OpenAIのコーディングエージェントCodexが2026年6月18日にmacOS版(バージョン26.616)で「Record & Replay」機能を追加しました。ユーザーが1回だけワークフローを実演するとCodexがその操作を観察・学習し、再利用可能なスキルとして保存します。以降は追加の録画なしで同じ作業を繰り返せます。「見せる」だけで自動化できるというアプローチは、スクリプトを書けないビジネスユーザーでも複雑な業務自動化を実現できる点で、AIエージェントの使いやすさを大きく前進させる機能です。
背景と文脈
OpenAIのCodexはもともとコード生成に特化したAIモデルでしたが、現在はmacOSネイティブアプリとして進化し、Computer Use(コンピューター操作:AIがスクリーンショットを取得しながらGUIを直接操作する能力)と組み合わせてPCの実際の操作を行うエージェントへと変貌しています。ChatGPT BusinessやEnterpriseのサブスクライバーに提供されており、開発者だけでなくオフィスワーカーも対象としていることが特徴です。
Record & Replayが解決しようとした課題は「初期設定の障壁」です。従来の業務自動化ツール(RPA:Robotic Process Automationなど)は、フローの定義やスクリプトの記述が必要で、IT部門の関与が不可欠でした。一方でGPT-4oのコンピューター操作機能などは高い汎用性を持つものの、毎回自然言語で指示を与える必要があります。その中間として「実演1回=スキル化」というアプローチが、技術者と非技術者の双方に使いやすいバランスを狙っています。
なお、この機能はEEA(欧州経済領域)・英国・スイスでは利用できません。EU AI Actや英国・スイスのAI規制への対応が理由とみられており、Computer Useそのものに対する法的な整備を待っている状況です。
技術/ビジネス面

動作の仕組みはシンプルです。録画モードを起動して実際の業務を行うと、Codexはウィンドウの内容と操作の流れを観察します。録画終了後、Codexが自然言語で記述されたSKILL.md(スキル定義ファイル:Codexの推論モデルが実行時に参照するワークフロー記述)を自動生成します。このファイルはCodex・Computer Use・ブラウザ操作・プラグインなどのツールを組み合わせて再生されます。
想定されるユースケースとしてOpenAIが挙げているのは、経費申請のフォーム入力、駐車スペースの予約、設定済みのGitHubイシューの作成、動画のアップロードと公開、週次レポートのダウンロードなどです。いずれも「毎週繰り返す定型作業」がターゲットで、1回あたり数分かかる作業を一度録画すれば以降は自動化されます。
制限事項として、録画中は秘密情報(パスワード・APIキーなど)が画面に表示されないよう注意が必要です。Codexが観察するのは画面上に表示されたすべての情報のため、機密データを含む操作の録画は避けることが推奨されています。また、Computer Useが有効かつmacOSの「アクセシビリティ」権限が付与されていることが動作の前提条件です。
これからどうなるか
Record & Replayが最も実用的なのは「繰り返し作業の多い業務担当者」です。毎週同じSaaSツールで同じデータを処理している業務担当者が、ITチームを介さずに自分でスキルを作成できるようになるため、現場レベルの業務自動化が加速する可能性があります。開発者にとっては、CodexのSKILL.md形式が将来的にAPIとして公開されれば、企業内のナレッジベースとしてスキルを管理・共有するシステムを構築するユースケースも出てくるでしょう。
一方、セキュリティ面での懸念も無視できません。Computer Useは画面上のすべての情報にアクセスするため、誤って秘密情報を学習したスキルが共有された場合のリスクがあります。企業での導入には、どのユーザーがどのスキルを作成・実行できるかを管理するロールベースのアクセス制御が欠かせません。現時点ではこの管理機能がどこまで整備されているかは不明で、エンタープライズ展開の際には確認が必要です。
Codex Record & Replayが「AIエージェントを使うためにプロンプトを書く能力」という要件をなくした点は重要です。自然言語でも指示できない作業を「見せる」ことで伝えられるようになったことで、AIエージェントの対象ユーザー層が一気に広がります。今後Webアプリ・モバイルアプリ版への展開が来れば、業務自動化市場は大きく変わる可能性があります。
まとめ
OpenAI Codex Record & Replayは、「1回の実演でワークフローをスキル化する」というシンプルな発想で業務自動化の障壁を下げた機能です。スクリプト不要でビジネスユーザーが自動化を作れる点は、AIエージェントの民主化として意義があります。秘密情報の取り扱いと権限管理を確認した上で、定型業務に積極的に試してみる価値があります。
参考リンク
- OpenAI Codex Automation Gains Record and Replay: Show It Once, Skip the Script(TechTimes)
- OpenAI Adds Record & Replay to Codex for macOS Business Users(AI Weekly)
アイキャッチ画像: Photo by Margaret Stokman on Unsplash

