Salesforceの副CFOであるMike Spencer氏は9月3日、Deutsche Bank Technology Conferenceで、通期の営業利益率見通しを引き上げなかった理由についてClaudeのトークン利用料の増加を挙げました。第2四半期の営業利益率は20.5%だった一方、通期見通しは20.1%にとどめており、AI活用が進むほどコストも膨らむという、生成AI企業に共通する課題が大手SaaS企業でも表面化した形です。
背景と文脈
SalesforceとAnthropicは2026年に入り関係を急速に深めてきました。CEOのMarc Benioff氏は5月、投資家向けポッドキャストでAnthropicに対し2026年に3億ドルを支出する見込みだと明かしています。社内では従業員の83%がClaude搭載のSlackボットを利用し、年間380万時間分の作業時間削減につながったとしています。8月には両社がSalesforceのCRM機能をまるごとClaudeに組み込む「Claudeforce」を発表し、37種類の営業支援スキルを通じて商談分析やパイプライン管理をClaude上で完結できるようにしました。SalesforceがAnthropicに出資した際の評価額は約50億ドルとされています。
Benioff氏はかねてSaaS事業がAIエージェントに置き換わるという「SaaSpocalypse(SaaS終焉論)」を否定してきましたが、実際にはSalesforce自身が自社製品をClaude経由での利用へと大きく舵を切っています。今回のSpencer氏の発言は、その裏側でトークン利用料というコストが着実に積み上がっている実態を示しました。米調査会社Gartnerは2025年の世界の生成AI関連支出を142億ドルと見積もっており、Salesforceのような大手企業の動きは市場全体の拡大ペースを映す一例です。
技術/ビジネス面

Spencer氏は「半年ほど前、研究開発の現場でClaudeを解き放った」と述べ、それ以降のトークン支出をまかなうため通期の利益率見通しを据え置かざるを得なかったと説明しました。単に使用量を絞るのではなく、Salesforceは「タスクに応じた処方箋的なモデル選び」という考え方への転換を進めています。ソフトウェア開発の一部タスクでは最新モデルが必要な一方、大半のタスクではそこまでの性能は不要だという判断です。
実務ではOpenAIやCursor、Claudeといった複数ベンダーのモデルをタスクごとに使い分け、Grokの試験導入も進めているといいます。ベンダーごとにコスト構造が異なるため、同じ処理でもどのモデルに投げるかでコストが大きく変わることを踏まえた選択です。全社規模でAIエージェントを動かす企業が、性能とコストのバランスを取るために実践している調整の一端が明らかになりました。同社は座席課金からAIエージェントの稼働量に応じた従量課金へと、収益モデル自体の転換も進めており、コスト構造の見直しは製品戦略と一体で動いています。
これからどうなるか
Salesforceほどの規模でなくても、LLM APIをプロダクトに組み込んでいるチームであれば同じ構造の問題に直面します。すべての処理に最上位モデルを使うと、機能追加のたびにAPI利用料が積み上がり、利益を圧迫しかねません。タスクの難易度に応じて軽量モデルと高性能モデルを使い分ける設計は、Salesforceの事例と同じ発想で、自社のコスト試算を見直す際の参考になります。
また、複数のモデルプロバイダーを併用できるようにアーキテクチャを組んでおけば、価格改定や性能向上があった際に柔軟に切り替えられます。特定のベンダーへの依存度が高いプロダクトほど、今回のような支出増加の影響を強く受けやすい点は意識しておく価値があります。トークン単価だけでなく、キャッシュ機能の活用やリクエスト設計の見直しなど、地味な最適化の積み重ねが最終的な収益性を左右します。
まとめ
SalesforceはClaudeへの依存を深める一方、そのコストが利益率に直接響く現実にも直面しています。AIエージェントの本格導入は、性能だけでなくコスト管理の巧拙が問われる段階に入りました。
参考リンク
- Salesforce blames its Claude addiction for denting profit margin guidance
- Salesforce just put its entire CRM inside Claude
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