JPMorganら米銀、AIエージェントの口座ログインを遮断

low angle photography of high rise buildings AI

米国の大手銀行が、顧客のIDとパスワードを使って口座にログインするAIエージェントの締め出しに動いています。Axiosの報道によると、銀行の承認なしにエージェントが口座へ入る例が見つかり、利用者の指示なしに動いているように見えるものもありました。JPMorganやMorgan Stanleyなどが外部エージェントを遮断し、閲覧だけに絞る方向です。同じ日には1Passwordが、エージェントにパスワードを見せずに代理ログインさせる仕組みを発表しました。

背景と文脈

ここ数か月で、利用者の代わりに買い物や手続きをこなす個人向けエージェントが一気に増えました。AnthropicのClaude Duet、OpenAIのChatGPT Work、MetaのMuseなどです。こうしたエージェントは、人間と同じ画面をブラウザで操作して作業を進めます。Computer Use(AIが画面を見てマウスやキーボードを操作する機能)や、オープンソースのOpenClawといった道具が使われています。

問題は、銀行から見るとエージェントと本人の区別がつかないことです。正しいIDとパスワードでログインしてくるため、利用者が頼んだ操作なのか、エージェントが勝手に動いているのか判断できません。銀行の規約は本人によるログインを前提にしており、資格情報の共有自体が規約違反にあたります。

小売の世界でも対応が分かれています。Amazonはエージェントによる買い物を拒み、Walmartは支出上限付きで受け入れる方針を打ち出しました。金融は扱うものがお金そのものなので、より慎重になるのは自然な流れでしょう。

技術/ビジネス面

red padlock on black metal railing
Photo by Christian Englmeier on Unsplash

各行の対応には温度差があります。報道をまとめると次のとおりです。

  • Morgan Stanley:エージェントを全面的に遮断。ただし「暴走したエージェント」は確認していないと説明
  • JPMorgan:第三者が顧客の資格情報でログインすることを禁止。Plaid(銀行口座と外部アプリをつなぐ仲介サービス)経由の残高照会など閲覧はできるが、送金や支払いはできない
  • Charles Schwab:顧客の資格情報でログインする外部エージェントを遮断。週に数十件を止めているとCEOが語った
  • Bank of America、Citi:外部からのエージェントの利用を制限

多くの銀行は、エージェントには閲覧だけを許す形を落としどころと見ています。JPMorganのJamie Dimon CEOは、資格情報をエージェントに渡した顧客は不正な取引の責任を負う可能性があると警告しました。Chaseの広報も、IDとパスワードを誰にも渡さないよう呼びかけています。

一方、1Passwordが発表した「1Password for Agents」は、別の解き方を示しました。エージェントは固有のデジタル鍵で1Passwordに身元を示し、利用者が通知を見てログインを承認します。承認後は1Passwordが資格情報を入力するため、エージェントはパスワードを一度も手にしません。対応先にはClaude Duet、ChatGPT Work、Muse、xAIのGrok Botなどが並びます。

これからどうなるか

当面は、銀行が閲覧と操作をはっきり分ける流れが続きそうです。閲覧はPlaidのような公式の接続経路で、送金などの操作は本人の明示的な承認を経て、という形に落ち着く可能性があります。エージェント側も、画面操作で無理に入るより、許可された経路を使うほうが安定して動けます。

開発者が自分のエージェントやサービスを作るなら、ユーザーのパスワードを預かる設計は早めに見直したほうがよいでしょう。資格情報は保管せず、OAuth(パスワードを渡さずに限られた権限だけを外部アプリに与える仕組み)や1Passwordのような仲介を使うのが安全です。サービスを提供する側も、エージェントを見分けて読み取り専用のAPIを用意するかどうか、判断を迫られます。

銀行が締め出しを強めるほど、エージェントを正式に受け入れる窓口の整備が求められます。身元を名乗れるエージェントと、承認の記録を残す仕組みが、次の標準になっていくと見られます。

まとめ

米大手銀行は、顧客の資格情報でログインするAIエージェントを遮断し始めました。本人とエージェントを区別できないことが最大の理由です。1Passwordのようにパスワードを見せずに代理ログインさせる仕組みも出ており、資格情報を直接渡す使い方は終わりに向かいつつあります。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by Markus Spiske on Unsplash

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