データレジリエンス企業のVeeamは、AI時代における顧客のデータ管理とセキュリティを強化するため、Securiti AIの買収に合意した。買収額は17億2500万ドルで、12月上旬に完了予定だ。この買収により、VeeamはSecuriti AIの「データコマンドセンター」機能を既存の製品群に統合し、サイバー脅威からの保護に加え、AI活用に向けたデータ識別、ガバナンス、信頼性の確保を支援する。データ業界ではAI導入を背景に統合が進んでおり、本件はその流れを加速させる動きとみられる。
VeeamがSecuriti AIを買収する背景
データレジリエンス分野を牽引するVeeamは、AI時代の新たな課題に対応するため、データセキュリティ強化に乗り出した。同社は10月21日（火）にSecuriti AIの買収契約を締結したと発表した。このVeeam 買収は、顧客データへのさらなる制御とセキュリティを提供することを目的としている。買収額は現金と株式の組み合わせで17億2500万ドルに上り、12月第1週に完了すると報じられている。
Securiti AIは2019年にRehan Jalil氏によって設立され、MayfieldやGeneral Catalyst、Cisco Investmentsなどから1億5600万ドル以上のベンチャーキャピタルを調達してきた。Veeamは2024年12月に20億ドルの二次売却を完了し、企業価値は150億ドルと評価された。VeeamのAnand Eswaran CEOは、この時点で2025年の計画として、データレジリエンス事業を補完する買収対象の探索を挙げており、今回のSecuriti AI データセキュリティ強化 買収はその戦略の一環といえる。
AI時代のデータセキュリティ強化と戦略
VeeamのCEO、Anand Eswaran氏は、データが新たな時代を迎えたと語る。従来のサイバー脅威や災害からのデータ保護だけでなく、AIを透明性高く活用するためには、データの識別、ガバナンス、信頼性確保が不可欠と強調する。今回のVeeam データセキュリティ強化 買収は、この新たなニーズに応えるための戦略的な一手である。
AIの普及に伴い、企業が扱うデータの量と複雑性は飛躍的に増大している。それに伴い、機密データの特定、アクセスの制御、コンプライアンス順守、そしてAIモデルへの安全なデータ提供が、データセキュリティの喫緊の課題となっている。VeeamはSecuriti AIの技術を統合することで、企業がAIを活用する上でのデータリスクを管理し、同時にデータのポータビリティとレジリエンスを維持するソリューション提供を目指す。
Securiti AIの「データコマンドセンター」
Securiti AIが提供する主要な製品は、エンタープライズ向けの「データコマンドセンター」である。このSecuriti AI データコマンドセンター製品は、企業が所有するあらゆるデータを一元的に管理し、セキュリティとガバナンスを確保するための包括的なプラットフォームだ。買収完了後、VeeamはSecuriti AIのデータコマンドセンター製品を既存の製品群と並行して提供する予定である。
Securiti AIの創設者であるRehan Jalil氏は、買収後にVeeamのセキュリティおよびAI担当プレジデントとして参画する。彼のリーダーシップのもと、VeeamはデータセキュリティとAIの統合を加速させるだろう。このデータコマンドセンターは、データのライフサイクル全体にわたる可視性を提供し、企業がデータ資産をより効果的かつ安全に活用できるように支援する重要な役割を担う。
データレジリエンス市場の再編と展望
今回のVeeamによる買収は、データ業界全体で進む統合の動きを象徴している。2025年にはデータ企業が相次いで買収され、AI導入支援のためのデータスタック改善が加速している。同年5月にはDatabricksがNeonを10億ドルで、その数週間後にはSalesforceがInformaticaを80億ドルで買収したと報じられた。
元GartnerアナリストでデータトレンドアドバイザリーSanjMoを運営するSanjeev Mohan氏は、同年6月に、顧客は長らく、データインフラストラクチャスタック構築のために多数のデータ企業を使い分けることにうんざりしていたと指摘する。企業がAIを導入したいと考える中で、このデータ断片化の問題がより顕著になっているという。このような市場環境において、優れたデータ関連スタートアップの多くは、高値でなければ買収されているのが現状であり、データレジリエンス 製品市場は今後も再編が続くと予想される。
