Blackstone傘下のオーストラリア企業AirTrunkが2026年6月5日、インドへの大規模投資計画を発表しました。2030年までに300億ドル(約4兆4,000億円)を投下し、5ギガワット(GW)のAIデータセンター容量を新たに整備するという内容です。インドの現在のデータセンター総容量は約1.5GWであることを踏まえると、今回の1社分の計画だけで国全体の現有容量の3倍超に相当します。AmazonやGoogleに続く大型参入で、インドをめぐるAI基盤競争がさらに激化しています。
背景と文脈
AirTrunkはオーストラリアに本社を置くデータセンター事業者で、米投資ファンドBlackstoneが出資しています。同社はアジア太平洋地域に集中展開しており、2026年初頭にインドのLumina CloudInfraを買収してインド市場に参入しました。この買収によって、ムンバイ・チェンナイ・ハイデラバードで合計約600MWの開発パイプラインを得ています。
インドのデータセンター市場は世界的に注目されています。インド政府は2047年まで、海外ワークロードを国内で処理した企業に税制上の優遇措置を与えており、外資系クラウド・AI事業者の誘致を積極的に進めています。AI需要の急増を受け、Amazon Web Services(AWS)・Google Cloud・Microsoft Azure・OpenAI、さらにインド財閥のReliance Industriesも同国でのデータセンター拡充を相次いで表明しています。
今回の発表は、AirTrunk CEOのロビン・フーダ氏がインドのモディ首相と会談した後のタイミングで行われました。モディ首相は「インドをクラウドコンピューティングとAIの世界的拠点として強化するものだ」と歓迎しています。
技術/ビジネス面

投資の核心は、マハラシュトラ州ライガッドのペン成長センターに建設予定の3GW施設です。投資額は約210億ドル(約3兆1,000億円)に上り、州政府との間で土地割り当てに関する覚書の署名が済んでいます。残る2GWは、既存パイプラインのムンバイ・チェンナイ・ハイデラバードで順次展開される見込みです。
インドのデータセンター業界全体で現在の総容量は約1.5GWにとどまっています。しかし、生成AIや大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)のワークロードが急増しており、2030年までに最大8GWに達するとの予測があります。AirTrunkの5GW計画は、こうした需要増を見越した長期投資です。
同規模の海外データセンター投資は世界各地で続いています。直近では、ソフトバンクがフランスに最大750億ユーロのデータセンター計画を発表しており、AI基盤をめぐる地政学的な獲得競争が本格化しています。インドが選ばれる理由として、豊富なITエンジニア人材・比較的安価な電力コスト・政府の積極誘致政策・10億人超の潜在ユーザー基盤が挙げられます。
これからどうなるか
AirTrunkの投資は2030年までの段階的な展開が見込まれており、容量が積み上がるにつれてアジア太平洋地域でのAIサービスのレイテンシ(応答遅延)とコストが改善されます。インドリージョンのAIクラウドAPIが充実すれば、同地域のエンジニアリングチームがGPUを使った推論や学習を低コストで実行できるようになります。特に大規模なRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)パイプラインや、リアルタイム推論が必要なプロダクトでコスト試算が変わる可能性があります。
ただし課題もあります。5GWのデータセンターを安定稼働させるには膨大な電力が必要で、インドの電力網の安定性が問われます。データプライバシー規制や外資への土地売却規制など、制度面のハードルも引き続き注視が必要です。
まとめ
AirTrunkの$30Bインド投資は、グローバルなAI基盤整備競争の最前線を示しています。インド1国のデータセンター容量を現状の3倍以上に引き上げる規模の計画が民間1社から出てきた事実は、AI時代のインフラ投資がいかに大規模化しているかを物語っています。
参考リンク
- AirTrunk commits $30B to build 5GW of AI data centers in India (TechCrunch)
- Blackstone’s AirTrunk to Spend $30 Billion on India Data Centers (Bloomberg)
アイキャッチ画像: Photo by Shubham Dhage on Unsplash

