Anthropicは2026年8月、未公開の研究用Claudeが数論の未解決問題「リーマン予想」で成果を上げたと発表しました。素数の分布と関わるこの予想は、ゼータ関数(複素数を入力すると複素数を返す特殊な関数)の零点が、すべて「臨界線」と呼ばれる直線上にあるとするものです。提示から150年以上、未解決のまま。今回Claudeは予想自体を証明したのではなく、証明済みの零点の割合を41.6%から67.2%へ引き上げました。Claude Codeのセッション2回・約36時間という短期間での成果で、数学研究にAIを本格投入した最新事例。
背景と文脈
リーマン予想は、素数の分布と深く関わる数論の未解決問題です。ゼータ関数の非自明な零点が、すべて臨界線と呼ばれる直線上に並ぶという内容。提示から150年以上、世界中の数学者を悩ませてきました。証明できれば素数分布の理解が進み、暗号理論など幅広い分野への影響も見込まれます。逆に反例が一つ見つかれば、予想全体の崩壊。
零点が臨界線上にあるかどうかは、一つひとつ個別に確認できます。しかし零点は無限に存在するため、すべてを証明するのは別次元の難しさ。研究者はこれまで、臨界線上にあると証明済みの零点の割合を少しずつ引き上げる形で前進を重ねてきました。直近の記録は41.6%。この数字を動かすこと自体が長年の課題で、わずかな上積みにも高度な技巧が求められる領域。
純粋数学の未解決問題にAIを本格投入した事例は、まだ数少ないのが実情です。Anthropicは今回、未公開の研究用Claudeにこの問題へ取り組ませました。既存の2本の論文の手法を組み合わせる、これまで誰も試していなかったアプローチでの打開。結果、証明済み零点の割合は67.2%まで上昇しました。
41.6%からの引き上げ幅は25.6ポイントで、これまでの積み上げペースを考えれば異例の伸びです。予想の証明そのものではなく、残り約3分の1の零点は未解明のまま。それでも数十年単位で少しずつしか動かなかった数字を、一度の取り組みで大きく前進させました。詳細はAnthropicの公式研究ページで公開中。
技術/ビジネス面

今回の作業は、Claude Codeのセッション2回、合計約36時間での完了。出力トークン数は3100万、シェルコマンドの実行回数は2400回に上ります。サブエージェント(メインのAIエージェントから呼び出され、特定の作業を分担する子エージェント)は60個稼働。それぞれに異なる仮説を割り当て、並行して検証させました。あわせて数百本のPythonスクリプトで計算や検証を進めています。人手なら数か月から数年かかってもおかしくない探索量。
最初のセッションでは650通りのアイデアを次々に生成しては検証しましたが、すべて行き詰まりました。既存の理論を単純に当てはめるだけでは、壁を越えられなかったことになります。行き詰まった650通りも、次の一手を絞り込む材料。突破口になったのは、既存の2本の論文の手法を組み合わせるという発想。これまで誰も試していなかったアプローチで、Tech Timesもこの点を報じています。650通りの試行錯誤を経て、初めてたどり着いた道筋。
検証面では、Anthropic社内の数学者2名がClaudeの論文を確認し、専門家向けの要約ノートを作成しました。Claude自身も、形式的検証可能な証明(コンピュータプログラムが正しさを機械的に確認できる証明形式)を作成。数学の証明は人間によるピアレビューが前提のため、この二重の体制は理にかなっています。詳しい作業量の内訳はMLQ.aiが詳報。
これからどうなるか
リーマン予想はまだ証明されていません。残り約3分の1の零点をどう扱うかが今後の課題です。とはいえ今回の成果は、AIが「行き詰まりだらけの探索」を人間よりはるかに速く大量に試せる証拠。650通りのアイデアを数十時間で検証し尽くす作業量は、人手では到底追いつきません。同様の手法が、他の未解決問題に広がる可能性。
開発者にとって参考になるのは、Claude Codeが60個のサブエージェントを使い並列で探索した設計です。手元のプロダクトでも、複数のサブエージェントに調査・検証・レポート作成を分担させるパターンは、コードレビューやバグ調査など探索的なタスクに応用できます。1つの巨大なプロンプトに頼るより役割を分けた並列実行の方が、探索の網羅性を上げやすいという設計上の示唆。小さく分業させ、後から結果を統合する設計は汎用性が高く、エージェント設計を見直す際の具体的な参考例として押さえておきたい事例です。
まとめ
Anthropicは、未公開の研究用Claudeがリーマン予想の証明済み零点の割合を41.6%から67.2%へ引き上げたと発表しました。証明そのものではなく、残り約3分の1の零点は未解明のままですが、150年以上動かなかった数字を大きく前進させた成果。作業はClaude Codeのセッション2回・約36時間で完了しました。開発者にとっても、探索タスクを複数のサブエージェントに任せる設計のヒントになります。
参考リンク
アイキャッチ画像: Photo by Bozhin Karaivanov on Unsplash

