ByteDanceの対話AI「Doubao」とAlibabaの「Qwen」が、擬人化AIエージェント機能を相次いで停止すると発表しました。ユーザーごとに人格を設定できる機能です。背景にあるのは、中国政府が2026年4月に定めた新規制です。人間のような性格や話し方で、継続的な感情的やり取りを行うAIサービスを対象にしています。Doubaoは7月15日、Qwenは7月10日と15日の二段階でサービスをオフライン化します。中国発の二大チャットAIが足並みをそろえて機能停止に動く、異例の展開です。
背景と文脈
中国政府は2026年4月、新たな規制を公布しました。発表したのは、国家インターネット信息弁公室(CAC:Cyberspace Administration of China、中国のネット規制当局)です。国家発展改革委員会・工業情報化省・公安省・市場監督管理総局との共同発表で、名称は「AI擬人化型交互服務管理暫定弁法」です。この規制は、人間の性格や思考パターン、話し方をまねて継続的な感情的なやり取りを提供するAIサービスを対象にしています。対象になるかどうかの線引きは、単発の受け答えではなく「持続的な感情的インタラクション」を提供しているかどうかに置かれています。
中国はこれまでも、レコメンドアルゴリズムの規制(2022年)や生成AIサービス管理弁法(2023年)など、急成長するAI産業に先回りしてルールを敷いてきました。今回の擬人化AI規制も、その延長線上にあります。特に念頭にあるのが、AIコンパニオン(人格を持つ話し相手として振る舞うAI)への感情的な依存リスクです。米国でも類似のサービスを巡り、未成年利用者への影響を理由にした訴訟が相次いでいます。各国の規制当局が、同様の課題に直面している格好です。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、こうした規制の背景を報じています。Doubaoは中国国内で最大級の利用者を抱える対話AIアプリとされます。Qwenもアリババの主力対話AIサービスとして広く使われており、今回の対応は業界への影響が大きいと見られています。
技術/ビジネス面

Doubaoは金曜夜の通知で、ユーザーが作った「エージェント」機能を7月15日に停止すると告知しました。エージェントとは、あらかじめ設定した性格や話し方に沿って、ユーザーに代わって対話や作業をこなす自動応答の仕組みです。理由は「製品機能の調整」だとしています。10月15日以降は関連データがプライバシーポリシーに沿って扱われ、アプリ内での閲覧や復元ができなくなります。
Qwenも土曜朝に同様の通知を出しました。中国の経済メディア財新(Caixin Global)によると、通知は二段階です。「擬人化された対話エージェントおよびユーザー作成のエージェント機能」は7月10日に停止します。より広い「Qwenのエージェント機能・サービス」全体も、7月15日にオフライン化するとしています。
両サービスとも、企業側が用意したエージェント群に加え、ユーザー自身が話し方や口調、性格を細かく設定できる仕組みを提供してきました。設定次第で、名前付きのアシスタントや学習チューター、ロールプレイのキャラクター、あるいは会話相手としても使える柔軟さが売りでした。今回停止するのは、まさにこの「人格を持たせられる」部分です。単なるQ&A用のチャットボットではなく、キャラクター性を持たせて長期的に使い続けてもらう設計そのものが、規制の対象になった形です。
これからどうなるか
今回の規制で注目すべきは、単なる機能停止では終わらない設計です。Tech Timesの報道によれば、中国政府はAI擬人化サービスに利用者の本人確認や未成年保護、AIである旨の明示といった要件を課す方向とみられます。各社は今後、運用の作り直しを迫られる立場です。DoubaoやQwenのような大手ですら、7月10日・15日という短い猶予期間での対応を迫られました。法整備の速さに、事業者側が追いついていない実情がうかがえます。
開発者にとっての含意も小さくありません。ペルソナ機能やカスタムエージェントを組み込んだプロダクトを中国市場向けに提供している場合、対応は急務です。年齢確認やデータ保持期間の管理、AIである旨の開示を後付けで急造するのは、負担が重くなります。海外展開を見据えるなら、キャラクター設定を作り込む段階から、開示ラベルやデータ削除フローを設計に織り込むべきでしょう。そのほうが、後々の規制対応コストを抑えられます。
まとめ
ByteDanceのDoubaoとAlibabaのQwenは、中国の新規制を前に擬人化AIエージェント機能を相次いで停止します。7月10日と15日に段階的にオフライン化し、データも10月15日以降は復元できなくなります。AIコンパニオンの感情的な依存リスクへの対応として、同様の規制論議は今後、他国にも広がっていく可能性が高いといえます。
参考リンク
- China AI Companion Law Arrives July 15: Doubao and Qwen Agent Data Will Be Deleted
- ByteDance and Alibaba disable humanlike AI custom agents as new rules loom
- Alibaba, ByteDance Pull Persona Chatbots as China Tightens AI Rules
アイキャッチ画像: Photo by Maria Oswalt on Unsplash

