Suno敗訴、独ミュンヘン地裁がGEMA著作権侵害を認定

音楽スタジオのヘッドホン AI

ドイツの音楽著作権管理団体GEMAが起こした訴訟で、ミュンヘン地方裁判所は2026年7月31日、AI作曲サービス「Suno」による著作権侵害を認める判決を下しました。Sunoが米国での学習と欧州での保存・再現の両面で、米独両国の著作権法に違反したと結論づけています。生成AI企業が学習に使う楽曲カタログについて、正規のライセンスを取得する義務を負うと明言した欧州初の司法判断です。

背景と文脈

GEMAは2025年初め、ボニーMの「Rasputin」、アルファヴィルの「Forever Young」、ルー・ベガの「Mambo No. 5」、ヘレーネ・フィッシャーの「Atemlos durch die Nacht」など、著名なドイツ語圏の楽曲6曲を巡ってSunoを提訴していました。Sunoはテキストの指示だけで楽曲を生成するAIサービスで、既存曲に似た旋律や歌詞を出力できてしまう点が争点になっていました。GEMAはドイツで作曲家や作詞家、音楽出版社の権利を管理する著作権管理団体で、日本のJASRACに近い役割を担っています。楽曲が無断で学習・生成に使われれば、本来権利者に支払われるはずの使用料が発生しないまま、AI企業だけが利益を得る構図になると訴えていました。

Sunoは米国のスタートアップで、テキストプロンプトを入力するだけで歌詞・旋律・ボーカルを含む楽曲を数十秒で生成できるサービスとして急速に利用者を伸ばしてきました。米国では大手レコード会社が加盟する業界団体もSunoや競合のUdioを著作権侵害で提訴しており、生成AIと音楽著作権を巡る訴訟は大西洋の両岸で並行して進んでいます。

今回の判決は、GEMAにとって生成AI企業を相手取った訴訟で2件目の勝訴となります。ミュンヘン地方裁判所は2025年11月にも、OpenAIを相手取った同様の訴訟でGEMA側の主張を認める判断を示しており、同裁判所は生成AIと著作権の関係を巡る欧州の判例形成をリードする存在になりつつあります。

技術/ビジネス面

法廷を象徴する木槌
Photo by Wim van 't Einde on Unsplash

裁判所はSunoに対し、侵害に関連する収益の開示と損害賠償の支払いを命じました。賠償額は今後別途算定される見込みです。Sunoは判決に不服とする姿勢を示しており、控訴を含む対応を検討中と伝えられています。今回の判決が確定すれば、生成AI企業は欧州で事業を続ける限り、学習データに使う楽曲について権利者との個別ライセンス契約が事実上の前提になります。

この判決は音楽業界だけの話にとどまりません。文章や画像を生成するAIサービスも、著作権で保護された素材を学習データに使う以上、同種の法的リスクを抱えています。欧州の裁判所が学習段階と生成段階の両方を侵害の対象と捉えた点は、今後の類似訴訟における判断基準として参照される可能性があります。

AI企業側は従来、学習段階での利用は著作物の表現そのものを複製するわけではないため合法だという立場を取ってきました。しかし今回の判決は、学習データとしての取り込みと、生成結果が既存楽曲に酷似する現象の両方を問題視しており、この従来の主張がドイツでは通用しないことを明確にしました。同様の論点を抱える米国の訴訟にも、判断材料として影響を与える可能性があります。

これからどうなるか

生成AIを使ったサービスを開発・提供する企業にとって、学習データの出所を明確に管理し、ライセンス契約の有無を記録しておくことの重要性が一段と高まりそうです。特に欧州市場を対象にするサービスは、今回の判決を踏まえたコンプライアンス体制の見直しを迫られる可能性があります。個人開発者が音楽生成AIをプロダクトに組み込む場合も、利用規約や学習データの権利関係を事前に確認しておくことが、将来のリスク回避につながります。生成AIを使った音楽制作機能をアプリに組み込む開発者は、出力された楽曲の権利帰属や商用利用の可否についても、サービス提供元の規約を改めて確認しておくとよいでしょう。

まとめ

ミュンヘン地裁はSunoの著作権侵害を認め、生成AI企業に楽曲ライセンスの取得を求める欧州初の判断を示しました。賠償額は未確定ですが、音楽に限らずAI業界全体の学習データ管理に影響を与える判決といえます。Sunoが控訴すれば、上級審の判断がさらに注目されることになります。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Yogendra Singh on Unsplash

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