英国の高級端末ブランドVertuが、6880ドル(約100万円)の折りたたみスマートフォン「Alphafold」にAIエージェント「Hermes Agent」を搭載しました。米メディアTechCrunchが実機を検証したところ、自律的に動く積極性は評価できるものの、日付や時刻を取り違えるなど詰めの甘さも目立つ結果となりました。富裕層向け端末にAIエージェントを組み込む動きの現在地を示す事例です。
背景と文脈
Alphafoldはカーフレザーとチタンを使った外装が特徴の折りたたみスマートフォンで、重さは264グラムです。中身はZTE製の端末Nubia Foldと共通のプラットフォームを採用し、Snapdragon 8 Eliteを搭載。データ保護用に専用の「A5」セキュリティチップも備えています。1100ドル前後のNubia Foldに高級素材とソフトウェアを上乗せする形で、価格は3倍近くに跳ね上がっています。
目玉となるのが、オープンソースのHermesプロジェクトを基盤にした「Hermes Agent」です。複数のアプリをまたいだ作業の自動化、ファイルの分析、必要に応じて人間のコンシェルジュへの引き継ぎまでこなすとうたわれています。エージェント(agentic:人の指示を受けて複数の作業を自律的にこなすAIの動作様式)機能を前面に押し出した高級端末は珍しく、価格に見合う実用性があるかが焦点になりました。ターゲットは多忙な経営層で、秘書業務の一部をAIに肩代わりさせるという発想自体は、スマートフォンの新しい売り文句として理にかなっています。
技術/ビジネス面

検証を行ったTechCrunchの記事によると、空港への移動を想定したテストでHermesはメッセージの送信やサイレントモードの設定、Google マップの起動までは自律的にこなしました。ただしリマインダーの時刻を深夜2時47分に設定すべきところを、夜9時8分に誤って設定してしまったといいます。同じ場面で比較対象としたGoogleのGemini(Samsung Galaxy Z Fold 7搭載)は、行動前に確認の質問を挟むことで、結果的により正確な提案をしていました。
出張の日程調整でも同様の傾向が見られました。Hermesは直行便がないことを正しく判断しコンシェルジュへの引き継ぎを提案しましたが、日付を7月18〜19日ではなく7月7日として組んでしまう誤りがありました。数字を扱う細部の正確さに課題が残る形です。
一方、ローカルファイルの分析では優位性も見せています。表計算ソフトの四半期売上データを初回は正しく分析できたものの、数日後に同じファイルについて尋ねると「端末上のファイルには直接アクセスできない」と応答が変化してしまいました。Geminiは数日空けても会話の文脈を保持し、ファイルを再アップロードせずに追加の質問に答えられたといいます。レビューでは「自律的に行動しようとする姿勢はGeminiよりエージェントらしく見えた」としつつ、「その分、作業が中途半端に終わったり誤った出力が出たりした」と総括されています。
これからどうなるか
この検証結果は、AIエージェントを名乗る製品を評価する際に「自律性」と「正確さ」は別軸で見る必要があることを示しています。手元のプロダクトにエージェント機能を組み込む場合も、確認なしに行動を進める設計は失敗時の被害が大きくなりやすく、Geminiのように要所で確認を挟む設計とのバランスが問われそうです。数日前の会話やファイルの内容を保持できるかという「記憶の持続性」も、実運用での使い勝手を左右する重要な要素だとわかります。
また、AlphafoldはハードウェアとしてはNubia Foldの上位互換に過ぎず、差額の大半はソフトウェアと素材によるものです。比較対象のGalaxy Z Fold 7は215グラムと軽量でワイヤレス充電にも対応しており、価格差を考えると総合力ではSamsung側に軍配が上がるというのがレビューの見立てです。AIエージェントを製品の付加価値として売り込む動きは今後も増えるとみられますが、今回のような検証記事が積み重なるほど、機能の中身が伴っているかを消費者がシビアに見るようになりそうです。
まとめ
Vertuの高級端末Alphafoldに搭載されたAIエージェントHermesは、自律的な行動力を見せた一方で日時の誤りなど精度面の課題も露呈しました。価格に見合う完成度かどうかは、今後のアップデート次第といえそうです。
参考リンク
アイキャッチ画像: Photo by Lai Man Nung on Unsplash

