中東・北アフリカ(MENA)地域の基幹産業に特化した意思決定AIを提供する「1001 AI」が、シードラウンドで900万ドルを調達した。同社は航空、物流、石油・ガスなどの高リスク産業が抱える非効率性を、AIネイティブOSで劇的に改善することを目指す。政府や大企業によるAI投資が活発に進む一方、現場レベルでのデジタル化がまだ十分でないMENA地域では、同社のソリューションがそのギャップを埋める存在として注目されている。
1001 AIとは?MENA基幹産業向け意思決定AI
「1001 AI」は、中東・北アフリカ(MENA)地域の基幹産業に特化した意思決定AIを提供する新興企業だ。Scale AIでの経験を持つビラル・アブ・ガザレ氏が創業した。同社は最近、CIV、General Catalyst、Lux Capitalなどの投資家から900万ドルのシード資金を調達したと報じられている。
この資金調達により、MENA地域の航空、物流、石油・ガスといった重要産業が抱える課題解決に向けた基幹産業向け意思決定AIの開発が加速する。同社の目標は、これらの高リスク産業における非効率性をAI技術で大幅に削減することだ。
高リスク産業の非効率を打破するAIネイティブOS
1001 AIは、高リスク産業の非効率性を解消するため、意思決定を支援するAIネイティブOSを開発している。創業者のアブ・ガザレ氏は、湾岸地域だけで空港、港湾、建設、石油・ガス産業において100億ドル以上の非効率性が存在すると指摘する。特にアラブ首長国連邦、サウジアラビア、カタールなどの市場に大きな機会があるという。
例えば、空港運営の効率化は、空港と航空会社双方に多大なコスト削減効果をもたらす。また、MENA地域の巨大プロジェクトの10件中9件が遅延や予算超過に陥る現状を考慮すると、わずかな効率改善でも莫大な費用を節約できる。同社の産業AIは、顧客既存システムからデータを統合し、リアルタイムで運用を最適化する指示を出すことで、手作業による調整をAIが自動化する。
AI投資が加速!MENA地域が秘める巨大な可能性
MENA地域は近年、AI技術の積極的な導入と投資で世界を牽引している。アラブ首長国連邦のG42やサウジアラビアの国立AIセンターなど、政府系機関が数十億ドル規模の投資を行い、AIインフラの構築とグローバル人材の誘致を進めている。このような旺盛な投資意欲と予算、そして急速なニーズが、MENA地域をAI技術の理想的な検証拠点にしていると見られている。
1001 AIの投資家であるLux Capitalのパートナーは「AIが物理世界の問題を大規模に解決することに極めて強気だ」と語る。MENA地域は、デジタル化が遅れているミッションクリティカルなインフラが多く、変革の大きな可能性を秘めているため、MENA地域新規プロジェクト向けAIソリューションに大きな注目が集まっている。
共創で未来を拓く:1001 AIの戦略と今後の展望
1001 AIは、顧客との共創を通じてシステムを構築する戦略を採用している。チームは数週間にわたり顧客に密着し、共同開発のスプリントを実施。それぞれの運用実態に合わせてシステムをカスタマイズする。このアプローチにより、多岐にわたる産業の運用フローにAIを適用可能にしている。
今回調達した資金は、航空、物流、インフラ分野での早期導入を加速させるとともに、ドバイとロンドンでのエンジニアリング、運用、営業部門の人材採用に充てられる。同社は2025年末までに最初の顧客への展開を開始し、まずは建設分野から着手する計画だ。今後5年間で湾岸地域の主要なオーケストレーション層となることを目指し、将来的にはグローバル展開も視野に入れている。

