Google DeepMindは2026年7月30日、ロボット向けAIモデルの最新版「Gemini Robotics 2」を発表しました。これまでテーブル上の物をつかむといった上半身中心の作業に留まっていた制御範囲を、歩行や屈伸を含む全身へと広げたのが最大の特徴です。人型ロボットApollo 2による実演では、「じょうろを緑色のゴミ箱に入れる」といった複数の手順を要する指示にも対応しました。身体を持つAIが周囲の状況を理解し行動計画を立てる能力を担う派生モデルGemini Robotics-ER 2は、Google AI Studioですでに試用できるようになっています。
背景と文脈
Google DeepMindは2025年から、ロボットに搭載するAIモデル「Gemini Robotics」シリーズを段階的に公開してきました。初期のGemini Roboticsは、机の上の物を認識してつかむ、部品を並べ替えるといった、上半身とテーブル周りの動作に対象を絞ったモデルです。産業用ロボットアームや簡単な家事支援デモでは十分な成果を示した一方、歩行や姿勢の切り替えを伴う人型ロボット全体の制御は、別の技術的な壁として残っていました。
背景には、VLA(Vision-Language-Action、カメラ映像と言葉による指示を入力すると、モーターを動かす具体的な指令を直接出力するAIモデル)という設計思想があります。VLAは画像認識と言語理解、動作生成を1つのモデルにまとめることで、状況ごとに人がプログラムを書き直さなくても新しい作業に対応しやすくなる利点があります。Apptronikなど人型ロボットを開発する企業が増える中、体全体を一貫して動かせるAIの必要性は年々高まっていました。
加えて、ロボットの種類は年々多様化しています。二腕アームのFranka DuoやDexmate、SO101、Trossenといった機体はそれぞれ関節の数や動かし方が異なり、1つのAIモデルをそのまま流用できるとは限りません。DeepMindは今回、少ない学習データで別の機体にも動きを移し替える技術を磨いたと説明しています。今回のGemini Robotics 2は、この上半身特化から全身対応、そして機体をまたいだ汎用性への転換点にあたります。
技術/ビジネス面

Gemini Robotics 2は、実は3つのモデルで構成されています。動作そのものを生成するVLAモデル「Gemini Robotics 2」、状況判断や計画を担う「Gemini Robotics-ER 2」、そしてネットワークに頼らずロボット本体だけで動く「Gemini Robotics On-Device 2」です。ER(Embodied Reasoning、身体を持つAIが周囲を理解し数分がかりの作業計画を立てる推論の仕組み)を担うモデルは、複数台のロボットが役割分担しながら1つの作業をこなす連携機能も新たに備えました。
実演に使われたApptronik社の人型ロボットApollo 2では、22自由度(指や関節が独立して動かせる方向の数)の多指ハンドを使い、電球を外す作業で92%、ゴミ袋を結ぶ作業で44%の成功率を記録しています。棚から物を取り出す動作は76.3%、床から拾う動作は45.7%でした。テーブル型アームのFranka Duoでは、工具を種類ごとに仕分ける作業が78.9%、部品を精密にはめ込む作業では89.6%の成功率に達しています。DeepMindはあわせて、ロボットが人と安全に共存できるかを測る新しいベンチマーク「ASIMOV-Agentic」も公開し、非常停止や人検知といった安全機能の評価軸を示しています。
これからどうなるか
Gemini Robotics-ER 2はすでにGoogle AI Studioで試用できるようになっており、動作生成を担うVLAモデルとOn-Deviceモデルは早期アクセスパートナー向けの申し込みが始まっています。今後は倉庫内作業や在宅介助など、人が入り組んだ環境で長時間ロボットを動かす用途への展開が焦点になりそうです。複数ロボットの連携機能が実用段階に入れば、工場や物流拠点での人手不足解消にもつながるでしょう。
ML専門でなくても、VLAモデルの入出力設計は、画像と自然言語を渡すと行動が返ってくるという点で既存のAPI連携の発想に近く、ロボット専用の知識がなくてもプロトタイプを組みやすくなっています。自社サービスにセンサーやアクチュエーターを組み込む予定がある開発者は、Gemini Robotics-ER 2をAPI経由で試すところから着手できる点は覚えておいて損はないでしょう。将来ハードウェア連携の機能を検討する際、この設計を参考にできる場面は意外と多いはずです。
まとめ
Gemini Robotics 2は、ロボットAIの制御範囲を上半身から全身へと広げた新モデルです。Apollo 2での実演やASIMOV-Agenticという安全指標の公開は、人型ロボットが実環境で働く未来に向けた具体的な一歩といえます。開発者にとっても、AI Studioから手軽に試せる点や、API連携に近い設計思想を持つ点は覚えておく価値があるでしょう。

