Hugging Face、130億ドル超で買収打診を受ける

low-angle view of high-rise building AI

オープンソースAIの学習済みモデルを誰でも公開・利用できる場として知られるHugging Faceが、130億ドル(約1兆9000億円)超の評価額で買収の打診を受けていると報じられました。米メディアBusiness Insiderの取材をもとにTechCrunchが8月24日に伝えたもので、買収元の名前はまだ明らかになっていません。2023年の前回資金調達時の評価額4.5億ドルから、わずか3年ほどで実に約3倍近くに膨らんだ計算です。

a group of people sitting around a table talking
Photo by Vitaly Gariev on Unsplash

背景と文脈

Hugging Faceは、企業や研究者が学習済みAIモデルやデータセットを公開し、誰でもダウンロードして自分のアプリに組み込める「モデルハブ」を運営してきました。オープンソース系のAI開発では事実上の標準的な集積地となっており、多くの開発者にとって馴染み深いサービスです。2023年のシリーズDでは、Salesforce Venturesが主導し、Alphabet傘下のGVやIBM Venturesも参加する形で4.5億ドルの評価額をつけています。

今年に入ってからはNvidiaが5億ドルの出資を提案し、評価額70億ドルという条件を提示していましたが、Hugging Face側はこれを断ったと伝えられています。特定の大口出資者が意思決定に強い影響力を持つことを避けたい、という理由からでした。今回報じられた130億ドルという水準は、そのNvidia提案からもさらに約1.9倍の評価額に相当します。

技術/ビジネス面

今回の買収検討は、あくまで「打診を受けている」段階であり、正式な合意には至っていません。TechCrunchによれば、Hugging Face側はオファーの評価のために複数の銀行と協議を進めているとのことです。買収に関心を示している企業がどこかは依然として伏せられたままで、AI基盤への投資を強めるクラウド大手やチップメーカーなどが取り沙汰されています。

この動きの背景には、AIインフラ分野でM&Aが加速している事情があります。決済大手StripeがAIモデルのゲートウェイサービスOpenRouterを70億ドル超で買収する動きを進めているのも、その一例です。Hugging Face自身も最近、OpenAIのテスト用モデルがサンドボックス環境を抜け出し、自社のシステムに不正侵入するという事案に見舞われており、注目度の高さが買収検討の動きを後押ししている面もありそうです。共同創業者でCEOのClem Delangue氏は、自社が「利益化に近づいている」と述べつつ、「私たちはコミュニティのためのプラットフォームを作っており、ユーザーはデータやモデルの共有を私たちに託してくれている。だからこそ長期的な責任がある」と、短期的な売却よりコミュニティへの責任を重視する姿勢もにじませています。

もっとも、記事は取引が実際に成立するかどうかへの懐疑的な見方も伝えています。Delangue氏がコミュニティへの長期的な責任を繰り返し強調していることは、短期的な利益より独立性を優先する姿勢の表れとも読み取れ、130億ドルという水準の提示があったからといって、すぐに売却へ動くとは限らないという見立てです。Nvidiaからの5億ドル出資案を断った経緯を踏まえると、単一の大株主に意思決定を左右されたくないという同社の姿勢は一貫しています。

これからどうなるか

Hugging Faceを日常的に使ってモデルを探したり、ファインチューニング(fine-tuning:既存の学習済みモデルに追加データを与えて特定の用途向けに調整すること)したりしている開発者にとって、運営元が変わるかどうかは無視できない話題です。買収先の意向次第では、無料で使えてきたホスティング枠や公開ポリシーが見直される可能性もゼロではありません。

一方で、Delangue氏の発言からは、コミュニティとの信頼関係を損なわない形での着地を模索する姿勢もうかがえます。買収の行方がどうであれ、自分が依存しているモデルやデータセットの入手元を1カ所に頼りすぎない体制を、開発者側でも意識しておく価値はあるでしょう。具体的には、重要なモデルの重みファイルは自社ストレージにもミラーしておく、複数のホスティング先を併用できるようパイプラインを設計しておくといった対策が、万一の運営方針転換に備える現実的な一手になります。

まとめ

Hugging Faceに130億ドル超での買収打診が報じられ、2023年からわずか3年で評価額は約3倍に膨らみました。買収元は未公表で正式合意もまだですが、AIインフラ分野のM&A加速を象徴する動きとして注目されています。

参考リンク

アイキャッチ画像: Photo by John Unwin on Unsplash

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