AI動画プラットフォームを提供するKalturaは、会話型AIアバター技術を持つイスラエルのスタートアップeSelf.aiを約2,700万ドルで買収すると発表した。これによりKalturaは、リアルタイムで対話可能な生成AIアバターを企業向け動画ソリューションに統合し、顧客や従業員との新たな動画ベース体験の提供を目指す。今回の買収は、進化する生成AIアバター市場において、企業向け動画のパーソナライズとインタラクティブ性を大幅に強化するものと期待される。
Kaltura、eSelf.ai買収で生成AIアバターを強化
ニューヨークを拠点とするAI動画プラットフォーム企業Kalturaは、イスラエルのスタートアップeSelf.aiを約2,700万ドルで買収する正式契約を締結したと2024年5月28日に発表した。この買収は、Kalturaが提供する企業向け動画ソリューションに生成AIアバターの機能を統合し、顧客エンゲージメントを強化することを目的としている。
eSelf.aiは、ユーザーと会話できる生成AIアバターを開発する企業である。30以上の言語に対応し、フォトリアルなデジタルアバターの作成、カスタマイズ、展開を可能にするユーザーフレンドリーなスタジオを提供している。
今回のKalturaによるeSelf.ai買収は、企業が動画コンテンツを通じてよりパーソナライズされたインタラクティブな体験を提供するための重要なステップとなる。これにより、Kalturaは生成AIとAIアバター技術を核とした新たな価値創出を目指す。
eSelf.aiが持つリアルタイム会話型AI技術
eSelf.aiは、2023年にCEOのアラン・ベッカー氏とCTOのエイロン・ショシャン氏によって共同設立された。ベッカー氏は以前、自身のスタートアップであるVocaを2020年にSnapに売却した実績を持つ。同社は音声から動画を生成する技術、低遅延の音声認識、そしてアバターがユーザー画面の内容を認識し反応する画面理解技術において深い専門知識を有している。
Kalturaの共同創設者兼CEOであるロン・イェクティエル氏は、eSelf.aiの技術について「リアルタイムで同期的な会話においてクラス最高」と評価している。TechCrunchのインタビューで、同氏はeSelf.aiが優れた音声認識およびテキストから音声への変換技術スタックを持っていると述べた。
eSelf.aiの共同創設者らは、買収後もKalturaに加わり、eSelf.aiの技術統合を主導する予定だ。現在の全従業員もKalturaの一員となることで、彼らの持つリアルタイム会話型AIアバターの専門知識がKalturaの企業向け動画ソリューションに直接生かされることになる。
企業向け動画ソリューションに会話型AIを統合
Kalturaは、企業向け動画ポータル、ウェビナー、仮想イベントツール、大学の学習管理システムへの動画学習組み込み機能など、幅広いクラウドベースの動画ソリューションを提供している。Amazon、Oracle、Salesforce、SAP、Adobe、IBMといった大手企業を含む800社以上の顧客に対し、営業、マーケティング、カスタマーケア、教育、エンターテイメントにおけるユーザーエンゲージメントを支援してきた。
KalturaはeSelf.aiのバーチャルエージェント技術を既存の動画サービス全体に統合する計画だ。この統合により、リアルタイムで聞き、話し、ユーザー画面を解釈できるバーチャルエージェントの実現を目指す。例えば、顧客サポートではAIアバターが顧客の問い合わせに即座に対応し、研修ではパーソナライズされた説明を提供できる。
国内企業においても、この生成AI 企業向け動画ソリューションは大きな変革をもたらす可能性がある。顧客体験の向上、従業員研修の効率化、多言語対応によるグローバル展開の加速などが期待される一方、導入には日本語対応の精度、企業のデータ活用方針、そしてAIアバターの利用倫理に関する明確なガイドライン策定が重要となるだろう。KPIとしては、顧客満足度、問い合わせ解決率、研修後の定着率などが挙げられる。
Kalturaが目指す動画ベース体験提供の未来
Kalturaは、この買収を通じて、単なる動画プラットフォームから「動画ベースの顧客および従業員体験プロバイダー」へと進化することを目指している。KalturaのCEOであるイェクティエル氏は、AIの進化により動画が瞬時に生成され、ハイパーパーソナライズされたカスタム体験を提供できるようになると説明している。
Kalturaが提供するのは単なる「顔」だけでなく、アバター、その知能、そして企業が持つ知識を連携させる「完全なワークフロー」だ。これにより、動画ストリーミングに留まらず、具体的なビジネス成果とROIを追求する。営業、マーケティング、顧客サポート、トレーニング向けに、スタンドアロン型や組み込み型のエージェントを展開する予定だ。
AIアバターの導入はまだ新しい分野であり、Redditのユーザー報告では、学習者の反応は革新的であると同時に「違和感がある」という声も聞かれる。しかし、HeyGenやSynthesiaのような既存サービスと異なり、Kalturaはリアルタイム対話とエンタープライズ連携に特化することで、より深いビジネスインパクトを狙う。
Kalturaは2021年に上場し、売上高は約1億8000万ドル。調整後EBITDAとキャッシュフローベースで黒字を計上しており、約600人の従業員を抱えている。今回の買収はKalturaにとって4番目の買収であり、同社の成長戦略の一環として、新たな市場での競争力強化が期待される。
参考リンク
- Kaltura 公式サイト
- eSelf.ai 公式サイト
- TechCrunch: Kaltura acquires eSelf.ai to bring AI avatar video to the enterprise
- TechCrunch: Founder who built Snap’s AI launches a snappy new take on video chatbots
- TechCrunch: Kaltura acquires Rapt Media
- Kaltura: Newrow Exited
- Reddit: How have your learners reacted to AI avatars?
- HeyGen: Free AI Video Generator
- Synthesia: #1 AI Video Platform for Business

