DeepSeek-V4向け新手法、推論速度最大18.5%向上

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中国DeepSeekの大規模言語モデル「DeepSeek-V4」向けに、応答生成を高速化する新しい推論手法をarXivで発表した論文が公開されました。同モデルはメモリ使用量を抑えた設計で知られていますが、その設計が既存の高速化手法と相性が悪いという課題を抱えていました。複数の候補を同時に検証する「ツリー型投機的デコーディング」という手法を、DeepSeek-V4特有のメモリ節約機構に対応させたもので、スループット(単位時間あたりに処理できるトークン量)が最大18.5%向上したと報告されています。自前でモデルを運用する開発者にとって、追加学習なしでコストを下げられる可能性がある手法です。

背景と文脈

LLM(Large Language Model、大規模言語モデル)は、文章を1トークンずつ順番に生成するため、長い応答ほど時間がかかります。この待ち時間を短縮する技術として広まっているのが「投機的デコーディング(小型の下書きモデルに数トークン先まで予測させ、本体のモデルがまとめて検証することで生成を高速化する手法)」です。下書きの予測が当たっていれば、本体モデルは1回の計算で複数トークン分をまとめて確定でき、外れていた分だけやり直せばよいため、逐次生成より効率化できます。

この投機の当たり外れをさらに改善するのが「ツリー型」の手法です。下書きモデルが1本の予測ルートだけを提示する従来方式(線形投機)に対し、ツリー型は複数の予測ルートを枝分かれさせて同時に用意し、本体モデルがまとめて検証します。的中する候補の幅が広がる分、平均して多くのトークンを一度に確定させやすくなる仕組みです。もっとも、複数の候補を同時に検証する分だけ管理する情報が複雑になるため、モデルの内部構造によっては単純に組み込めない場合があります。DeepSeek-V4はまさにその代表例でした。

技術/ビジネス面

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Photo by Akshar Dave🌻 on Unsplash

ただし、DeepSeek-V4はメモリ使用量を抑えるための圧縮された注意機構(入力のどの部分に注目するかを計算するTransformerの中核部品)を採用しており、この構造ゆえに既存のツリー型投機的デコーディングをそのまま適用できませんでした。今回の論文では、枝ごとの依存関係を踏まえて検証する仕組みや、一時的な計算状態を分離して管理する仕組み、採用が確定した経路の状態だけを引き継いで更新する仕組みなどを新たに組み込み、この非互換性を解消しています。著者らはこの技術的な組み合わせによって、圧縮された注意機構を持つモデルでも複数候補を安全に並行検証できるようになったとしています。

GSM8K(小学校レベルの算数推論ベンチマーク)やMBPP(基本的なプログラミング問題のベンチマーク)、ShareGPTの対話データを使った検証では、1回の検証で確定できる平均トークン数が、条件によって線形投機の2.39〜2.84トークンに対し、ツリー型では2.83〜3.41トークンまで伸びました。スループットの向上幅は設定によって異なるものの、ほぼ全ての条件で改善が見られ、最大18.5%に達しています。特に、応答パターンが予測しにくいタスクや、バッチサイズが小〜中規模の場面で効果が大きく出る傾向が示されました。

これからどうなるか

この種の高速化技術は、モデル自体を作り直さなくても、推論エンジン側の実装だけで効果を得られるのが特徴です。DeepSeek-V4のような省メモリ設計のモデルを自社サーバーで動かしている、あるいはvLLMやSGLangといった推論サーバーを利用している開発者にとっては、こうした手法が今後のアップデートに取り込まれるかどうかが、運用コストを左右するポイントになりそうです。特にチャットボットやエージェントのように、短いやり取りを大量にさばく用途では、1トークンあたりのわずかな高速化の積み重ねが、月々のサーバー費用に直結してきます。GPUの追加購入や上位モデルへの乗り換えを検討する前に、こうした推論エンジン側の最適化だけでどこまでコストを下げられるかを確認しておく価値はありそうです。

まとめ

DeepSeek-V4向けのツリー型投機的デコーディングは、モデルの中身を変えずに応答速度を底上げする実用的な工夫です。省メモリ設計のモデルを運用するチームにとって、コスト最適化の選択肢が一つ増えたといえそうです。推論エンジンのアップデート情報は今後もチェックしておきたいところです。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Mathew Schwartz on Unsplash

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