AIR、AIエージェントのアドオン検証に5000万ドル調達

サイバーセキュリティを象徴するノートPCの画像 AI

AIエージェントが業務システムへのアクセス権を持つ企業が増える中、そのエージェントが使うスキルやプラグイン、MCPサーバーを継続的に検証するスタートアップAIRが、シード資金として合計5000万ドルを調達したと2026年9月1日に発表しました。第1弾の1000万ドルをSequoiaが、第2弾の4000万ドルをGreenoaksがそれぞれ主導し、Cognition社長のZach Frankel氏やWiz共同創業者のYinon Costica氏ら著名投資家も参加しています。エージェントを狙う攻撃の脅威が現実味を帯びる中、開発現場のセキュリティ意識を映す資金調達といえます。

背景と文脈

企業がシステムへのアクセス権を持つAIエージェントを次々と導入する中、エージェントが利用するツールを巡る新しい「ソフトウェアサプライチェーン」が形成されつつあります。AIエージェントは単体では動かず、スキルと呼ばれる拡張機能や外部プラグイン、そしてMCP(Model Context Protocol、AIモデルが外部ツールやデータソースに接続するための標準プロトコル)サーバーを組み合わせて業務を実行します。TechCrunchの報道によれば、こうした拡張機能は誰でも公開でき、審査の仕組みも統一されていません。従来のPCドライバやアプリケーションには、社内のIT部門による審査やアンチウイルスソフトのようなセキュリティ監視が及んでいました。一方でエージェント向けのMCPサーバーやスキルには、同等の監視体制がまだ整っていません。汚染されたウェブコンテンツを読み込んで誤動作したり、悪意あるプラグインが機密データを外部に送信したりするリスクが指摘されています。AIRはこの隙間を埋めるプラットフォームとして、企業内で稼働するエージェントを発見し、それらが使うアドオンを継続的に再検証する仕組みを提供しています。

技術/ビジネス面

ソフトウェアサプライチェーンを象徴する画像
Photo by Shubham Dhage on Unsplash

AIRを創業したのは、CEOのYair Saban氏とCTOのNiv Hoffman氏です。2人ともUnit 8200というイスラエル軍のサイバー攻撃専門部隊の出身で、攻撃側の視点をそのままエージェントの防御設計に転用しています。AIRの特徴は、拡張機能を一度スキャンして終わりにせず、継続的に再検証する点にあります。スキルやMCPサーバーは公開後も頻繁にアップデートされるため、導入時点の審査だけでは新たな脆弱性を見逃してしまうからです。

同社は現在、顧客企業20社以上を抱え、その約25%が大企業です。これまでに発見したオンライン上のadd-onやスキルのうち、約27%を審査で不承認としフィルタリングしてきました。承認済みコンポーネントのマーケットプレイスも運営し、審査を通らないツールや未承認の外部ソースへのエージェントによるアクセスを自動でブロックする仕組みも備えています。特に金融サービスや製薬業界など、規制の厳しい業界からの需要が強いといいます。従業員は現在約40人まで増えました。投資家にはクラウドセキュリティ企業Wizの共同創業者Yinon Costica氏も名を連ねています。リード投資家であるSequoiaのBogomil Balkansky氏は「これはスキャンの問題ではなく、継続的な再検証の問題だ」と述べています。

これからどうなるか

今回の調達は、AIエージェント向けのセキュリティ市場がまだ立ち上がったばかりであることを示しています。AIRのほかにもNoma SecurityやZenity、Astrix Securityといった競合が同様の課題に取り組んでおり、今後は監視対象がスキルやMCPサーバーだけでなく、エージェント同士が呼び出し合う連携部分にも広がっていくとみられます。個人や小規模チームでプロダクトを開発する立場でも、この動きは無関係ではありません。自分のプロダクトにMCPサーバーやエージェント向けスキルを追加する際は、提供元の信頼性やアクセス権限の範囲を毎回確認し、アップデート後も定期的に見直す習慣が欠かせなくなります。npmパッケージの脆弱性チェックと同じ発想を、エージェントのアドオンにも適用する時期が来ているといえるでしょう。大企業向けの高価なツールを使わなくても、導入前のチェックリスト化だけで多くのリスクは減らせます。

まとめ

AIRの5000万ドル調達は、AIエージェントが使うスキルやMCPサーバーの安全性を継続的に検証する必要性を市場が認め始めた証といえます。企業だけでなく、エージェントを自作のプロダクトに組み込む開発者一人ひとりが、拡張機能の出所とアクセス範囲を導入前後で意識する時代に入ったといえるでしょう。今後同様のサービスが増え、開発者にとっても標準的な確認手順になっていく可能性があります。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Kerde Severin on Unsplash

タイトルとURLをコピーしました