AIスタートアップのHarkは2026年8月5日、自律型ブラウザエージェント「Handoff」のプレビュー版を公開したとTechCrunchが報じました。Target、Walmart、OpenTable、LinkedInなど大手サービスも対象です。多くは公式API(外部サービスがプログラムから使えるよう用意した接続窓口)を備えています。Handoffはそれを介さず、画面の表示内容とサイト構造を直接解析して操作します。飲食物の注文や旅行予約、返品手続きまでこなす汎用性と、あいまいな指示への対応力が特徴で、ブラウザ操作型AIエージェント競争に新たな一手を投じました。
背景と文脈
ウェブサイトを人間に代わって操作する「ブラウザエージェント」の開発競争は、この数年で急速に進んできました。OpenAIの「Operator」やAnthropicの「Computer Use」、Perplexityの「Comet」などが代表例です。画面を見ながら自律的に操作するAIが相次いで登場しています。こうした流れの背景には、多くのウェブサービスが公式APIを提供していない、あるいは提供していても機能や利用回数に制限がある、という事情があります。
予約サイトやECサイトの多くは人間がブラウザで操作することを前提に作られており、プログラムから直接呼び出せる窓口を持たないケースが少なくありません。旅行予約や飲食店の順番待ち、フリマアプリの出品など、生活に密着したサービスほどAPIが整っていない傾向があり、これまで自動化の壁になってきました。Handoffを開発したHarkは、CEOのBrett Adcock氏が率いる企業です。
同社は2026年5月に7億ドル(約1,050億円)規模のシリーズA資金調達を実施しており、潤沢な資金を背景に開発を進めてきました。今回のHandoffは、公式APIの有無にかかわらずウェブサービスを操作できる点を打ち出しています。これまでAPI連携が前提だった業務自動化やスクレイピングの分野に、新たな選択肢を提示する形です。エンジニアが個々のサイト構造を解析するスクリプトを書く代わりに、汎用エージェントへ指示を出すだけで済む可能性が出てきました。
技術/ビジネス面

Handoffの技術的な特徴は、操作の予測方法にあります。一般的なLLM(大規模言語モデル:大量の文章データを学習し、人間のような文章を生成するAIモデル)は、文章のトークン(文章を区切る最小単位)を予測します。この予測を繰り返して動く仕組みです。一方Handoffは、事後学習(ポストトレーニング:あらかじめ学習済みのモデルに追加の調整を加える工程)を経たモデルを使います。マウスクリックやキーボード入力といった「次に取るべき操作」そのものを直接予測する仕組みです。
画面上のボタンや入力欄の位置を読み取り、そこに対する操作を出力するイメージです。Hark社は2026年内に、事前学習(プリトレーニング:モデルを一から大量データで学習させる初期段階の工程)の導入も計画していると説明しています。デモでは「お花屋さんおまかせ」という指定だけで、具体的な商品を選ばずに花束の注文を組み立てて見せており、あいまいな指示への対応力を印象づけました。
実行できるタスクとして、飲食物の注文、旅行の予約、返品手続き、ショッピング、レストランの予約、簡単なリサーチ作業などが挙げられています。Hark社は競合よりも高速で、コストも大幅に低いと主張しています。競合にはBrowser Use、Polar、Strawberry、Asideといった専業スタートアップが並びます。加えてGoogle、OpenAI、Anthropicなど大手も同じ領域で開発を進めています。
これからどうなるか
Handoffは現時点でウェイトリスト(順番待ちリスト)を公開しており、2026年夏の終わりごろの正式リリースを予定しています。プレビュー段階のため、対応できるサイトの範囲や実際のタスク成功率、速度やコストに関する主張の第三者評価は、まだこれからという段階です。公式APIを持たないサービスをプログラムから操作したい場面では、画面操作型のブラウザエージェントが現実的な選択肢になりつつあります。
自分のプロダクトに組み込む際は、API連携より柔軟に使える一方、サイト側の仕様変更に弱いという弱点も踏まえた設計が欠かせません。すでにCometやOperatorを検討してきた開発者にとっても、価格や速度の面で新たな比較対象が増えることになります。返品や予約といった定型作業をエージェントに任せる自動化スクリプトを組む場合、成功率や失敗時のフォールバック処理をどう設計するかが実務上のポイントになります。今後はHandoffが実際のタスク完了率や処理速度でどこまで実力を示せるか、正式リリース後の評価が焦点です。
まとめ
Harkはブラウザエージェント「Handoff」のプレビューを公開し、公式APIなしでウェブサイトを操作してタスクをこなす仕組みを示しました。マウスクリックやキー入力を直接予測する技術が特徴です。あいまいな指示への対応力も武器に、Browser UseやGoogle、OpenAI、Anthropicなどとの競争に加わります。ウェイトリストは公開済みで、正式リリースは2026年夏の終わりごろを予定しています。
参考リンク
- Hark previews its browser-use agent for completing tasks
- Hark Announces Handoff, the World’s Best Web-Browsing AI Agent
- Hark raises $700M Series A for its secretive ‘universal’ AI interface
アイキャッチ画像: Photo by ThisisEngineering on Unsplash

