マサチューセッツ州、データセンターに再エネ義務化

太陽光パネルによる再生可能エネルギーの風景 AI

米マサチューセッツ州のモウラ・ヒーリー州知事が、ピーク需要25メガワットを超える大規模データセンターに対し、消費電力を100%クリーンエネルギーでまかなうことを義務付ける行政命令を出しました。州の標準目標である「2030年までに40%」を大きく上回る水準です。AIブームに伴うデータセンター建設への反発が全米で強まる中、規制強化の動きが具体的な数字とともに一段と鮮明になってきました。

背景と文脈

生成AIの普及でデータセンターの電力需要が急増する中、周辺住民や地方自治体からは、電気料金の上昇や地域の送電網への負担を懸念する声が強まっていました。マサチューセッツ州が出したクリーン電力義務化の行政命令は、こうした住民の反対の声に応える形で打ち出されたものです。対象となるのはピーク需要25メガワット超の大規模データセンターで、これらの事業者はクリーンエネルギーを自前で調達するか、州のクリーン電力基準を満たせない場合は電気料金負担者向けの保護基金に拠出することが求められます。望ましいのは施設内または近隣でのクリーン電力の自家発電で、それが難しい場合は近隣に新たな発電設備を建設する費用を負担する仕組みです。あわせて、地域コミュニティが開発事業者と結ぶ非開示契約(NDA)についても、締結を避けるよう求めています。背景には、データセンター1棟あたりの消費電力が中規模の都市に匹敵する規模まで膨らんでいる現状があります。AIモデルの学習・推論に使われるGPUは常に高い稼働率で電力を消費するため、従来型のオフィスビルやデータセンターとは電力需要の質そのものが異なります。既存の送電網がこの需要増に追いつかず、周辺地域の電気料金上昇につながっているとの指摘が各州で相次いでおり、今回の行政命令もこうした構造的な問題への対応として位置づけられています。

技術/ビジネス面

データサーバーのイメージ
Photo by Shubham Dhage on Unsplash

ヒーリー州知事は同時に、先月制定されたばかりのデータセンター向け売上税免除措置についても、新規申請の受け付けを一時停止しました。規制当局がクリーン電力義務化の実施細則を整える時間を確保するための措置です。マサチューセッツ州は、データセンターに制約をかける動きとしてはこの3か月で3州目にあたります。8月にはテキサス州が、公益事業委員会と送電網運用者による監査を義務付ける規制を導入しました。7月にはニューヨーク州が、ピーク需要50メガワット超の施設の新規建設を一時停止しています。データセンター誘致による雇用や税収を歓迎する州がある一方で、電力網への負担や住民の反発を理由に規制を強める州も増えており、全米で対応が分かれつつあります。同じ3州でも規制の中身は異なり、テキサスは監査による可視化、ニューヨークは新規建設の一時停止、そしてマサチューセッツはクリーン電力の調達義務という、それぞれ違うアプローチを取っている点も注目に値します。規制の設計次第で、事業者側が取れる対応も変わってくるためです。

これからどうなるか

こうした規制は、AI企業やクラウド事業者がデータセンターの立地を選ぶ際の重要な判断材料になっていきそうです。すでに業界側は、投資家のマーク・アンドリーセン氏やベン・ホロウィッツ氏、グレッグ・ブロックマン氏らが資金を出す広告キャンペーンを通じて、中間選挙の有権者に働きかける動きを見せています。開発者にとって直接の影響は小さく見えるかもしれませんが、クラウドの新リージョン開設や、AIサービスの計算資源拡張のペースが、こうした州ごとの規制によって左右される可能性はあります。自社サービスのインフラ計画を立てる際には、利用しているクラウドのデータセンターがどの州の規制対象になっているかも、頭の片隅に置いておく価値がありそうです。中長期的には、こうした規制が新設データセンターのコストを押し上げ、それがクラウドAPIの料金やGPUインスタンスの空き状況に跳ね返ってくることも考えられます。電力インフラと言えば開発者からは縁遠いテーマに見えますが、AIサービスのコストと可用性を左右する要因として、今後は無視しにくくなっていきそうです。

まとめ

マサチューセッツ州のクリーン電力義務化は、AIデータセンターへの逆風が全米で強まっていることを示す最新の事例です。テキサス・ニューヨークに続く3州目の規制強化として、今後の業界の立地戦略に影響を与えそうです。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Jason Mavrommatis on Unsplash

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