ウェアラブルデータを統合するAI健康コンパニオン「Bevel」が、シリーズAで1000万ドルを調達した。Bevelは、ユーザーの睡眠、フィットネス、栄養といった日々の習慣からデータを集約し、AIがパーソナライズされた健康管理の洞察を提供する。既存のウェアラブルデバイスを活用するため新たなハードウェアは不要で、急速な成長を遂げている点が注目される。創業者の実体験がこの革新的なAIヘルスケアサービスの開発原点にある。
AI健康コンパニオンBevelとは？ウェアラブルデータを統合
今日の健康管理では、多くの人が自身のデータを断片的に追跡しているのが現状だ。スマートウォッチは睡眠時間を示し、フィットネスアプリは歩数を記録し、栄養アプリはカロリーを計算する。しかし、これらの情報がどのように関連し、全体として健康に影響するかを理解できるツールは少ない。
ニューヨークを拠点とするスタートアップのBevelは、ここに予防医療への移行における重要な欠落があると指摘する。同社はAIを活用した健康コンパニオンを提供し、ウェアラブルデバイスや日々の習慣から得られる睡眠、フィットネス、栄養に関するデータを統合。パーソナライズされた洞察をユーザーに提示している。General Catalystからの1000万ドルのシリーズA資金調達により、このAI健康コンパニオンのスケーリングを目指す。
ハード不要で「パーソナライズ健康管理」を実現
既存の多くの健康管理アプリは、専用のハードウェアデバイスの購入や維持をユーザーに求める傾向がある。WhoopやOura、Eight Sleepといったサービスがその例だ。しかし、Bevelの共同創業者兼取締役であるアディティヤ・アガルワル氏は、高価なデバイスは多くの人にとって手の届かない存在であると指摘している。
Bevelは、ソフトウェアのみでパーソナライズ健康管理を実現する。ユーザーはすでに所有しているウェアラブルデバイスを柔軟に利用でき、新たなハードウェア購入の負担がない。月額6ドルまたは年額50ドルで利用でき、Apple Watchやその他の主要なウェアラブル、そしてApple HealthやDexcom、Libreなどの連続血糖値モニターと連携する。将来的にはGarminなど、さらなる連携も開発中とされる。これらのデータはBevel IntelligenceというAIに供給され、個々のユーザーの体質や反応を学習しながら、ストレス、運動、栄養に関する最適なレコメンデーションを提供していく。
驚異的な成長と1000万ドル調達の背景
Bevelは創業からわずか2年で、目覚ましい成長を遂げたヘルスケアテクノロジー企業だ。昨年だけでユーザー数は8倍以上に増加し、現在では10万人以上のデイリーアクティブユーザーを抱えている。これは米国で最も急速に成長しているヘルスケアアプリの一つだ。
特筆すべきは、ユーザーエンゲージメントの高さだ。平均的なユーザーは1日に8回アプリを開き、90日後の定着率は80%を超えている。これは、短期間のフィットネス目標達成後に離脱しやすいこの分野では異例の数値である。共同創業者兼CEOのグレイ・グエン氏は、健康を「一過性のフェーズではなく、継続的な旅」と捉えていると語る。この高いエンゲージメントとユーザー維持率が、General Catalystからの1000万ドル調達を後押しした要因の一つと考えられる。
創業者の実体験が語る「AIヘルスケア」の可能性
Bevelの構想は、共同創業者であるグレイ・グエン氏自身のつらい実体験から生まれた。2023年後半に創業する前、グエン氏はスタートアップでの過酷な生活により健康を顧みず、慢性的な腰痛に悩まされていた。ウェアラブルデバイスを使い、定期的に医師の診察を受けても、何が痛みの原因かは数ヶ月間診断されなかった。
グエン氏は自身の睡眠、栄養、歩数といった健康データを自ら分析し始め、長時間の座位による低い運動能力、マットレスの配置による睡眠の問題、塩分の多い食事が引き起こす炎症など、複数の要因が複合的に作用していることに気づいたという。共同創業者のアディティヤ・アガルワル氏もまた、多忙な仕事で燃え尽きた経験があり、手動でのデータログを通じて自身の健康を取り戻した。彼らは「人々が自身の健康についてより賢くなるのを助ける」という共通のビジョンを持ち、アガルワル氏は共同創業者兼取締役としてチームに加わった。この実体験に基づく共感が、Bevelが提供するパーソナライズ健康管理の深い洞察力の源泉となっている。
