Arm、AI内蔵GPU発表 レイトレ処理負荷を70%削減

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Armは9月8日、モバイル向けGPU「Mali G2-Ultra NX」を発表しました。処理を担うシェーダーコアの内部にAI専用の演算回路を組み込んだ、Arm初の「AIネイティブ」設計です。次世代のスマートフォン向け半導体プラットフォーム「Arm CSS for Mobile 2」の一部として、CPUコアと合わせて公開されました。目玉はレイトレーシング(光の反射や影をより現実に近く描く高負荷な描画手法)の処理負荷を最大70%削減できる点で、デスクトップ級のゲーム体験をスマホに近づける狙いがあります。

背景と文脈

スマートフォンのゲーム描画は、消費電力と発熱の制約の中でどこまで美しい画をどれだけ滑らかに出せるかがずっと課題でした。近年はPC向けGPUで培われた「AIで画質や速度を底上げする」技術がモバイルにも波及し始めています。代表例が、低解像度で描いた画像をAIで高解像度に復元する超解像技術や、実際には描いていない中間フレームをAIが補って生成し、体感のなめらかさを上げる技術です。

これまでこうしたAI処理は専用の演算ユニット(NPU)に任せることが多く、GPU本体とのデータのやり取りに時間がかかるという弱点がありました。描画結果をいったんメモリに書き出し、それをNPUが読み込んで加工し、また画面表示用に戻すという往復が電力とレイテンシーの無駄を生んでいたのです。Mali G2-Ultra NXは、AI用の演算回路をシェーダーコアの中に直接組み込むことで、メモリやキャッシュ、制御構造を共有し、データ移動そのものを減らす設計を取っています。ゲームのグラフィックス処理とAI処理を同じ土台の上で動かす発想が今回の核心です。

技術/ビジネス面

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Photo by Mediamodifier on Unsplash

新設計のAI演算回路はINT8・INT16という軽量な数値形式(通常より少ないビット数で数値を表現し、計算を速く軽くする方式)に対応し、映像の動きを検出するオプティカルフローの処理も加速します。この回路を使う独自機能が2つあり、低解像度の描画をAIで高解像度に復元する「Neural Super Sampling(NSS)」と、コマとコマの間に新しいフレームをAIが生成して滑らかさを底上げする「Neural Frame Rate Upscaling(NFRU)」です。Armによると、これらAI処理の電力あたり性能は前世代比で最大4倍に高まりました。

レイトレーシングの専用回路も第3世代に刷新されています。複雑な光源やシャドウ、反射の表現をより低い処理コストでこなせるようになり、テストしたワークロードではレイトレ処理のコストを最大70%削減、フレームレートを最大30%引き上げ、メモリへのアクセス量も最大13%減らしました。AI以外の一般的なゲーム性能も前世代比14%向上しており、NFRUと組み合わせれば最大120FPSでの動作も視野に入るとしています。

これからどうなるか

Mali G2-Ultra NXは2026年内に量産チップへの採用が見込まれ、来年発売のフラッグシップスマートフォンに搭載される可能性が高いモデルです。Armの発表では、C2-UltraやC2-Proといった新CPUコアとセットで提供される想定で、端末メーカー各社のSoC(スマホ全体の頭脳にあたる集積回路)設計に組み込まれていく流れです。ゲームアプリを作る開発者にとっては、AI超解像やフレーム生成を前提にした描画設計が現実的な選択肢になり、低スペック端末向けの画質妥協を減らせる余地が生まれます。

一方で、AI処理をGPU側に統合する流れはNPUとGPUの役割分担そのものを揺さぶります。今後は画像認識やオンデバイス推論を含む幅広いAIワークロードを、どちらのチップに割り振るのが効率的かという設計判断が、モバイルアプリ開発でも意識されるようになりそうです。ゲーム以外でも、カメラアプリのリアルタイム画質補正や動画会議の背景処理など、GPU上で完結する軽量なAI推論の使いどころが広がる可能性があります。

まとめ

Armは新GPU「Mali G2-Ultra NX」で、AI専用回路をシェーダーコアに統合しました。レイトレ負荷を最大70%削減しつつ、AI超解像やフレーム生成でモバイルゲームの体験を底上げします。来年のフラッグシップ端末への搭載が焦点になりそうです。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Akshar Dave🌻 on Unsplash

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