Oculus共同創業者のブレンドン・イリベ氏が手がける会話型AIスマートグラス「Sesame」が、シリーズBラウンドで2億5000万ドルの巨額資金調達を実施しました。同社は、自然な対話を実現する個人向けAIエージェントを搭載した軽量スマートグラスの開発を進めており、この度iOSアプリのベータ版を一部のテスター向けに公開しました。この「会話型AI」スマートグラスは、日常使いを想定した「自然な会話ができるスマートグラス」として大きな注目を集めています。
「Sesame」会話型AIスマートグラスとは?
Sesameは、会話型AIを中核とするスマートグラス開発企業です。このたび、シリーズBラウンドで2億5000万ドル(約390億円)の資金を調達したことを発表しました。同社は、終日装着できる軽量なアイウェアに、自然な人間のような音声でユーザーと対話するAIエージェントを組み込む計画です。
このAIエージェントは、まるで人間と話しているかのような自然な対話体験を目指しています。SesameのAIスマートグラスは、ユーザーが音声を通じて世界と連携し、より深い情報アクセスやインタラクションを可能にする「AIスマートグラス」の新しい形を提案しています。早期デモでは「Maya」と「Miles」と名付けられたAI音声が公開され、数週間で100万人以上のユーザーが利用し、500万分以上の会話が生成されたと報告されています。
国内市場においても、このようなAIスマートグラスの登場は、スマートフォンの次を担うデバイスとして注目されるでしょう。ハンズフリーでの情報アクセスは、ビジネスシーンや日常のタスク管理に革新をもたらす可能性があります。特に、視覚と聴覚を連携させた情報取得は、これまでのボイスアシスタントにはない没入感を提供すると期待されます。
Oculus創業者が描く次世代AI体験
Sesameは、Oculusの共同創業者兼元CEOであるブレンダン・イリベ氏が率いています。また、ARスタートアップUbiquity6の元CTOアンキット・クマー氏が共同創業者として名を連ねています。チームにはOculus共同創業者ネイト・ミッチェル氏が最高製品責任者(CPO)に就任し、元Oculus COOハンス・ハートマン氏、元Oculusエンジニアリングマネージャーのライアン・ブラウン氏、Meta幹部アンジェラ・ゲイルズ氏など、XR分野のベテランが集結しています。
この強力なチームは、Oculusで培ったハードウェア開発とユーザー体験設計の専門知識を活かし、次世代の「AIスマートグラス」体験を構築しようとしています。Sesameは、単なる情報表示デバイスではなく、「ユーザーと共に世界を観察する」AIコンパニオンとしての役割を目指しています。
さらに、同社のスマートグラスは「ファッション志向」であることも強調されており、AI機能がなくても身につけたくなるようなデザインを追求しています。これは、技術先行型ではなく、生活に自然に溶け込むデバイスを志向していることを示唆します。日本市場でも、機能性だけでなくデザイン性が普及の鍵となるでしょう。有名デザイナーとのコラボレーションなども期待されます。
自然な対話を実現する独自AI技術
SesameのAI技術は、単に大規模言語モデル(LLM)の出力を音声に変換するだけではありません。独自の技術により、会話のリズム、感情、表現力を直接生成し、より人間らしい自然な対話を実現します。投資家のSequoiaは、この体験を「これまでに体験したことのないもの」と評し、会話レイヤーの独自性を強調しています。
The Vergeの早期レビューでも「心から楽しく、自然な音に聞こえる」と報じられました。この「自然な会話ができるスマートグラス」の実現は、AIと人間とのインタラクションの質を大きく向上させます。これにより、ユーザーはAIをより信頼し、まるで友人と話すかのように質問や相談ができるようになるでしょう。
この高度な音声生成技術は、顧客対応や教育、医療など幅広い分野での応用が期待されます。例えば、高齢者向けのパーソナルアシスタントや、言語学習のパートナーとして活用することで、社会に大きなインパクトを与える可能性があります。日本語の微妙なニュアンスや感情表現をどこまで再現できるかが、今後の国内展開における重要な課題となるでしょう。
iOSアプリで一足先に体験!ベータ公開
Sesameは、スマートグラス本体のリリースに先立ち、iOSアプリの早期ベータ版を公開しました。このアプリは、ユーザーが同社の革新的なAI技術を体験できるように設計されています。ブレンダン・イリベ氏は、アプリを通じてAIが「検索、テキスト作成、思考」できると述べています。
ベータテスターは、テスト体験を一時的に非公開にすることが求められています。これは、機密保持契約を通じて、機能や結果を公式フォーラム以外で議論しないことを含みます。ベータテストは、製品の完成度を高める上で不可欠なステップであり、ユーザーからの貴重なフィードバックが、最終製品の品質向上に貢献するでしょう。
今回の資金調達には、SequoiaやSparkなどの著名な投資家が参加しています。iOSベータ版の公開は、スマートグラスのハードウェア開発には時間を要するため、まずソフトウェアを通じてAI体験を提供し、コミュニティを構築する戦略的な動きと見られます。日本でも早期のアプリ提供が期待されますが、言語や文化への適応が鍵となります。
参考リンク
- TechCrunch LinkedInプロフィール
- The Verge (Sesame AI Glassesレビュー)
- Contrary Research (Sesame AI企業分析)
- ブレンダン・イリベ氏のLinkedIn
- アンキット・クマー氏のLinkedIn
- TechCrunch (Ubiquity6買収に関する記事)
- Techmeme (Sesameのステルス解除に関する報道)
- Sequoia (Sesameへの投資に関する記事)
- ネイト・ミッチェル氏のLinkedIn
- TechCrunch (ハンス・ハートマン氏のOculus COO就任に関する記事)
- ライアン・ブラウン氏のLinkedIn
- アンジェラ・ゲイルズ氏のLinkedIn
- ブレンダン・イリベ氏のX (iOSアプリ発表)
- Sesame公式ウェブサイト (ベータテスト同意書)
- ブレンダン・イリベ氏のX (投資家に関する投稿)

