実業家イーロン・マスク氏が率いるAI企業xAIは、米テネシー州メンフィスで演算基盤「Colossus 2」を運用しています。マスク氏は、ここに搭載するNvidia製GPUの台数を、年内に2倍以上へ増やす計画を明らかにしました。GPUは画像処理向けに開発された演算用の半導体で、AIの学習や推論の計算にも広く使われています。9月25日、X(旧Twitter)への投稿で具体的な増設時期を公表。現状の55万個規模から、年末までに120万個を超える見通しです。生成AIの開発競争を支える計算基盤の拡大ペースを、改めて示す動きです。
背景と文脈
xAIは、マスク氏が2023年に設立したAI企業です。対話型AI「Grok」を開発し、OpenAIやGoogle、Anthropicと競う立場にあります。最先端の「フロンティアモデル」と呼ばれる高性能AIを学習させるには膨大な計算資源が必要です。xAIはその確保のため、メンフィスで大規模な演算基盤の建設を続けてきました。Grokの最新モデルも、この基盤上で学習が進められています。
最初の拠点「Colossus」は2024年に稼働を始め、単一拠点としては世界最大級のAI学習クラスタとなりました。後継の「Colossus 2」は、隣接するミシシッピ州サウスヘイブンの施設も含めた拡張版です。2026年1月には3棟目の建屋が加わり、消費電力ベースで2ギガワット規模、投資額は約180億ドルに達したと、Introlのブログが伝えています。当時の搭載数はGPU約55万個とされ、今回発表された規模はそこからさらに倍増する計画に当たります。
急速な拡張は、電力確保という課題も伴います。xAIは施設周辺に天然ガスタービンを設置し、電力を賄っています。しかし2026年4月には、米NAACPミシシッピ州支部などが無許可のタービン稼働を問題視し提訴したと、Data Center Dynamicsが伝えています。GPUの台数を増やすほど消費電力も比例して増えるため、電力インフラや周辺環境への影響は今後も注視すべき論点です。
技術/ビジネス面

マスク氏によると、Colossus 2には現在、Nvidia製の「GB200」が11万個、後継の「GB300」が44万個搭載されています。GB200とGB300は、Nvidiaがデータセンター向けに展開する「Grace Blackwell」世代のAI向け半導体です。CPUとGPUを1つの基板に統合し、AIの学習・推論を高速に処理できる点が特徴です。GB300はメモリ容量や処理性能を高めた改良版に当たります。
9月25日、マスク氏はGB300をさらに22万個、来週中に稼働させると説明しました。詳細はElon Musk Aims to Double Colossus 2’s Nvidia Chips by Year-Endと題したBloomberg記事で報じられています。11月にも追加で22万個、運が良ければ12月末までにもう22万個を稼働させたい考えです。3回の増設がすべて計画通りに進めば、Colossus 2単体で約121万個に達します。マスク氏がここまで具体的な台数と時期を明かすのは珍しく、増設の確度の高さをうかがわせます。
これは、xAIがかつて掲げていた「100万GPU」という目標を、すでに上回る水準です。初代Colossusが持つ約23万個と合わせると、メンフィス一帯の合計は144万個規模に達する見通しです。Nvidiaにとっても、1社からの発注規模としては極めて大きく、最新データセンター向けアクセラレータへの需要がいかに強いかを裏付ける数字です。
これからどうなるか
Colossus 2の規模拡大は、Nvidiaの受注動向にも直結します。GB200やGB300クラスの半導体を百万個単位で確保する動きは、他の大手AI企業による設備投資競争をさらに加速させる可能性があります。一方で、電力供給や環境規制への対応が追いつくかは不透明です。マスク氏自身も、12月分の増設については「運が良ければ」と留保を付けています。計画通りに進むかどうかは、今後の続報で確認する必要があります。
開発者にとっても無関係な話ではありません。学習クラスタの規模が拡大するほど、Grokのような大規模モデルは更新頻度や性能向上のペースを速めやすくなります。APIやチャットボット経由でモデルを利用するプロダクトを作っている場合、こうした計算資源の拡大競争は、選べるモデルの幅や利用料金にも間接的に響いてくるはずです。大規模インフラの構築には電力・冷却・ネットワークなど多岐にわたる課題が伴う点も、システム設計を考えるうえで参考になります。
まとめ
xAIは、メンフィスの演算基盤Colossus 2について、Nvidia製GPUを年内に120万個規模まで増やす計画を示しました。現在の55万個から、GB300を3段階に分けて追加する方針です。実現すれば初代Colossusと合わせて144万個規模となり、AI開発競争を支える計算資源の拡大ペースを象徴する動きです。電力確保や環境規制への対応など、克服すべき課題も残っており、今後の進捗が焦点になります。
参考リンク
- Elon Musk Aims to Double Colossus 2’s Nvidia Chips by Year-End
- xAI Colossus Hits 2 GW: 555,000 GPUs, $18B, Largest AI Site
- xAI deploys 19 natural gas turbines at Colossus 2 data center in Southaven, Mississippi – report
アイキャッチ画像: Photo by Shubham Dhage on Unsplash

