AIスタートアップのRecursiveは10月21日、初のモデルRecursive Flintを公開しました。ノートPCで動くコーディング用のモデルで、Apache 2.0ライセンスのもと無償で使えます。特徴は、開発のほぼ全工程を同社の自動研究システム「Eureka Machine」が担ったことです。小さなチームが4か月足らずでゼロから作り上げました。手元で動く速いコーディングAIが増えるなか、「AIがAIを作る」開発手法の実例としても注目を集めています。
背景と文脈
Recursiveは2025年に設立された会社で、自分で自分を改良するAIの実現を掲げています。CEOはSalesforceで主任科学者を務めたRichard Socher氏です。5月には6.5億ドルを調達して表に出て、評価額は46.5億ドルでした。出資者にはGVやNvidia、AMD Venturesが並びます。6月にはAWSと4.1億ドルの計算資源の契約も結びました。
同社は人を増やす代わりにエージェントの数を増やす方針を取っています。AIエージェントとは、指示を受けて手順を組み立て、ツールを使って作業まで進めるAIです。業界全体でも研究のAI化は進んでいます。OpenAIは8月半ば時点で、人の研究者1日分に対し、エージェントが3.1日分の作業をこなしていると明かしました。
手元で動くコーディングモデルへの需要も高まっています。クラウドのAIに比べると、オフラインで使え、コードを外に出さずに済み、利用料もかかりません。一方で小さなモデルは、ClaudeやCodexより誤りが多く遅いという評価が一般的でした。Flintはこの差を詰めることを狙っています。
技術/ビジネス面

FlintはMoE(Mixture of Experts:複数の小さな専門家ネットワークを持ち、入力ごとに必要な部分だけを動かす仕組み)を採用しています。パラメータ(モデルの中身となる数値)は総数40Bで、1トークンごとに動くのは2.5Bだけです。コンテキスト長(一度に読める文章量)は最大512kトークンで、性能面では256k以内が推奨されています。
速度は、M4 Pro搭載のMacBook Proで毎秒125トークンを超えます。TechCrunchが紹介した計測では約131トークンで、同じ機種でGemma 4やNemotron 3.5 Lightningは58〜69トークンでした。64GBのRTX Sparkでは毎秒150トークンを超えます。
性能について同社は、総パラメータ50B未満のMoEで、エージェント型コーディングの成績が最も高いと主張しています。指標はSWE-Bench Verified(GitHubの実際の課題を直せるかを測るテスト)やTerminal-Bench 2.1(端末操作の課題をこなす力を測るテスト)などです。ただし公式ページには具体的な点数がありません。6つのテストの平均で上回ったのは、AlibabaのQwen3.8 27Bだけだったといいます。
Eureka Machineは、アイデアを出して実験し、結果から次の手を選ぶ作業を繰り返しました。構造の探索では、総35B・稼働3Bの出発点から専門家の数や幅を調整しています。量子化(数値の桁数を減らしてモデルを軽くする手法)では、常識に反して出力層まで4ビットにする方法を見つけました。さらに16ビット版を手本にする蒸留(大きなモデルの出力を小さなモデルにまねさせる学習)で精度を戻しています。最終版の差は16ビット版から0.7ポイント以内です。Apple Silicon向けの専用カーネル(計算を高速化する専用プログラム)も同システムが書きました。
これからどうなるか
重みはHugging Faceで公開済みです。llama.cpp、Ollama、LM Studio、vLLM、SGLangに対応し、Mac向けの軽量実行エンジンrecも出ています。Wiredの記者は48GBメモリのMacで試し、ToDoアプリなどの小さなプログラムを作ったところ、毎回うまくいったと報告しました。
開発者にとっては、社外に出せないコードをAIに読ませたい場面で選択肢が広がります。手元のMacやCI用のマシンで動かせば、API料金を気にせずレビューや小さな修正を回せます。ただしRecursive自身も、大きな有料モデルより丁寧な指示が要ると認めています。タスクを小さく分けて渡す使い方が前提になりそうです。
同社の最終目標は、人が監督して止められる形での「再帰的な自己改良」です。次のモデルでEureka Machineがどこまで人の手を減らせるかが、注視すべき点になります。
まとめ
RecursiveのFlintは、総40B・稼働2.5BのMoEで、ノートPCでも毎秒125トークン超で動くコーディングモデルです。開発の大部分を自社のAI研究システムが担いました。Apache 2.0で手元のツールからすぐ試せるため、オフラインで使えるコーディングAIの有力候補になりそうです。
参考リンク
- Introducing Recursive Flint(Recursive)
- RecursiveSI/flint(Hugging Face)
- Recursive launches Flint, a laptop coding model it says was largely built by AI(TechCrunch)
- Wired のレビュー記事
アイキャッチ画像: Photo by Akshar Dave🌻 on Unsplash
