オープンソースのデータベース PostgreSQL の次期版「PostgreSQL 19」の公開が遅れています。当初は9月末〜10月初めの予定でしたが、新しい目標は11月19日ごろです。ベータ期間中に8〜10件の主要機能が取り下げられ、次の PostgreSQL 20 へ回されました。中心的な開発者の Peter Eisentraut 氏は、原因の一つに LLM(Large Language Model、大規模言語モデル)を使ったコードレビューを挙げています。AI がバグを見つける速さに、人の修正が追いつかなくなった形です。
背景と文脈
PostgreSQL は年1回のペースでメジャー版を出してきました。4月に新機能の受け付けを締め切り、秋に正式版を出す流れです。例年、ベータ期間中に機能を取り下げる「revert(差し戻し)」は1件ほどでした。今回は8〜10件と、異例の多さです。
取り下げの代表例は SQL/PGQ です。これはグラフ構造のデータを SQL から問い合わせる仕組みで、2023年に SQL 標準に入りました。長年の貢献者 Tom Lane 氏は9月の時点で、このまま出すと v20 まで直せないバグが残ると警告していました。
Eisentraut 氏は10月9日、ブログ記事The reverts will continue until morale improvesで経緯を説明しました。理由は一つではありません。コードの質や、計画の野心的すぎた部分も挙げています。4〜8月にセキュリティ修正へ人手を取られ、ベータ中のレビュー時間が減ったことも響きました。
そのうえで同氏が強調したのが、LLM による支援付きレビューの影響です。この点を英 The Register がPostgres 19 delayed after AI reviewers find more bugs than humans can fixとして報じ、開発者の間で話題になりました。
技術/ビジネス面

問題の核心は、見つかるバグの「量」と「時期」が変わったことです。以前なら、細かい不具合はリリース後の数年をかけて少しずつ報告されていました。いまは LLM を使ったレビューで、それがベータ期間中にまとめて見つかります。
一つひとつは小さな修正です。Eisentraut 氏も多くを「比較的無害な端のケース」と表現しています。ただ、報告の確認、再現、修正、再レビューには毎回手間がかかります。ある機能では40件近い報告が届きました。修正の総量がリリース日程を食いつぶした形です。
PostgreSQL の設計方針も効いています。同プロジェクトは「どの機能もほかのすべてと組み合わせて動く」ことを重視します。ドメイン型、複合型、パーティション、ビュー、トリガーなどとの組み合わせを、人手で網羅するのは困難です。機械的に組み合わせを試すレビューや fuzzing(ランダムな入力を大量に与えてバグを探すテスト手法)とは相性がよく、そのぶん報告も増えます。
同氏は「バイブコーディング(AIに任せて細部を確かめずにコードを書くこと)が原因ではない」とも明言しています。取り下げた機能の多くは、そうした手法が広まる前に書かれていたからです。AI が書いたコードの質が悪かったのではありません。AI がレビュー側に入って品質の基準が上がり、その基準に既存のコードが届かなかったという構図です。
一方で、PostgreSQL 19 に残る目玉機能もあります。REPACK CONCURRENTLY は、テーブルをロックせずに不要領域を回収できる機能です。従来の VACUUM FULL ではテーブル全体がロックされていました。実行計画にヒントを与える pg_plan_advice も入る予定です。
これからどうなるか
当面の影響は、待っていた機能が1年遅れることです。SQL/PGQ を使う計画があった場合は、PostgreSQL 20 を前提に組み直す必要があります。v20 はバグ修正中心と見られていましたが、すでに8割方できた機能をいくつも抱えることになりました。
長い目で見ると、開発の進め方そのものが変わりそうです。Eisentraut 氏は、LLM による fuzzing を機能開発の段階から組み込む必要があると述べています。新機能を「実験的」扱いで先に入れ、本体の中で育てる仕組みも議論されています。
開発者にとっての教訓は、AI レビューを入れる時期です。リリース直前に導入すると、報告の山が日程を圧迫します。自分のプロダクトで導入するなら、機能を書いている段階から回す方が安全でしょう。報告を優先度ごとに仕分ける運用も、あわせて決めておくと混乱を防げます。
まとめ
PostgreSQL 19 は8〜10件の機能を取り下げ、11月19日ごろの公開へずれ込みました。LLM 支援のレビューで細かなバグが一気に見つかり、修正の手間が日程を超えたためです。AI レビューは品質を上げる一方で、人の処理能力という新たなボトルネックも生んでいます。
参考リンク
- Postgres 19 delayed after AI reviewers find more bugs than humans can fix(The Register)
- The reverts will continue until morale improves(Peter Eisentraut)
- PostgreSQL 19 graph queries fail the would-you-ship-this test(The Register)
アイキャッチ画像: Photo by Domaintechnik on Unsplash

