音楽配信サービスのDeezerは2026年10月13日、AIが生成した音楽を表示させないトグル(オン・オフの切り替え)を開発中だと発表しました。提供は年内の見込みです。オンにすると、AI生成の曲・アルバム・関連アーティストが検索結果から外れます。
同社は7月、毎日アップロードされる曲の50%超がAI生成だと明らかにしていました。利用者の要望に応える機能であると同時に、配信各社がAI音楽にどう向き合うかを示す動きでもあります。
背景と文脈
Deezerは昨年、AI生成曲を見分ける検出ツールを導入しました。導入時、AI生成曲は1日の新規アップロードの10%でした。7月の発表では、この割合が50%超、件数にして1日平均9万曲に達しています。導入時の約5倍に膨らんだ計算です。
CEOのアレクシス・ランティエ氏は、AI音楽の急増がこの機能を作るきっかけの一つだったと説明しています。同社が昨年行った調査では、利用者の約45%が、AI音楽を自分のフィードから外す手段を求めていました。
配信業界全体を見ると、対応は割れています。Bandcampは、AI生成曲を全面的に禁止しました。Tidalは、AI音楽をアップロードした人への収益化を止めています。Spotifyは比較的穏やかで、AI曲やアーティストをより目立つ形でタグ付けするにとどめています。
AppleについてはVarietyが8月、年末までにAI曲へのラベル表示を検討していると報じました。禁止、収益停止、ラベル表示、そして今回の除外機能と、四つの路線が並ぶ状況です。
技術/ビジネス面

新機能の中身は、検出ツールの結果を使った表示の制御です。Deezerはすでに、アップロードされた曲がAI生成かどうかを判定する仕組みを運用しています。トグルをオンにすると、その判定で「AI生成」とされたコンテンツが、検索結果や関連アーティストの欄から消えます。
消える対象は、曲だけではありません。アルバムや、関連アーティストとして推薦される欄にも及びます。人間の作り手の作品だけを聴きたい利用者に向けた設計です。
この方式は、禁止やラベル表示とは性格が異なります。AI曲を配信から排除するのではなく、聴くかどうかの選択を利用者に渡す形です。プラットフォームは、作り手の自由とリスナーの好みを両立させやすくなります。
技術的な課題は、判定の精度です。AI生成かどうかの検出は完全ではなく、人間の作品が誤って除外される、あるいはAI曲がすり抜ける可能性は残ります。Deezerは検出結果の件数を継続的に公表してきましたが、誤判定の割合は今回の発表では示されていません。
実装面でも、検索や推薦のランキングと検出結果をどう結びつけるかが肝になります。除外をユーザー設定として持つ場合、推薦システムはフィルタ後の候補から結果を組み立てる必要があります。
これからどうなるか
今後の焦点は、他の配信サービスが同種の機能で追随するかです。利用者の約45%が除外手段を求めたという数字は、Spotifyなどにも無視できない材料になります。ラベル表示にとどまる各社が、選択式の除外へ進む可能性があります。
開発者の視点では、生成コンテンツの「検出」と「出所表示」が、プロダクトの標準機能になりつつあります。AI生成物を扱うサービスを作る場合、検出結果をフィルタや並べ替えにどう使うかが設計テーマになります。UGC(ユーザー投稿)を受け付けるアプリでは、同様の需要がいずれ出てくるでしょう。
一方で、どこからがAI生成かという線引きは難しくなります。人間がAIで一部だけ補助した曲は、どう扱うのでしょうか。提供時期が近づくにつれ、判定基準の開示を求める声が増えそうです。
クリエイターの側からも、見え方が変わります。人間の作り手にとっては、AI曲の洪水の中で埋もれにくくなる効果が期待できます。AI曲を使って作品を出す人にとっては、フィルタがオンの利用者に届かなくなる影響があります。配信各社の方針が分かれるほど、作り手は公開先を選ぶ時代になります。
聴く側にとっても、選べること自体に意味があります。AI曲が好きな人はそのまま楽しめ、苦手な人は避けられます。トグルの初期設定がオンかオフかで、実際の使われ方は大きく変わるでしょう。この初期値は、発表時点では明らかにされていません。
まとめ
Deezerは、AI生成曲を検索結果から外すトグルを年内に提供します。背景には、新規アップロードの半数超がAI生成という現状があります。配信各社の対応が割れる中、選択を利用者に委ねる路線がどこまで広がるかが注目点です。
参考リンク
アイキャッチ画像: Photo by Yogendra Singh on Unsplash
