や取り組み方も含めて評価する仕組みが広がる可能性があります。この研究はまだ査読前の論文段階です。それでも大規模かつ長期のデータに基づく結果であり、教育政策やEdTech(教育分野のテクノロジー)業界の議論に影響を与えそうです。

まとめ

中国の生徒27,000人を対象にした30ヶ月の調査で、生成AI利用は宿題の点数を18%押し上げる一方、試験の点数は最大24%下げることが分かりました。ペナルティはAIを答えの近道として使い、短時間で宿題を済ませていた生徒に集中し、理解のために時間をかけて使った生徒には影響がほとんど見られませんでした。AIの設計と使い方次第で結果が大きく変わることを示す結果です。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by UK Black Tech on Unsplash

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